メディアの話その140 大成功したマスメディアのベンチャーが決して登場しない本当の理由。


あらゆるベンチャーが過去20年に出てくる中で、マスメディアベンチャーだけが人材の内製化をできてない。 日本でもアメリカでも。新聞的世界がそうだ。だから、マスメディアのベンチャーで大成功したところってほとんど見当たらない。

具体的には新入社員を大量に採用して、記者や編集者や制作者に育てる、ということができない。だからベンチャーは、こういうコンテンツをつくるひとたちの多くをマスメディアからの転職組で補っている。

アメリカでは、いちばん成功しているネット報道メディアはベンチャーだったバズフィードでもハフィントンポストでもない。ニューヨークタイムズであり、ワシントンポストであり、ウォールすトリートジャーナルである。

日本では、日経新聞の電子版が、売り上げで見ると大きいはずである。

漫画の世界では、集英社、講談社、小学館が過去最高の収益をあげていたりする。

ベンチャーじゃ、ない。

なぜだろう。

旧来メディアにすごい教育システムがあるわけじゃないのに(中にいたので断言できるw)

これ、報道メディアベンチャーの創業者や中の人とも何度も話し合った。

私の仮説はこうだ。

マスメディアの「価値」は、人材育成システムよりむしろ取材ネットワーク、著者ネットワーク、芸能ネットワークといった、「ネットワーク」にある。記者クラブなども含むそっちにあるからじゃないか。

新聞やテレビの記者クラブもそうだ。漫画や書籍における著者ネットワークもそうだ。テレビにおける芸能プロダクションとのネットワークもそうだ。

ノウハウの継承以上に、ネットワークの継承。

これが、マスメディアのビジネスの根っこにあるのではないか。
これがマスメディアが持ってて新興メディアが持ってない最大の差でもある。
実は総合商社にもそういう側面がある。

ネットワークの既得権益化がビジネスモデルの中心、というわけである。

こうした既得権益ビジネスを崩すのは、すでにネットワークを持った組織に対抗するのではなく、こうしたネットワークを持った組織を下請け化するビジネスである。

すなわち、プラットフォームだ。

新聞に対するヤフー。テレビや映画に対するネットフリックスやアマゾンプライム。書籍に対するアマゾンキンドル。

対抗するのではない。下請け化する。マスメディアをコンテンツとプラットフォームのメディアの機能両方をもった存在から、コンテンツ屋にして、プラットフォーム部分を奪い取る。

いま起きているのは、そういうことではないか?



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