【現役競走馬烈伝】亡き父に捧ぐ称号【タイトルホルダー】
ーーブラッドスポーツと呼ばれるほどに、
血統が重視される競馬という競技。
厳選された血筋を受け継ぐサラブレッドだけが、
競走馬となることを許される。
そんなシビアな才能の世界は、
時に創作のようなドラマを我々に見せてくれるーー
【現役競走馬烈伝】
タイトルホルダー編
タイトルホルダーという馬について知ってもらう前に、まずその父について説明しておく必要があります。
ドゥラメンテ
生涯戦績9戦5勝うち2着4回
主な勝ち鞍(勝ったレース)
皐月賞、日本ダービー('15年)
同期には北島三郎氏の所有馬でウマ娘にも登場する名馬・キタサンブラックがいます。
ドゥラメンテは3歳時にのみ出走できるクラシックレース(皐月賞、日本ダービー、菊花賞)のうち、皐月賞とダービーを勝ち、クラシック三冠に王手をかけました。
しかしダービー後に骨折が判明し、療養のため最後の一冠、菊花賞の回避を余儀なくされます。
その後は復帰し、ドバイシーマクラシック、宝塚記念といった国内外のビッグレースに出走。
宝塚記念の後に発覚した怪我により競争能力喪失とされ現役を引退しました。
引退後は種牡馬としてその血を後世に繋ぐ役目を担いますが、2021年8月に急性大腸炎のため死亡してしまいました。
そんな彼が遺した仔のうちの一頭が、今回紹介するタイトルホルダーです。
輝かしいタイトルを求めて
タイトルホルダーは2歳の2020年10月に中山競馬場でデビュー勝利を納めました。
彼の特徴は逃げ戦法。
終始先頭を進みそのままゴールまで押し切るスタイルです。
2戦目からは2着→4着と同期の強豪たちの中でも好走し、
明けた3歳で迎えた4戦目、GⅡ(レースのグレード。最高位はGⅠ)弥生賞ディープインパクト記念。
関東の若きエース横山武史騎手を背にデビュー以来の快勝を収めました。
この勢いに乗ってクラシック初戦、皐月賞(GⅠ)に駒を進めたタイトルホルダー。
しかしそう簡単には勝たせてもらえないのがクラシック戦線。
皐月賞では2着で惜しくも勝利を逃すと、次戦・日本ダービーではシャフリヤールとエフフォーリアによる僅差の激闘をよそに6着。
失意の中秋の大目標・菊花賞に向けて休養に入りました。
父へ送る最初の称号
休み明け初戦・セントライト記念(GⅡ)では1番人気を背負うも思うように逃げられず13着と惨敗。
最早ここまでなのか…
タイトルホルダー陣営の不安をよそにその日は訪れます。
迎えた菊花賞当日。
ここまで未経験の3000mという長距離で
その才能は爆発した。
スタート直後に先頭を奪うと、リズムよく後続を引き離したタイトルホルダー。
中盤で一気に緩めて息を入れると、最後の直線では後続を全く寄せ付けず、
5馬身差(1馬身=約2.4m)引き離しての圧勝劇。
8月に亡くなった父に捧ぐクラシック最終戦を圧倒的な強さでもぎ取ってみせました。
有馬記念で見た希望、確かな成長の手応え
菊花賞の次戦として選択したのは、
暮れの大一番・GⅠ有馬記念。
菊花賞を共にした横山武史騎手がエフフォーリアに騎乗するため、兄である横山和生騎手に乗り替わりになりました。
(以降のレースでも和生騎手が手綱をとることになります)
レースではハイペースの大逃げが武器のパンサラッサに先頭を譲り、2番手を追走。
パンサラッサを果敢に追走するも、不利な大外からのスタートが響いたか5着での入線となりました。
しかし手応えはこれまで以上に良かったようで、
和生騎手はレース後「一瞬、夢を見ました。」
とコメントしました。
こうして終えた3歳シーズン。
これからの飛躍を予感させる一年となりました。
4歳春・快進撃の幕開け
春は天皇賞(春)を目標に始動する予定だったタイトルホルダー。
しかし、有馬記念後に怪我が判明します。
3月の阪神大賞典からの出走予定も
一旦白紙に戻りましたが、幸い回復が早く
初戦を日経賞(GⅡ)に変更して4歳春シーズンに臨みました。
日経賞ではこれまでの実績から単勝オッズ1.6倍の1番人気に押されると休み明けながらもスタートから先頭を譲らず、難なく勝利。
引き続き手綱をとる横山和生騎手と共に、
3200mの長距離GⅠ・天皇賞(春)へ向かいました。
例年の会場である京都競馬場が改修工事中のため、昨年に続き阪神競馬場での開催となった同レース。
枠順抽選で大外16番を引いたことから
1番人気は昨年の勝ち馬ディープボンドに譲りました。(一般的に大外枠は逃げ馬には不利とされているため)
コロナ禍による入場制限が緩和され
客足が戻りつつあった仁川の舞台で
またしても…
スタート直後に隣のシルヴァーソニックが落馬するアクシデントを尻目に先頭のポジションを確保すると、そのままマイペースに持ち込むタイトルホルダー。
最終コーナーでスパートをかけると、
その無尽蔵のスタミナで後続を振り切り
7馬身差の圧勝。
あの菊花賞よりもさらに着差をつけてみせました。
これにより2つ目のGⅠを制したタイトルホルダー。
勢い止まらぬまま、春の総決算へと向かいます。
超ハイペースを制し現役最強へ
春競馬の締めくくりとして向かったのは
夢のグランプリ・GⅠ宝塚記念。
父・ドゥラメンテも出走したこのレース。
結果は2着に敗れ惜しくも夢を逃しました。
梅雨の時期とも被り馬場が荒れやすく、有力馬の回避が続出するレースですが、
今年は稀に見る豪華メンバーが揃いました。
21年年度代表馬 エフフォーリア
怪我から復帰した三冠牝馬 デアリングタクト
ドバイでGⅠを制した大逃げ馬 パンサラッサ
22年大阪杯覇者 ポタジェ
以上にタイトルホルダーを合わせた5頭のGⅠ馬を含む全18頭の強豪たちが揃い、初夏の仁川で王座を争うことに。
タイトルホルダーにとっては過去1度も先着していないエフフォーリアとの雪辱、有馬記念ではペースを奪われ苦戦を強いられたパンサラッサとの再戦に注目が集まりました。
1番人気をエフフォーリアに譲り、自身は単勝オッズ4.2倍の2番人気に支持されたタイトルホルダー。
父の果たせなかった夢をのせて、灼熱の戦いに臨みます。
ゲートが開くと好スタートを切り前へ飛び出したタイトルホルダー。
一方でやや出遅れながらのスタートになったのは同じく逃げ馬のパンサラッサ。
この2頭による先頭争いに俄然注目が集まります。
最初のコーナー手前でパンサラッサが先頭に立つとそのままタイトルホルダー以下後続を引き離す形に。
レース前からハイペースが予想されていましたが、前半1000mのタイムはなんと57秒6。
中距離戦の1000m平均タイムが60秒程度と言えばその速さが伝わるでしょうか。
猛烈なハイラップを繰り出すパンサラッサの後ろを無理なく3馬身ほど離れて追走するタイトルホルダー。
4コーナーで一気に詰め寄るとここで満を辞して鞭が入り、タイトルホルダーが先頭へ躍り出ました。
後方集団も猛然と追い込んでくる中、タイトルホルダーは前半のハイペースをものともせずに突き放します。
あまりにも、強い。
結果はタイトルホルダーが2馬身差つけて完勝。
しかも2分9秒6のレコードタイムというおまけ付きでした。
これまで勝てなかったエフフォーリアを下したうえ、初めて逃げずに結果を出したことになります。
こうして彼は現役最強の座を確かなものにしました。
またも父の逃したレースを制したタイトルホルダーは、更なる高みを目指します。
そして秋、世界のタイトルへ
宝塚記念の結果を受けて、陣営はかねてより出走登録をしていたフランスのGⅠ凱旋門賞への挑戦を表明。
凱旋門賞はパリのロンシャン競馬場 芝 2400mで行われる芝の世界最高峰とされるレースで、日本からは未だ勝ち馬が出ていません。
勝てば日本馬初の歴史的快挙。
今、日本中の競馬ファンがタイトルホルダーに期待を寄せています。
今年の凱旋門賞の日程は10月4日。
日本時間では夜11時ごろの発走になります。
(間違ってたらゴメンナサイ。訂正お願いします。)
日本の夢をのせて走るタイトルホルダーを
ぜひ応援してあげてください!
次回、エフフォーリアァァァアア!!!!
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