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メディアの話その101 葛飾北斎と富士山とバズる

1月15日朝、数年前にとった富士山の写真をTwitterにアップした。

三浦半島から撮った夕方の富士山。葛飾北斎の凱風快晴みたいだなあ、と思いながら。そしたら、わずか1日の間にいいねが3万6000、RTが7000以上。ツイッター10年以上やってるが、私のツイートは基本的にたいしてバズらない。いままででダントツにバズっている。

なぜ、富士山の写真が?

理由を考えてみた。

2つある。

まず1番目。
写真のみせているものと、つぶやきのコピーのマッチングが、「バズりたくなる」ものだった。


この写真は、そう、葛飾北斎の凱風快晴をはじめとする富士山画を意識して撮った。夕方の光の加減もあって、「写真なのに絵のように見える」コンテンツになっている。
そこに私がつけたコピーは
「毎日が葛飾北斎!毎日が葛飾北斎。富士山と海が見える三浦半島、最高だ。」
で、「写真なのに絵みたい!」「そうそう、北斎北斎!」という瞬間的な反射を生んだ。
つまり、写真とコピーがセットではじめて「バズる」わけである。コピーがないとほとんどのひとは「見立て」が自分ではできないから、スルーされる。「絵みたいな写真」に「毎日が葛飾北斎」のコピーがついてはじめて、無意識が意識化され、「ねえ、みてみて」となる。


それから2番目。

もうひとつ重要なのは、ネットでは「あるものが、まったく別のなにかに見える」という、気持ちのいい裏切り、気持ちのいい騙し、気持ちのいい気づきが、人気を集める。
たとえば、超リアルな絵。ネットには、市井の絵師がいっぱいいて、写真以上にリアルな動物やコップ(この2つが多い)を描いて、人気を呼ぶ。ポイントは、「絵なのに写真みたい!」が褒め言葉になっていること。


私の写真が「絵みたい!」「浮世絵みたい!」というのが「褒め言葉になっているのとまったく逆である。が、おそらくみた人間にあたえた「センスオブワンダー」は、おんなじである。絵だと思ったら写真だった、写真だと思ったら絵だった、という気持ちのいい「裏切り」が、「ねえ、知ってる?」といいねやリツートにつながる。


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