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カツオもサザエも、わたしもあなたも大丈夫

20年後の「サザエさん」を描くと話題になっていたドラマを、1月3日に見た(1ヶ月以上遅れの12月31日に放送されたものを録画視聴)。

「サザエさん」のドラマといえば、古くは江利チエミ、観月ありさがサザエさんを演じ、アニメ同様の楽しく愉快な雰囲気で描かれていた。

しかし、20年後のサザエさんは違った。全員、元気がなく生きづらそうだった。特に、カツオ、ワカメ、タラちゃんの若者たちが生きづらそう。

カツオ(31歳)=やりたいことが定まらず仕事を転々。開店したレストランも客が来ず、閉店の危機。
ワカメ(29歳)=念願叶ってアパレルのデザイナーをしているが、デザインが認められず悶々とする日々。恋人の海外勤務と求婚に心が揺れる。
タラオ(23歳)=将来への明確な希望がないまま就活を繰り返している。まだ就活してるの?と言われている。

みんな自分に自信がない、もしくは揺らいでる。


ああ、すぐに分かってしまった。このところずっと、わたしに呼びかけてくる、自分軸で生きろ!シリーズですね(年末の「紅白歌合戦」を見ているだけでも、自分軸で生きる!という意思表示がたくさんあふれていた)。



サザエさんちの若者3人たちは、最後、迷いながらも自分の心の芯にあるものを選択していくのだが、そのきっかけになったのはサザエさんの、「私は私の好きなことをする」「楽しむ」という意思と、「大丈夫」という言葉だったと思う。

「大丈夫」と「楽しむ(楽しんで)」は、おそらく意図的にセリフに使われていて、心配性なひとからしたら、おいおい大丈夫か〜?というような状況にも、サザエさんは「大丈夫!」と言ってのけていた。


「大丈夫」といえば、5年ぐらい前、とあるセミナーに参加したときのこと。<自分が言ってほしい言葉>を耳元でささやいてもらうというワークで、わたしがリクエストした言葉は「大丈夫?」だった。ほかのメンバーは、励ましや賞賛など肯定の言葉をえらんでいたが、わたしはなぜか疑問の言葉を選んでいた。

誰かに心配してもらいたい。誰かに気にかけてもらいたい。不安定な存在と思ってほしいかったのかなぁ・・・うううむ。

あ。もしかして、わたしがわたしを不安だったのかもしれない。

わたしA「あなた、大丈夫?」
わたしB「さぁ…どうなんですかね? どうです? こんなわたし?」
わたしA「そんなんで大丈夫? 大丈夫じゃなさそうだけど」
わたしB「そんなこと言われても。大丈夫じゃないのあなたでしょうよ!」

こんな感じか…(苦笑)。もしかしたら、わたしがわたしに「それでいいよ、大丈夫!」って言ってほしかったのかもしれないな。


20年後の磯野家。実に暗かった(そのぶん、染みた)。みんなが思い描いている「サザエさん」の楽しく明るい世界は、2000年〜〜明日は明るいはずと、かろうじて信じられた時代〜〜でずっと止まったままなのかもしれない。

20年続くデフレの日本で、わたしたちは、世田谷に家があってもなくても、安定した仕事についていてもいなくても、家族がたくさんてもいなくても、大学を出ても出なくても、漠然と不安になるようになってしまった。

かつての時代は、努力すれば明るい未来を手に入れる希望があった。今は、努力しても結果が出にくい未来が転がっているし、一瞬手に入れてたとしても、なにかのきっかけで失うような危うさがある。それはすべて、幸せは努力で勝ち取るものとポジティブに信じ、幸せになれないのは努力が足りないせいとネガティブな設定に自分たちを落とし込んできたからだ。わたし自身がそうだったから間違いない。

と、この話をすると長くなりそうなので。

もう、理由なんてどうでもいいから、こんな時代。
わたしは大丈夫!って、自分にOKを出して、バーン!と腹など叩いてみるのがいい。サザエさんも、もしかしたらそんな気持ちだったのかもしれない。


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