自動車保険ビジネスの展望
(Twitterはこちら → @yanagi_092)
前回記事のとおり、東京海上の損害サービス部門では5年目に自由論文を提出する必要があります。
この頃から個人的に気になっていた「お客様の保険料に付加されている代理店手数料(約20%)」について、代理店手数料が発生しないダイレクト系損保との比較において、対価に見合うサービスがあるのか検討をしました。
今回は、当時作成した論文のサマリーを書きたいと思います。
専業代理店(パーソナルチャネル)
プロの代理店さんがお客様の窓口になるチャネルです。交通事故が起きたときは事故現場にかけつける等、積極的に顧客サービスを行なっていただいており、ダイレクト系損保にはないサービスがあります。
企業代理店(コマーシャルチャネル)
企業の職域チャネルを指しており、例えば○○重工の社員がまとめて加入する形態を指します。
この場合、専業代理店ほど手厚いサービスはありませんが、団体割引15%程度(←企業によって異なる)が適用されるので、これと代理店手数料20%と相殺される関係を踏まえれば、一定のニーズは残り続けると考えられます。
ディーラー代理店(自動車ディーラーチャネル)
このチャネルでは、自動車の販売とセットで保険加入をしてもらうという形態ですが、自動車ディーラー社員の本業は自動車の販売であり、損害保険に詳しい人は少ない印象です。また、前述の専業代理店のような交通事故の手厚いフォローも少なく、代理店手数料20%相当のサービスがあるかと言われると、少々疑問があります。
もちろん、すごく熱心に保険を勉強されているディーラー社員さんもいるのですが、自動車の販売が本業ということを鑑みると、全ての方に専業代理店のような対応を求めるのは難しい、といった事情もあります。
とはいえ、保険を売る側からすると「自動車販売とセットで保険を売る」という仕組みは強力で、新規の保険契約は引き続き自動車販売とセットで成約できると思いますが、自動車保険は1年更新です。契約更新の際に、手厚いサービスのある「専業代理店」や、価格訴求力のある「ダイレクト系損保」に対抗するのは難しく、「これらの仕組みに気付いたお客様」の保険契約が流出してしまいます。
保険商品の利益の源泉は何なのか
上記構図を前提に置くと、保険のことを理解しているお客様ほど、より最適な保険(サービス重視の専業代理店や、価格重視のダイレクト系損保)を選択し、何も考えない人ほど損をする(その分、保険会社側が得をする)という構造になっている点は否めません。
また、契約時に「おすすめ条件」が自動的に保険会社から提示される仕組みになっていますが、多数の事故を扱ってきた損害サービス部門の経験者からすると、不必要な補償内容(≒ 保険会社側の収益性が高い)が混ざっているのも事実です。
結局のところ、このような情報の非対称性が保険会社の利益に寄与している点は否めず、顧客側が能動的に情報を掴むほど、保険会社の利益は縮小していくと考えられます。
とはいえ、「めんどくさがりの人」「金融リテラシーの低い人」は一定数残りますので、全ての人が能動的に保険契約を変えていくとは考えられませんが、情報化社会の進展により、「情報弱者」と「情報強者」の棲み分けは、今後も進んでいくのではないでしょうか。
そして、大手損保にとって都合の良いお客様は、「情報弱者」・・・なのかもしれません。
異動内示の前夜
ぼく「ようやく論文も出した、大変だった。ところで、5年近く姫路で損害サービス(示談のお仕事)をしているのだけど、いつになったら異動になるの?」
色々と課の事情もあり、新人総合職として5年は異例の長さでした。しかし、私は公認会計士になって会社を辞めるつもりだったこともあり、あまり気にしていませんでした。
とはいえ、業務知識はガッツリ勉強しており、これ以上自動車保険を勉強する意欲は無い(&示談の仕事から卒業したい)と思ってたので、異動希望は以下のような主張をしていました。
ぼく「コマーシャル系の火災新種の損害サービスがやりたいです!(そして2~3年後に辞めます・・^^)」
そして、異動内示の前日の夜に、課長から囁きを受けました。
課長「まぁ、あれだ。東の方だ。じゃ、明日よろしく。」
ぼく「コマーシャル系の火災新種をやっている部署を考えると、東京かな~、名古屋かな~」
(続く)
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?