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2022年10月に聴いた曲5選

 どうもヤンです。今回も良作だらけです!


YOASOBI「祝福」

 小説を音楽にするユニット、YOASOBIが送るアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』オープニングテーマ。「小説を音楽にする」というコンセプト通り、今回も大河内一楼による小説「ゆりかごの星」を原作として曲が作成されております。

 私は「祝福」がきっかけとなり『水星の魔女』を絶賛視聴しているのですが(初ガンダム!)、この曲から「ガンダムらしさ」が非常に出ているのが一つ目の好きな点ですね。サウンドは電子的かつ機械のようなかっこよさがあり、2番Aメロでのケロケロボイスの使用もまた未来感があります。ここら辺はコンポーザーAyaseの手腕がよく出ていますよね。そして相変わらず高音と転調に対して透明感のある歌声で完璧に対応するikuraの凄さよ。YOASOBIのお二人は本当にベストタッグですよね。
 また、YOASOBIは小説を原作にすることにより歌詞のストーリー性が高いことでも有名ですが、今回の「祝福」の歌詞もまた俊逸なものであると感じます。原作小説「ゆりかごの星」はガンダム・エアリアル視点から見た主人公、スレッタ・マーキュリーの成長譚となっているのですが、「祝福」の歌詞もまた同じくエアリアル目線のスレッタのことについて綴られています。「逃げたら一つ、進めば二つ」と母から教えられ、泣き虫ながらも強く育ってきたスレッタと、それをモビルスーツ・ガンダムという形で支え、二人三脚となって歩みをともにする覚悟が見えるエアリアルの関係性がよく分かる歌詞となっています。マジで胸熱。
 そしてこの曲は、水星の魔女のプロローグとして放映された、娘のエリクト・サマヤと母のエルノラ・サマヤの物語をも彷彿とさせます。プロローグではエリクト・サマヤ4歳の誕生日の時に起こった事件について描いているのですが、この物語を見ると「祝福」という言葉の重さがのしかかってくるような思いがします。
 果たして、このプロローグを踏まえて本編の物語はどう進展していくのか、非常に気になります。


藤井風「grace」

 藤井風の最新デジタルシングル。

 タイトルの「grace」には、「優美」や「親切」「神の恵み、恩寵」や「祈り」という意味があり、MVもヒンドゥー教が盛んなインドにて撮影されていることから、この曲には神聖的な要素が含まれているものと思われます。
 そして、私はまず、「令和の時代に神様の存在を信じるような曲を出すのか」ということに驚きました。歌詞の途中で「助けて神様」と、いきなり神様に懇願するような曲というのは、見たことがありそうであまりないような気がします(最近の曲で神様絡みの曲といえば、ピノキオピー「神っぽいな」が挙げられると思いますが、あの曲は多くの日本人が「神曲」「神絵師」などと作品や人を容易く「神」扱いすることを揶揄した歌なので…)。現代になり宗教の影響力が小さくなってきた今だからこそこういう歌を出す、そういうあたりが「藤井風」という人物らしさなのかなと思い、一人で唸っておりました。
 しかしながら、驚くにはまだ早いです。この曲をよく見てみると、神様は「私」の中にいたり、「あなたはわたし わたしはあなた」と言い出したりするなど、ちょっと奇妙な点が見受けられるんですよね。この点については、ボイストレーナーのしらスタの歌詞考察が的を得ていると思いましたので、そのまま載せさせていただきます。藤井風の考え方、好きかも。

 この曲を聴くと、藤井風の柔らかく繊細な歌声と、歌詞の神聖なパワーを感じて、穏やかな気分になれると感じます。それでいてこの曲を歌うとなると、不思議と爽快感もある。あらゆる面からリラックス効果を発揮させる、まさしく神業的な能力を持つ曲です。


和ぬか「真っ裸」

 シンガーソングライター和ぬかの3ヶ月連続リリーズ企画第2弾の楽曲。お馴染み100回嘔吐さんとの共同編曲によるロックナンバーです。

 前作「絶頂讃歌」に続き、少しセンシティブな大人の匂いがするナンバーですね。「あんたに構ってらんないだって / 女のハートが真っ裸晒して / 恥じらうのよ」という歌詞が印象的な、男女関係において情事の世界に誘う・誘われるの関係性を描いたような曲だと思います。
 先程の神様をテーマに定めた「grace」に続き、エロティズムの世界を描く曲というのも令和の時代では珍しいのかなと思います。前作「絶頂讃歌」をリリースしたとき、和ぬかはこのようにツイートしています。

 サザンオールスターズといえば、1970年代より情事やセックスなどにまつわるありとあらゆる曲を生み出してきた伝説的なバンドです。その破天荒な歌詞の内容は当時の若者たちから人気を集め、熱狂したと聞いています。今でも私の両親はサザンの曲をよく聴いていますしね…(その影響で私もたまに聴くし)。
 しかし、時代の流れからか、はたまたコンプライアンス意識の強化からか、いつしかエロティズムな雰囲気の曲は影を潜めていったように思います。平成の時代にはジャニーズや坂道シリーズといったアイドルが若者から人気を集め、爽やかでフレッシュな歌詞へと移り変わって行きました。
 そして時代は令和に移り、TikTokが流行の最前線となった時代において、和ぬかは「エロティズム曲」を現代に蘇らせようとしているように思います。思えば、和ぬかのデビュー曲に当たる「寄り酔い」も、大人でビターな雰囲気が漂う和風ポップスでした。このような曲がTikTokで流行ったのも、ある意味では驚きと言えるでしょう。
 「寄り酔い」では和風、「絶頂讃歌」ではダンサブル、そして「真っ裸」ではロックなサウンドでちょっとドキッとする大人な曲を描き続ける。和ぬかの今後の展開から目が離せません。


MKLNtic「ハローマイトリート」

 実力派歌い手(兼VTuber)である鹿乃(鹿乃まほろ)とろんの二人によって結成されたMKLNticのオリジナル曲。2022年11月30日発売予定のスプリットEP、鹿乃 / MKLNtic「いちごいちえ Cerebration / はっぴーらいふ」収録の曲です。作曲は「熱異常 (feat. 足立レイ)」で「The VOCALOID Collection 2022 Autumn」ランキング1位を獲得した、現在最も勢いに乗っているボカロPと言っても過言ではないいよわ。

 「ハローマイトリート」は、MVのサムネイルから分かる通り、ハロウィンをテーマとした楽曲。トリックオアトリートの「トリート」の方をタイトルにしている通り、甘くてかわいい感じの歌となっています。
 この曲で注目したいのが、ツインボーカルの使い方。Bメロでは2文字ずつ、サビでは英単語一個ずつをそれぞれのボーカルに歌わせ、左右にリズミカルに揺れているかのような楽しさが味わえます。そして掛け合いのパートの後には必ずユニゾンやハモリが来るので、ガッチリとハマる整合性もグッド。ハロウィンの陽気な夜を見事に演出しています。
 そして、鹿乃とろんの声が良すぎるのもやはりポイントと言えるでしょう。鹿乃はかわいげもありながら大人びて落ち着いた印象もあり、ろんはかっこよさとかわいさを両立した印象があります。その二人の相性はもう抜群と言えるでしょう。リズミカルな曲の良さをさらに引き出せるコンビネーションであると感じました。
 最強の声の相性を持つ鹿乃とろんのツインボーカルを、いよわが独自のポップなサウンドとボーカルの振り分けによって最高のハロウィン曲を作ってきたなという印象です。何回でもリピートできちゃう…!


Nornis「Through the glass」

 にじさんじが誇る3人の歌姫、戌亥とこ、町田ちま、朝日南アカネの3人によるユニット・Nornisの3rd Digital Single。1st Single「Transparent Blue」収録曲です。作詞 / 作曲 / 編曲はHato。

 先ほどの「ハローマイトリート」が「トリート」の曲であるならば、こちらは「トリック」に主眼を置いたハロウィン曲。ストリングスを用いたダークな雰囲気と、鏡の中の世界へ人間を誘っていく歌詞が、オシャレでもあり多少の怖さも感じますね。それがいい。
 そして、この3人の歌唱力に聴き惚れるのがこの曲のすごいところ。3人それぞれのすごいと思った点を挙げて行きますね。

・戌亥とこ…2番歌い出しのリズム感。「水たまりの月」の最後に細かく息を吐くことでリズムを区切っている。地味だけれども緊迫感を出す歌い方。
・町田ちま…ラスサビ終わりのロングトーン。緩やかなビブラートからエッジボイスを含ませて切るという歌い方が私の性癖にぶっ刺さりすぎる。
・朝日南アカネ…1番歌い出しの低音。「「お前は誰だ?」と」と、この曲で唯一セリフを含む歌詞を歌うのですが、響きが良い低音にビブラートもかけることで不安げな印象を演出している。見事。

 と、このように3人の歌い方の素晴らしい部分をそれぞれ見せつつ、サビでは3人の荘厳なコーラスによりハロウィンらしい合唱曲に仕上がっております。夢の世界へとドンドンと引き込まれるような不思議で妖艶な世界観の楽曲で、こちらもリピートが止まりません。


 今回はこの5曲!また来月もお楽しみに〜

 

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