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[実話怪談]餓鬼

これは私の叔母のRが子供だった頃の話です。
Mさんは語り出した。

Mさんの叔母、Rさんの実家は、徳島のかなり山奥の集落だった。
家の裏道は石段に続いており、そこを登ると古びた神社がある。
Rさんと妹は、神社の境内でよく遊んでいたそうだ。

ある日、母が家に帰ってくるとRさんが家中の食べ物を食い漁っていた。
泣いている妹をなだめ、話を聞いてみると「神社から帰ってきてから様子がおかしくなった」そうだ。
常に食べ物を漁り、子供ではあり得ない量の食事をし、目は血走っていた。

しかし、どんなに食べてもお腹は膨れない様子だった。
事実、食べる量とは裏腹にRさんは徐々に痩せていった。
家族は心配し、色々な病院を回ったが原因は分からないままだった。

2週間経過したが、症状は一向に改善しない。
Rさんはあばらが浮き出るくらいに痩せ、腹は飢えた子供のように突き出ていた。

そんなある日、家にひとりのお坊さんが訪ねてきた。
「上の神社に向かう途中、この家から悪いものを感じた。何かおかしなことは起きてはいないか」と。

突然の訪問に母は大変驚いたが、藁をもすがる思いでRさんを見せると
「この子には餓鬼が取り付いている、、、」といい、お祓いを行った。

餓鬼というのは、川と筋と骨ばかりで、腹は異常に膨れた姿をしている鬼のことで、常に飢えと乾きに苦しんでいる。
これに取り憑かれると、食べても食べても空腹で、最後には飢えて死んでしまう。
お坊さんがお祓いをすると、Rさんの異常な食欲はなくなり、回復していったそうだ。

1930年代頃、今から80年近く前の話である。