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51:49の苦悩

好きな政治家のひとり・小川淳也さんを17年間にわたり追いかけたドキュメンタリー映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」を見た。


わたしが小川さんを知ったのは、国会中継だった。


清潔感あるチャーミングな佇まい。
明朗かつ徹底した調査に基づく論理的な語り口。
そして、情熱ある熱い姿勢。


惚れる…。


東大、総務省出身という一見エリートの肩書を持つ小川淳也さんだが、政治の中ではいわゆる“下流”。出身地の高松がある選挙区から32才のときに“政治家になりたいのではない、この国を良くしたい”と、強い志を持って初出馬した。結果は落選。なんせ選挙区は、香川のメディアを牛耳るオーナー一族の自民党・平井卓也議員(※「ワニ」で検索)の独壇場。

その、家系と地盤・看板はうんざりするほど盤石で…。
家系図はこちら👇
https://kingendaikeizu.net/seizi/hiraitakuya.htm


家族や市民の方の熱心な応援もあり、その後、小川さんは、5度の当選を果たしているが、小選挙区で勝てたのは1度きり。

政党というものは、選挙区で勝たないと党内での要職に就けないらしく、「選挙区で勝てないとダメなんですよ」と、悔しがる小川さんの様子が何度も映画の中に出てくる。思いもよらぬ政党の再編に次ぐ再編に巻き込まれ、当選への不安、政党にいるからできること、先輩議員への恩義、地元の声…いろんな事情の板挟みの中で苦悩する。

外から見たらYESかNOかもしれないけど、
そこに至るに 51:49で悩んでいる。
政治というのは49に目を向けなくちゃいけない。
いまの政治は51だけを見てやっている。

そんなことを言っていた。


志は高く、考えは至極真っ当。諦めず、腐らず、前を向いて、絶えずこの国のためにと努めている。なのに、政党政治や選挙制度に翻弄され、本人が望む、政策を立案し実現するという道になかなか至らない。

だからこそ、親しい人が口にする。
「国会議員より向いている仕事があるのでは?」

彼に魅せられ17年追い続けた監督が聞く。
「国会議員に向いていないのではないか?」


ふと思ったのは、思いつきのようになされる“民意を問う(テイの)”解散総選挙で、全国各地の議員は疲弊しているのではないか、ということ。

政治を志したら、議会に立たなくては意味がない。
議会に立ったら発言権がなくては意味がない。
発言できる立場になるには、小選挙区制で勝たなくてはいけない。
小選挙区制で勝つには、地元の票を手に入れるしかない。
地元の票を手に入れるには金がなくてはいけない。
金をもらうには党内でのポジションをあげなくてはいけない。
党内でのポジションを上げるには小選挙区制で勝たなくてはいけない………(永遠のリピート)

こんな状態では、上層部のやり方に異を唱えたくても、次の選挙(自分の志をたてるためのスタート地点)を思うと声が出ませんよね。

政治は、金持ちの遊びですか?


小川淳也ほど、貧しさを知り、人情味にあふれ、論理的で、実直な人間はいない。だが、この まばゆすぎる ・・・・・・魅力のゆえ、彼のような人間は「総理になれない」と冷笑される。何かが狂っている。それは政治なのか。それとも、無理を通し、道理を引っ込めても恥じない、この社会のありようなのか。     井手英策(慶應義塾大学教授)


家賃4万円台のアパートの一階に暮らす小川議員に驚いてしまった自分こそ、政治を金持ちの道具にしてしまった一部なのかもしれないな、と思った。


井手教授の選挙の応援演説、小川さんとご家族のありかたは一見の価値あり。苦悩しながらも希望を捨てず、ひとに寄り添おうとする生き方がとても美しく、勇気付けられます。


「なぜ君は総理大臣になれないのか」

という問いは、

「なぜわたしは彼を総理大臣にできないのか」という問いでもある。






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