バンドマンに恋煩い【4】
iyamori(スナック)
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⚠️注意⚠️【バンドマンに恋煩い3】からの続きです。先に【バンドマンに恋煩い1、2、3】を読んでからこれを読んでくださいませんかと思います。1、2、3が面白かったらスキもお願いします。励みになります。
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その夜の横浜のそこのスナックには大宇宙からの魔法がかかっていた。
想えば、木更津のあのラーメン屋にだって魔法がかかっていた。
どうして宇宙はそんな魔法をyamoにかけたんだろう。
yamoがお酒が飲めないから、別の何かで酔わせたかったのだろうか。
強烈な何かで酔わせておきたかったのだろうか。
何のために。
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7月。
横浜市内のいつもヒマなスナックの店内。
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「ほらほら、、ええ〜っとなんとかのワダチ」(yamo)
「あ!希望の轍!!サザン!」(ガヤ1)
「島谷さん、サザンもスキ?」(ガヤ2)
「特別好きじゃないけど、希望の轍は好き〜〜TUNAMIとか」
「、、ツナミは俺、宮城出身で心が痛いから歌いたくない」(ガヤ2)
「、、っ、、おお、、そうかそうかゴメンゴメン(てか急に繊細)」
「ツナミだけはちょっとムリで、、、」
「いい、いい。ゴメンゴメン。歌わなくていいって」
「ツナミのツって言うだけで俺今でも(しょんぼり」
「わかったわかった。yamoが悪かったって。ツナミはよそう。ね。」だいぶ酔ってるなガヤ2
♩🎵🎵♩🎶🎶🎵♪
トールちゃんの「希望の轍」で空気を刷新。
最高!!いいっ!ホントに上手いな〜
ホントずっと聞いていたい。
いつまでも聞いていたい。
いつまでも見ていたい。
歌う時には姿勢が良くなる。
座ったままではあっても背筋が伸びる。
オーラが華やかさを伴って変わる。
とは言え、急に繊細になったガヤ2人(特に2)にお冷やを用意して持っていってみる。
大丈夫?
ちょっと酔った?
大丈夫です!(前のめり)
島谷さん、あの常連さんは本当は常連さんでしょ?
ん?(まだそこ?)あのお客さん?
そうですよ!
全然全然。あの方も本当に今夜初めて来てくれたの。
っっんなわけないな〜〜〜(2人そろって疑いののけ反り)
笑笑 なんでよ。ウソをつく理由が無いでしょ〜よ
ねえ?と、トールちゃんに視線を移す。初めてですよね?
目を逸らされた。聞こえていないふり。
ん?(小さい違和感)
「、、yamoちゃん何か歌いなよ」(トールちゃん)
(だな)「オッケー👌」デンモク貸せ。マイクをよこせ。
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6月。
千葉県木更津での夢のように楽しかった夜から数日後。イヤ、わずか2日後だな。
ピーチさんからyamoのLINEに着信。
「yamo!!見つけた」写真添付
写真には見覚えのある顔と聞き覚えのある名前。
facebookのアカウント写真だった。
ドキンと音が聞こえるほど心臓が跳ねる。
と、いう表現を何かの小説で読んだ気がするが、まさにだ。それだ。
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木更津から戻って、yamoもピーチさんも日常に還っていた。
当時、ピーチさんはそもそもトールちゃんのトールという名前すら覚えていなかった。
あんなに小突き回しておいてだ。yamo的には、小突かれているトールちゃんも含めてそれが非常にツボだったのだけれど、あんまりと言えばあんまりだなという印象だ。
自分の醜態も悪態(そこまでじゃない笑)もかわい子ぶりっ子も全部きれーーーいに翌日には忘れていたのだ。これには羨ましいという言葉がやはりしっくりくる。それしか思いつかない。
で、トールちゃんと同様、ピーチさんも翌朝目覚めて、「なんか昨夜はやけに楽しかったな〜と思った」わけだ。
そして、その楽しかった要因の1つに、ピーチさんのわずかな記憶の中にもトールちゃんの存在はあった。
「あのホラ、アタシ達の真ん中に居たアイツ。名前が思い出せないのよ〜」
「教えませんよ」笑
「、、!!、、yamoは知ってるの?本名だよ?」
「普通に名乗ってました」本名じゃない名前って?笑
「えええっ、教えてよ。yamoは気にならないの?」
気になるのか?
気にならないのか?
そういう思考をずっと忘れていた気がした。
なんなら、「木更津のラーメン屋での夢のような一夜」(何度も言う)の翌日の、イベント会場だったホテルの朝食会場での、トールちゃんの180度素っ気ない態度を受けた段階で、yamoの中では「終わった」感があった。
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「おはようございます〜」と、明るく極めて普通に声をかけたのはyamoの方だった。
今から考えれば誠にバカみたいだが、
イエーイおっはよう!!(ハイタッチ)くらいのテンションを期待していた。
いやマジで。
ところがだ。
暗い。
目も合わせてくれない。
近寄ってもこない。
まるで、知らない女に突然声をかけられて困惑しているという様子だ。
アレ?と思いつつも、「こっちで一緒に食べませんか?」と誘ってみた。
「いや、連れがすぐ来るんで」
知ってるよ、そのお友達も一緒にだよと思ったが、それ以上の会話が憚られた。
それくらいよそよそしい。
yamoはだいぶ頑張って、だからシールドを張った。
「終わったこと」「先には続かないこと」と、だいぶガッカリはしたがしょうがないこととした。こっちが想うほどトールちゃんは何も思っちゃいなかった、、と。
ちぇ。
昨夜は、yamoに名前と年齢をしつこく聞いてきたのにな。年齢はピーチさんと同級生ということにしておいた。ホントに〜??と、顔を寄せてきて疑っていた。ねえねえ名前は?俺ね〜トール〜って楽しそうに名乗っていた。ねえねえ呼んでみて〜って言うのも面白くて面白くて泣きながらyamoは笑った。yamoがトールって呼んであげると、ハイ!って自分が飲んでる緑茶ハイのグラスを両手でyamoに差し出すようにして、トールです!よろしく〜なんて乾杯を促す。yamoの名刺を嬉しそうに受け取って、わああ〜占い師さんなんだ〜ここに電話していいの?ねえ明日電話していい?と言うトールちゃんに、いいよいいよデートに誘って〜なんて大笑いしながらyamoは言った。えええホントに電話しちゃうよ〜と言いながら名刺をもう一回眺めてTシャツの胸の小さいポケットにしまった。yamoの名刺が仕舞われたポケットを、トールちゃんは確かにyamoの目を見つめながら「ここにしまったよ」というふうにポンポンと叩いた。ウンとyamoはうなづいた。yamoがだからバカだった。それを真に受けた。木更津くんだりまで来た意味はコレだったか!くらいに思っていた。惚れっぽいのか?とにかくバカだった。ホントにバカ。yamoがやっぱりバカなんだ。ハイハイお終いお終い、そういう気持ちで朝食を食べた。
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7月。
横浜のスナックの店内。
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ろれつも怪しくなってきただいぶ酔いが進んだガヤ2人。
歌いたいのか歌ってるつもりだけなのか分からない、ぐだぐだの米米クラブ「浪漫飛行」が流れていた♪🎵
「yamoちゃん」
「ん?」
「ちょい」と、耳を貸せという仕草。
喜んで貸す。
耳にキスされるんじゃないかと思うほど近い。
不思議な既視感。まただ。
「ママつまんなそう」
「んんん、、そうね」トールちゃんの耳元に応える。
いいの?というふうな目をyamoに向ける。
タバコの煙をyamoの反対側にゆっくり吐き出す。
「たまにああなっちゃうの。あれってどうしたらいいの?」
「ママってどんな曲が好きなの?俺歌うよ」
「いいね👍 そうだな〜お客さんとよく東京ナイトクラブ歌ってる」
「、、ムリ」
「笑 あ、あと学生時代とか仲良しの女のお客さんと歌ってるよ?」
「、、、、ん。、、ほっておこう😌」
笑笑笑 笑う。
ママは背中を丸くして、カウンターの中央でスツールに座ってタバコを吸っていた。
ゴメンねママ。yamoは今夜はとても楽しい。
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6月。
「yamo!たいへんだ!」
もう寝ようとしていた夜も遅い時間。
ピーチさんからLINEに着信。
「どうしたんですか?」
「トール(陰では基本的に呼び捨て)から返信が来た!」
「マジで?」
「マジマジ 笑」
「キャハハハハすご〜いピーチさん」
「で、今メッセンジャーの電話で喋った。7月、yamoの誕生日だから横浜で飲むぞって言ったら、サプライズ的なやつですか!ハイ分かりました!行きますって〜〜ギャハハハハハハなにアイツ〜〜(いいノリ〜)」爆笑
なぜこういう時って大笑いになるんだろう?
夜中に横になっていた体を起こして笑ってしまった。
まさかの展開に驚き、そんなことってある?と思った次の瞬間に笑えてくるのはなぜだ。
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と、いうわけで次回に続きます。
なかなか終われないぞ?困ったな。
次回、その夜、トールちゃんと2人っきりになりたいな〜とは思っていても、ただアリガトウゴザイマシタと結局はyamoはトールちゃんを帰らせてしまいます。それを、ピーチさんに「千葉から来てるんだぞ!」と批判されてしまいます。
お酒を全く飲まない、飲んで気持ちよく酔っ払うという習慣が全く無いyamoの決定的なその夜の失敗に乞うご期待。
なんてな。笑
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