メディアの話その115 「老人ロジ」と新聞の話。

断言しておく、めずらしく。

「老人ロジ」


これがまちがいなく今後20年の巨大ビジネスになる。
そして、まだほとんどの企業も地方自治体も本格的に手をつけていない。

老人ロジとはなにか。

老人のためのロジスティクス。

以上である。


消費したいのに、あるいは消費しないといけないのに「ロジスティクス」がないために消費できない「老人」たち。そんな老人とその予備軍が、日本では千万台のオーダーで存在する。

総務省が2020年9月20日に公表した「統計からみた我が国の高齢者―『敬老の日』にちなんで―」(統計トピックスNo.126)によれば、2020年の統計で年齢階級別の人口は以下の通り。

▼70歳以上人口は2791万人で、総人口の22.2%(前年推計に比べて78万人増・0.7ポイント上昇)

▼75歳以上人口は1871万人で、総人口の14.9%(同24万人増・0.2ポイント上昇)

▼80歳以上人口は1160万人で、総人口の9.2%(同36万人増・0.3ポイント上昇)

▼85歳以上人口は618万人で、総人口の4.9%(同27万人・0.2ポイント上昇)

▼90歳以上人口は244万人で、総人口の1.9%(同13万人増・0.1ポイント上昇)

▼95歳以上人口は60万人で、総人口の0.5%(同5万人増・0.1ポイント上昇)

▼100歳以上人口は8万人で、総人口の0.1%(同1万人増・0.0ポイント上昇)

https://gemmed.ghc-j.com/?p=36131

そして、自動車の免許返上の平均年齢は、警視庁の2019年の調査によれば、76.96歳だ。

ここであげた75歳以上の1871万人、人口比にして14.9%の相当数が、この「老人ロジ」問題の当事者にすでになっている可能性がある。

そして、75歳以上人口は今後2050年までどんどん増える。

自動車を運転できない。臥せっていて、動きがとれない。免許を返上してしまった。結果、たった1キロ先のモールにアクセスできない。2キロ先の病院に通えない。2キロ移動するのに、バスを使ってターミナル駅に移動して、別のバスに乗り換えて3時間かかる。
地方に、あるいは16号線の外側に「実家」のあるひとならば、全員が知っているはず。
そんな状況が日本中にころがっている。
ちなみに、日本における鉄道社会は、全体でみればむしろ少数派である。国道16号線の内側の2500万人人口と京阪神の一部だけ。それ以外は、都市部もふくめ、8000〜9000万人が、なんらかのかたちで自動車中心社会に暮らしている。

一方、現在の「老人」たちは、物理的にリッチである。

高度成長期からバブル期に働き、預貯金も退職金も住宅も年金もがっつりもらっている。


彼ら彼女らが消費しないのは、お金がないからでも、消費性向がおちこんでいるわけでもない。「足」がないからだ。
足がないから、買い物にいけず、近所のコンビニで済ませるしかない。足がないから、レストランにいけず、コンビニ飯ですませるしかない。足がないから、20年前の服を着ている。足がないから、映画をテレビでみるしかない。足がないから、美術館にもいけない。足がないから、病院に行けず、重病化する。
ならば、足を用意すればいい。
タクシーでもバスでもレンタカーでもない足を。
Amazonのやりかただけではリーチできない。
あえていうならば、テレビとラジオの「通販番組」だけがリーチしている。
そう、テレビ、この市場とはとっても相性がいい。
これ、電車社会の23区にいる限り、まったくみえてこない。
小売業やサービス業は、本社を半分、港区千代田区中央区新宿区から切り離して、木更津あたりにうつした方がいい。来年、コストコの日本本社が木更津に移転するように。
そして、紙の新聞のとりいそぎこの10年延命するための市場。それが、この老人ロジ市場である。
なにせ、彼ら彼女らが最大のそして最後の巨大読者なのだ。人生100年時代、10年はこの市場、いまのかたちで残る。自動運転などの普及スピードを考えても。新聞配達網と、チラシと広告というメディアのセットは、実に強力である。しかもこの世代は、新聞を紙で読むという習慣を60年身に付けており、一方でデジタルは苦手である。
ほかの市場、若者なんかは切り捨ててかまわない。いまさら紙の新聞を買う可能性はほぼゼロなのだから。
なお、以上はすべて私の直接の「経験している」お話がベースですw

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