見出し画像

全文字母音"あ"のボカロ曲を作ってみた【「嗚呼、鮮やかな花が」】

初めまして、やみくもと申します。
今回は先月の無色透名祭2に出した「嗚呼、鮮やかな花が」という曲をMix・調声改め、パート追加を行った上で自チャンネルにて公開したので、それについての記事を書いてみます。

(こちらが曲です)


母音"あ"縛りについて

この「嗚呼、鮮やかな花が(以下、あざはな)」は(母音のない"ん"を除く)全文字を母音"あ"にしています。即ち、全編にわたって母音"あ"縛りでの作詞を行いました。
日本語にはあ・い・う・え・おという五種類の母音があります。それを全部揃えてみました。例えば、「あざばな」という言葉はそれぞれ「a・za・ba・na」と分解することができ、このとき全ての文字にa(あ)がくっついていることがわかると思います。
追加パート分を含めて歌詞は465文字あって、それらの"っ"、"ん"以外は全てa(あ)がくっついている、というのが歌詞のポイントです。

作詞に至ったきっかけ

お察しになった方もいらっしゃると思いますが、この母音を揃えるというテクニックはいわゆる押韻(ライミング)と呼ばれるものです。
元々日本語ラップが好きで日本語で韻を踏むことに興味があり、自身の作詞にもそれとなく忍ばせていて、そういった興味が作詞に至る潜在的な経緯かと思います。
(書き終えた後に気がついたことですが、OZROSAURUS「VILI VILI」も"ああああ"で踏みまくるシーンがあります。最高です)

直接的なきっかけは本当に脈絡のないものなのですが、大学で講義を受けている際にふと「鮮やかな花が」がという一文を思いつき、「これって全部母音"あ"じゃん」となったことです。その一文をバネにして、「母音"あ"縛りの曲を作ろう!」と帰りの電車内で一番の歌詞を書き始めました。その時の作詞はかなりエネルギッシュで、閃きの連続みたいな感覚でした。今まで味わったことのない感覚で楽しかったです。
一番はすんなり書き上がり、「二番まで書こうかな、どうしようかな」と思っていたところ、去年参加できず悔しい思いをした"無色透名祭"というイベントの2が締め切り間近であることに気が付き、「これは是が非でも出そう」と書き上げました。こういう締め切りを与えてくれるイベントごとはクリエイターにとって、とても優しいです。なぜなら、アイデアを抱え落ちするのが一番嫌だからです。締め切りはクリエイターの味方!

作詞して気付いたこと

実際に作詞に着手して思ったのは、「意外と簡単」ということでした。もちろん、可能なら使いたい言葉が使えないというもどかしさはありますが、意外と母音"あ"のみでも文章は成立します。それは多分、母音"あ"自体が多いからだと思います。理由は"い"とかで作ろうと思うと途端にフリーズしてしまうからです。
(記事執筆にあたり検索したところ、面白い資料として「日常会話における単音節(直音)の出現頻度(%)」というのが見つかりました。aの出現率は27.8%で最多だそうです。帝京大学医学部耳鼻咽喉化学講座「日本語会話における単語節の出現頻度」:https://www.jstage.jst.go.jp/article/audiology1968/41/1/41_1_73/_pdf)

もう一つ大きな気付きは、「わたしは(wa・ta・shi・wa)」という母音"あ"ではない言葉をブロークンに「あたしゃ(a・ta・sha)」、と崩すと母音"あ"になるということです。
これは「〜には(ni・wa)」にも通じることで、「〜にゃ(nya)」と言い換えることで母音"あ"のみが残るのです。
この気付きは革命的でした。これまで悩んでいた「主語をどうするか」という問題が(必ずしも人である必要はありませんが)一緒に解消されたのです。あえて語ってもピンと来る人はいないだろうと思いますが、この発見は多分、母音"あ"縛り作詞では確実に役立つと思います。
「あんまり多用するのは芸がない」と思いつつ、この気づきによってかなり作詞がやり易くなりました。この記事を読んだ後に歌詞を見ていただけたら、「こいつブロークンにしてんな」というポイントがたくさんあるかと思います。
これが最大の発見にしてもっとも面白い点でした。母音"あ"縛りをやる人がいたら、ぜひ使ってみてください。

あとがき

面白い体験談、ということでnoteにまとめてみました。今見返すと二番の歌詞が文章っぽくなかったりと突っ込みたいところはあるのですが、完成してこういう記事を出せたのが良かったです。
納得していなかったボーカル部分も調声を改めてMixもやり直して、だいぶ聴きやすくなったのではないかと思います。
なにより、母音"あ"縛りという情報を出す前、無色透名祭2開催中のコメントで「母音で縛ってるのか」と指摘してもらえたのが嬉しかった!
これでかなり満足した感じがあります。そういった匿名のコメントは、必ず私達を励ましてくれます。この記事を出した目的の一つがここで「嬉しかった」と言うことだったので、二度目ですが、こうして記事が完成して良かったです。良かったら、曲も聴いてみてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?