あんこと生クリーム入りコッペパンの思い出から料理の可能性を考えた話。  *随筆*

あんこと生クリームの組み合わせ。この出会いははっきりとおぼえている。

高校2年生の昼休み。私の通う高校は、昼休みに移動販売のパン屋がきていた。廊下とも広場ともつかないスペースに、長机を並べ、市販のパンが入ったプラスチック製の長方形容器を置いて販売する、というスタイルだ。
毎日人だかりができて、早く行かないと人気のパンは売り切れてしまう。
ある日クラスメイトのKさんが、小倉あんと生クリーム入のコッペパンを購入してきた。売れ残りで仕方なく買ってきたと記憶している。

私を含めて友人たちは、口をそろえて
「なにそれ〜?」❨まずそうだ❩と否定した。
しかしKさんは、それを食べて、
「意外と美味しい」という。
この『あんこと生クリームの組み合わせ』は、その後他の場所でも食す機会が増えた。食べてみると、ほんとに美味しかった。

よくよく考えてみれば、『宇治金時に練乳』という組み合わせがあるのだから、合わないこともないのに、なぜ『まずそう』だときめつけてかかったのだろう。そういった先入観は良い意味で裏切られることがある。そして今や『しゃぶしゃぶに生クリーム』『からあげにチョコレート』という組み合わせまで美味しいといわれている時代になった。

なにはともあれ、『あんこと生クリームの組み合わせが美味しいのだ』ということを知ったのはそのときだ。ということだけは、はっきりと覚えている。

今となってはあたりまえの組み合わせだけれど、かつては考えられなかった時代がある組み合わせの品が他にもある。
たらこスパゲッティー、いちご大福、ツナマヨのおにぎり、アイスクリームのてんぷらなど。

最初に思いついた人は革新的だ。

『組み合わせ』による『新たな美味しい』は、手に入れることが難しくない食材からできている。『組み合わせ』それは膨大な数の可能性だ。そこに注視すれば、料理はまだまだ夢のある発明や発見の宝庫なのかもしれない。


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