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『同伴』は普通は嬉しいの?


iyamori(スナック)

*****

「え?嫌なの?」と、ママに聞き返されてyamoの方がびっくりした。

「え?逆にですけど、普通は嬉しいものなんですか?」

ーーーママは完全に困惑していた。

*****


yamoが勤めるスナックには、yamoの他にもう2人女の子が居る。
そのうちの1人が(仮にM)今月6月がお誕生日なのだ。
(ちなみにyamoは7月がお誕生日)
そこで、そのMちゃんにお寿司をご馳走したいお客様が居て、そのお客様にはスナックのもっと長い付き合いの常連様がくっついてきて(お友達同士)、Mちゃんをそこのスナックに紹介したのはyamoなので、スナックのママと長いお付き合いの常連様が、お前がMちゃんと寿司食いに行くならyamoちゃんも俺も行くと言い出した。
便乗だな。
もちろんyamoの寿司代はそのもっと長い付き合いの常連様が持つ。

それを、ママが、それこそ大喜びで、キャンキャンキャンと、お休み中のyamoにわざわざ電話をかけてきて、「遠慮なんかしないしない♫絶対ダメよ。Mちゃんのお誕生日のお祝いだけど、良いじゃない良いお誘いじゃない行ってらっしゃいよ〜〜」と、yamoに言う。


えええええーーー
なんでわざわざーーーー??(時給も出ないのに〜?)
と、ごねるyamoに対して、その日のその瞬間はママもきっとyamoの嫌気は本気にしていなかった。

遠慮するんじゃないの。yamoちゃんの悪いところよ♫なんて感じで、どう〜も嬉しそうだ。嫌がっているyamoのことは全然気にしていない。ポーズだとでも思っていたかもしれない。

電話で、なぜ寿司屋に行った方が良いのかというところを一通りママから説明を受けて、心から嬉しそうなママの気持ちにyamoはいつもの共感力が発揮されて断れなくなる。嬉しくないのに嬉しいような気がしてしまう。
喜ばねばと思ってしまう。

内心はしぶしぶであるが、とにかくMちゃんのお誕生日のお祝いで、スナックのお客様と外で食事をして、スナックに『同伴する』計画は進んだ。


ある日、yamoの出勤日に、そのママとの付き合いの長い常連様が来店した際、
「yamoよ〜、お前のお誕生日にはちょっと良いイタリアンに連れて行くからな〜」とその常連様が言い出したので、yamoは若干震えた。寒くなった。

楽しみにしとけよ!と、人差し指で指された。

ぶるっ。

yamoはママに言った。

「Mちゃんのお誕生日なのでと言うことでお約束した今度のお寿司屋さんは行くんですけど、オマケだし、一回だけだと思ったので行くんですけど、でもまた行くんですか?次はイタリアンだって言ってますよね?」

「、、!!、、え?嫌なの?」

本気でyamoが嫌がっていることが今度は直接だったのでよーーっく伝わったのかもしれない。

「え?逆にですけど、普通は嬉しいものなんですか?」

そして、

「、、、、。嬉しいわよ。ママがyamoちゃんくらいの頃は」と、ママやママが育てた女の子達の毎年のお誕生日には、誰が誰からいくら分のプレゼントを貰い、どんな良い店でどんな良い食事をとらせてもらうのかで競っていたと、マジで?ウソ!!そおお〜んな世界も有るんですね〜という話しを聞いた。

Mちゃんにお寿司を食べさせたいお客様が現れて、yamoには現れなかった。

いや、Mちゃんのお誕生日がyamoより先に来たから?笑


とにかく、「yamoにも食わせてやらなきゃダメだろ〜よママよ〜」と、言ってくれたその常連様の心使いがママは涙が出るほど嬉しかったのだと、バッチバチのつけまつ毛をパッタパタさせて「信じられない」という目でyamoを見る。
嬉しくないという意味が分からないという顔をする。悲しそう。

涙が出るほど嬉しかった。。。のか。

ふむ。確かに本当にそれはそうだったのだろうなと思う。
有り難いことだ。
yamoは本当にママに愛されている。
そんなママのことがyamoも今では大好きである。

でも、yamoも今回ばかりは譲れない。

あくまでこのお店の中でだけでお客様との「お付き合い」は完結していただきたいですと言った。
ママの居ない所で、ましてや全く知らないお店にお客さんとだけで行って、そこで笑顔で居られる自信が全くyamoには無い。

一緒に行くお客様にもよるのかもしれない。

もしかしたら、

もしかしたら、別のお客様だったら、

嬉しい〜ってことになるのか?、、もしれない。分からない。本当に分からないのだ。

その世界を知らない。
その世界で「楽しかったのよ〜」という時代をyamoは味わっていない。
このお客様に外に誘ってほしい〜と思ったお客様に未だ会えていないし。

時間から時間。
ママが吸うタバコの煙にも慣れてきた。
お店でだけ、仕事としてというなら、好きでもないおっちゃん達にニッコリもしよう。
猫背の背中をスッと伸ばして下手くそだけどカラオケも歌おう。
時給は出ないけど、お付き合いということでなら、お店に行って懇親会のような集まりに参加するのもやぶさかではない。
ママが居て、マスターが居てという場所でなら、それは大変光栄なお誘いだと思える。


*****


「ママ、、ホントにすみません。ここに勤め続けることをyamoが希望する場合、そういうお客様とのお外でのお食事もセットだと言うなら、、yamoは、、」

「!!大丈夫よ!!大丈夫。yamoちゃんにはそれは負担だって、ママがピシッと言うわよ。断っておくから心配しないでいいの」

「ホントに?ですか?」

「ホントよ大丈夫よ、、、、」

ママはだいぶしょんぼりして、カウンターに戻って、カラオケでフィーバー中のその歌唱が終わるのを待って、「yamoちゃんイタリアン負担だって」と、ド直球に、まさにまんま常連様に伝えた。しかもyamoも居るそこで。

yamo苦笑い。

苦くてもなんでも笑えていれば良いが。笑


ママは最近物忘れが激しいので、忘れないうちに伝えるべきは早く伝えることを良しとしている。それはそう。とても正しい。

で、だからって、というタイミングだな。

「yamoちゃんイタリアン負担だって」

常連様の絶句っぷりったら。

カウンターを挟んで向かい合って2人でしょんぼりしちゃった。

ええええええーーーマジで〜〜???という気持ちと空気感のyamo。


*****

結局、yamoのお誕生日にはお店に常連様がケーキを買って差し入れるってことで決着。なんならyamoちゃんを連れて行きたかったイタリアンで、ピザでもパスタでも買って持ってきてとママはおねだりしていた。さすがだ。


と、いうわけで今回は以上です。
せっかく愛されて働けているし、やっと楽しく感じ始めたところだったので出来れば辞めたくなかったyamoちゃんでした♫

最後まで読んでいただきありがとうございました♪♪

ではまた。

#スナック #ママ #愛されている #譲れない

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