見出し画像

何が差別かは差別される側にしかわからない

2024年5月25日付『毎日新聞』「特集ワイド 今なお『虎に翼』求め続け」
 実際、毎日、面白く見ている。しかし記事によると、元最高裁判事の桜井龍子さん(77)はなんと、「毎日2回も3回も見て、そのたびに涙をポロポロと流しています」と話したという。つまりこの番組が始まってからというもの、ほぼ毎日30分以上、泣き続けているということですね。
 戦前に比べれば男尊女卑の圧力は弱まった。とはいえ、今も女性が女性であるというだけの理由で不平等な仕打ちは続いている。新聞、テレビ、ネット上で毎日のようにそうしたニュースに接する。だからこそ、これほどの共感を呼ぶ。
 依然として残る差別・偏見を、したり顔をして、わかったような顔をして、けしからんと殊更に眉を顰めることはしない。軽々に反応してよい話ではないのだ。すべての人の平等、機会均等を支持していると自分では思っていても、自分が男という優位な立場に立つがゆえに、自覚しないうちに偏見に囚われていると受け取られる言動をしていないとも限らない。そんなつもりではなかった発言というのは、ない。「意識下でそう思っているからそういう発言が出てくるのだ」という指摘を否定することはできない。何が差別かは、差別される側にしかわからないのだから。
 優位に立っているつもりはなくても、お前は男という優位に立っているではないかと弱い立場から指摘されれば、その指摘とその背後にある思いに誠実に相対する。そういう交流を続けること以外に、ジェンダー間のギャップを少しでも小さくしていく方法はない。
 何十年も差別や偏見に満ちた職場で仕事を続けてきたプロフェッショナルたちがこれほどに熱を入れる物語には、やはり何かがあるのだ。「毎日、面白く見ている」と書いたのは正確ではない。私は毎日、番組を見ながら勉強をしている。

いいね!
コメントする
シェア


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?