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メディアの話その89 BBCパパとコロナウイルスと公私混同と

みなさんは、この絵を覚えていらっしゃるはずだ。

2017年、英国のBBCニュースの生中継で、インタビューを受けていた韓国・釜山大学のロバート・ケリー准教授。途中まで大学の研究室で話をしているとなんとなく思っていた視聴者は多いだろう。

が、そこに可愛い闖入者が。

黄色のセーターを着たくるくるパーマの女の子が練り歩きながらずんずんずんとやってきて、ケリー先生の横に。映像への目線を外さず、クールに女の子を押しやるケリー先生が。

が、そこにさらに畳み掛けるように、車輪付き歩行器がUFOのように飛来し、今度は赤ちゃんが侵入。

そして、オチはあわててダッシュしてきたケリー夫人が2人を小脇にかかけて去っていく。

あまりの衝撃に、たぶんこのときケリー准教授が何を話していたのか、だれも覚えてないかもしれない。

が、動画は数日でYOUTUBEで1000万回を超えて再生され、ケリー先生はいちやく韓国でも有名人になってしまい、「BBCパパ」の名で2018年度「ブロードキャスティング・アワード」のタイムラインTVシーン部門を受賞するまでに。

そしてあれから3年。2020年3月、BBCパパこと、ケリー先生は夫人、そしてかわいく育った2人の子供とふたたびニュースに登場した。

そう、自宅で仕事をする「先輩」として。

だれもが映像ごしに仕事をするようになった。

だれでもメディア時代は、個人をメディアにするだけではなく、あらゆる仕事を、そしてあらゆる学習を映像メディア化した。

ただし、私たちはテレビのスタジオで仕事をしているわけじゃない。私たちのスタジオは、家の中だ。BBCパパのような立派な書斎がある人はむしろ少数派だろう。場合によると、うしろをちびっこが走り回り、となりでおじいちゃんがお茶をすすり、うしろをパパがステテコ一丁で通り過ぎることもあるだろう。

仕事の途中に赤ちゃんが泣き出して、ミルクをあげないといけないかもしれない。

大学の授業を受けているのに、弟や妹が頭の上に乗っかってくるかもしれない。

一世一代のビジネスプレゼンをしているのに、宅急便がきちゃうかもしれない。

というか、すでにこうした状況をみなさんは経験しているのではないか?

そこで、提案である。

私たちがBBCパパの映像に学ぶべきは、仕事や勉強の現場に「子供の乱入」があることを当たり前にすることだ。「赤ちゃんのミルクやり」を「家人の通り過ぎ」を「宅急便の受け取り」を「兄弟の肩車」を当たり前にすることだ。

つまり「公私混同」である。

みんなが「公私混同」を当たり前にすること。新型コロナウイルス がもたらした、社会のパラダイムシフト、「あらゆる仕事がおうちでメディア化する」時代への、最初の対応は、「公私混同」でいこう!である。





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