ぴあ総研興行ランキングから考察するコロナ禍におけるライブとの向き合い方

ぴあ総研から、2021年の音楽ポップス興行規模に関するランキングが発表されました。詳しい情報は以下のURLから見てください。

実際の動員数(キャンセルが多いこと、最大収容人数の○○%として開催したケースは想定されていない)とは異なり、単純な公演回数×最大収容人数でランキング付けされているため、アーティストによってはこのランキングよりも実際の動員は少ないかもしれません。日経エンタテインメントによるコロナ以前の2019年動員ランキングの数値も参考にしながら、2021年のコンサートについて考察していきたいと思います。また、ここには私の趣味嗜好や好き嫌いなどは一切反映されておりません。アーティストのパフォーマンスではなく、コンサートの日程や規模などにおける考察です。特定のアーティストにおける「持ち上げ、下げ」の表現はなく、考えられること、一個人として思ったことを記しております。

1位となったのは「三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE」でした。ここで大きいのは「ドーム公演」に早い段階で踏み切ったことです。10周年という節目、応援して下さる方に感謝を伝える場としてもふさわしいのではないでしょうか。7月16日~12月26日という長い公演期間(東京ドームで追加公演を実施、一部公演では生配信も実施)を経て無事に終演を迎えています。2021年、ドーム公演に踏み切るアーティストが少なかったことからも、かなりチャレンジな公演であったと考えられます。東京ドームが追加公演であり、8月29日福岡公演から次の公演である東京ドーム初日の10月8日まで期間が大幅に空いているということからも、コロナの情勢が刻一刻と変化する中で、どのタイミングで東京ドームを行うかを綿密に考えられていたことも伺えます。また、会場に行けない人向けに生配信やライブビューイングが行われるなど、ファンを想う姿勢が見えました。前年度の情報がないので2019年の情報にはなりますが、2019年度の1位は20周年を記念し5大ドームツアーを行った「嵐」でした。嵐が活動休止期間に入ったことで、2019年度では2位であった3代目が順当に繰り上がったとも考えられます。

2位は「EXILE TRIBE」です。合計6グループ出演の出演者としても人数規模が多い公演となりました。こちらも「ドーム公演」ですが、最後となる東京追加公演以外すべての公演において延期対象となっています。本来売っていた日時と違う延期公演ですから、チケットを取った人が行けなくなる(払い戻し)という事態は避けられなかったと思います。さらに、延期公演の日程によってはスケジュール都合により出演できないメンバーの方もいたとのことで、ファンの皆さんがかなり振り回されている印象を受けました。出演者の多さも鑑みて、もう少し規模の小さい会場(アリーナなど)からスタートした方がリスクは避けられたのではないかと思います。

3位は「AAA」です。2019年度動員ランキングと変わらず3位となり、圧倒的な動員数を持つアーティストですね。今回は異例の形で、本来は一昨年に開催予定であった(コロナ禍であったため)グループ最大の15周年記念ドームツアーの振り替え公演が行われました。こちらは11月20日~12月25日と、かなりコロナの感染者数が減った期間に集中して公演を開催しています。かなり検討を重ね、延期や中止は避けたい、感染者を出さないということに遵守したことが窺えます。15周年という節目にできなかったことを、絶対にここでやるんだという気概が感じられるツアーです。

4位は「THE RAMPAGE from EXILE TRIBE」です。追加公演含め、7月1日大阪城ホール~12月15日幕張メッセとこちらも長い期間のツアーです。4位に来て初めてアリーナ規模のライブツアーです。公演回数は圧倒的に増え、35公演。2021年は多くのアーティストがドーム公演ではなくアリーナ公演をしていることからも、順当な組み方ではないでしょうか。2019年度は24位ですので、コロナが落ち着き、各アーティストの公演が増えた時にどうなるのか注目ですね。今回の動員数が43万人前後ですので、15位圏内には入るのではないでしょうか。今後の活動にも注目していきたいです。

5位は「Sexy Zone」です。ここにきて初のジャニーズ事務所所属アーティストです。2019年度は40.4万人動員で18位でしたが、それを上回る41.9万人の動員です。アリーナ公演であり、最初の宮城が延期となっていますがそれ以外の公演は延期・中止もなく終演しています。10周年のコンサートであり、Sexy Zoneであればドーム公演も視野に入っていたように思えるのですが、感染拡大のリスクを鑑みてアリーナ公演になっている、あるいはメンバー全員揃ってのドーム公演を望んでいるのかなと思います。

各アーティストについて記すのはここまでにしたいと思います。2021年度はLDH JAPAN所属アーティストが席巻していますが、コロナの感染拡大・減少が繰り返される中でギリギリを攻めた結果だと思います。ドーム公演は圧倒的に動員数が増えリスクが伴うため、踏み切れなかったアーティストが多く存在した中、思い切った決断の結果が表れているのだと思いました。目立ったのはエイベックス所属アーティスト「AAA」ですね。ドーム公演でありながら延期や中止が一切ない、コロナ禍としては珍しい成功例だと思います。また、ジャニーズ事務所のアーティストが少ないのは、公演判断にかなり慎重であったことが挙げられます。多くの所属アーティストがドラマ、映画、バラエティーなどに取り組んでいる中、リスクの高くなるドーム規模で行うのは難しいでしょう。2019年度のTOP10に入っているKis-My-Ft2(61.7万人)・関ジャニ∞(59.3万人)・Hey!Say!JUMP(58.4万人)がドーム公演を行っていないことからも、コロナ禍でのドーム公演に慎重になっていることが明らかです。

バンドではUVERworld・L'Arc~en~Ciel・official髭男dismなどが上位にランクイン。音楽番組での露出が少ないUVERworldが上位に来ていることからも、露出の多さ=動員数の多さではないということも分かります。乃木坂46(2019年6位)や欅坂46(2019年26位)の女性グループについては、大規模ライブは控えられ、2019年動員ランキングから大幅に順位を落としています。グループとして出演者数が多いこともあり、リスクを考慮した結果であるとも言えます。

単独アーティストとしては桑田佳祐さんがトップとなり、松田聖子さん、堂本光一さん、矢沢永吉さんと続きました。ライブ活動をライフワークとし、毎年のようにライブを開催しているアーティストが上位となりました。

ここまで読んで頂きありがとうございました。大きな規模(ドームレベル)でのライブについては多くのアーティストがまだ踏み切れずにいるのが現状のようです。現在の感染状況を踏まえても、延期や中止を余儀なくされるアーティストが多くいます。その中で、どのタイミングでどのアーティストがどのように舵を切っていくのかは注目されると思います。2022年は、アリーナクラスだけではなくドーム公演も増えていくことを願っております。

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