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受験生に春が来た話。

「行きたい高校なんて無い!なんて書けばいいかわからない!代わりに書いてよ!」

これは、一番最初の進路調査票を提出しなければいけない中二の新学期、娘が私に言った言葉である。

今でもすごく鮮明に覚えている。
その言葉を言った時の娘は少し涙ぐんでいた。
なんとも言えない表情から、考えるのが面倒くさいとか、口から適当にでてきた言葉では無いと私にはすぐに伝わった。

1 コロナ禍の中学校三年間

思えば娘は中学校三年間ずっとマスク生活だった。通常の行事もコロナ対策用に切り替えられ、ワクワクしながら購入した制服も腕を通す機会は無くなり、毎日洗うことができるジャージ登校になった。

今の土地はたくさんの高校が存在する。
その中から、さぁ行きたい高校を選ぼう!と言われてもピンとこないのは当然で、親の私もそれは同じだった。

将来の夢に紐付けて考えたり、少女漫画のように制服が素敵だから♪とか、単純に家が近いからとか、その時の娘には高校に対して胸をときめかせるような気持ちは一切無かったと思う。

正直今住んでいる土地が私にとっては何も分からない土地で、漠然と公立高校が進学校として成立していることしかわからなかった。
もちろん私立にも魅力的な高校はたくさんあるのだろう。たくさんの高校から選べる選択肢があることじたい幸せな事だと思った。

【私の人生ではなく娘の人生だ。悔いなく自分自身で考えて考えて納得できる高校を見つけてほしい】

結果、一番最初の進路調査票には家から一番近い公立高校と私立高校をそれぞれ書いて提出した。たいして興味もない、ただ家から近いだけの理由で。

2 塾に通うこと

そして中二の夏休み前に娘から塾へ行きたいと言われた。この時期には、既に周りの子たちは塾へ通っている子が多かったと思う。ちなみに普通の中学校で決して進学校という括りではない。

本人が塾へ行きたいというなら行かせようじゃないか。
塾探しをするにあたり、これだけは譲れないという項目を私なりにピックアップした。

・五教科すべて教えてくれる
・模試の成績がすべてデータ化される
・順位やランクが明確
・仲の良い友達が居ない

正直どこの塾も費用はかかって当たり前の世界だと思っていたので、ここは安いからダメ・高いから良いとかの問題では無い。
どこの塾もまずは体験から~が多かったので、夏期講習に申し込んで、娘に合うようだったら(頑張れそうだったら)そのまま本申し込みをしよう。

幸いにも夏期講習でお世話になった塾が合っていたみたいで、そのまま中三の今までずっと通わせている。

塾に通うようになってもすぐには志望校が定まらない。
周りの子は付属だったり違う中学の子ばかりだから、何か良い影響があればいいな。私はそんなことを思いながら娘の中三を迎えた気がする。

3 塾に通うこと~志望校決定編~

中三になり、いよいよ志望校を絞らなければいけない。いや、決めなければいけない時期。
急にその時がやってきた。

「絶対ここに行きたい。ここで勉強したい。」

?!?!

私はその言葉を聞いても、なんで?とか、なんか影響受けた?とかあえて聞かないようにした。いつでも娘の気持ちを尊重したいし、やっと決まった志望校だ。理由はあるに決まっている。

私は勉強において余計なことは言わないようにしている。たぶん子どもたちに「勉強しなさい!」って怒ったことは一度も無い。何故なら、私が子どもの頃母親からそう言われて怒られる機会が多かったから。怒られれば怒られるほど、自分はできない人間なんだと落ち込んだ。まぁ、私の話は余談なので割愛する。

やっと志望校が決まった!

(受験する上での最初の難関をクリアしてほっとした)

目標が明確になった娘は無敵だったと思う。
合格率も当初は60~70%をうろうろしていたのが、常に90%以上をたたき出した。これは塾の先生方にも感謝しかない。いつも褒めてくれて、どうすれば良いかを的確に提案してくれたから。

並行して、夏の引退まで部活もすごく頑張っていた。
でも、ほとんどの子はみんな同じ。学校行って部活をして、晩御飯をババっと食べて、その後すぐに塾へ行って帰りは22時過ぎ。そこからお風呂に入って宿題をして、 また次の日を迎える。

そして、夏休みのうちに学習机を粗大ゴミに出した。前々から机が邪魔くさい。必要ない。と娘が言っていた。
娘は居間で勉強することがほとんどだった。学習机はよくあるシステムデスクでバリバリの存在感。でも安くも無かったので、机使わない。と言われても、スルーしてきた。
が、いよいよベストな環境を提供してあげよう!と、重たくて大きい机を粗大ゴミにだす決心をする。だいぶ部屋がスッキリした。ありがとうシステムデスク。小学校低学年だった頃の娘にワクワクをくれてありがとう。

なんと言っても塾の送迎も大変だった。時間に追われるタレントのマネージャーの如く。塾がある日に早く仕事から帰れない時は朝のうちに晩御飯も作って用意しておいた。私も娘もお互い愚痴を言うことはあったけど、親も子もお互いに頑張れたのは良い経験になった。
子どもが頑張っているなら、親の私はもっと頑張ろう。
単純にそう思えたし、行きたい高校に向かってただただ勉強する娘が羨ましく思えたし、子どもからたくさん力をもらった。

4 塾に通うこと~塾代って高いよね編~

中三になってからの塾代は当初の想像を超えてきた。というか、入塾の時に説明があったと思うけど、いざ毎月何万もの塾代を払うことになると、高っ!!という普通のリアクションをしてしまう。
中三になると、通常の塾代に加えてほぼ毎月特別講座なるものがあり、その特別講座が高い。平日に加えて、夏休みや冬休みは毎日塾があり模擬テストも行われる。
しかも塾生は自動的に特別講座も受けることになるため、今回は講座受けませんなんてことはできない。恐るべし進学塾。

おそらく毎月東京の普通のワンルームの家賃くらい払っていた。(バストイレ別、洗濯機は室内に置けるという普通のワンルームを想像してほしい。)
年間三桁までいかないけど、二桁でもこんなにかかっていたのか!!と、最近ふと計算してみて私自身びっくりした。これでいい。親として教育資金ととことん向き合おうじゃないか!

5 塾に通うこと~思うこと色々編~

この私が何もわからなかった塾に対して、これから塾探しをするお母さんたちにアドバイスすらできるようになった。調べて調べて調べ尽くした私の経験と成果である。
結果、この土地でそこそこランクの高い公立高校を目指すなら塾は必須だということだ。塾に通わずにいると、自分がどのへんにランクしているのかがハッキリとわからない。何の教科が苦手で何が得意か。すべて事細かくデータ化したものを目で見て理解する方法は、学校だけの勉強ではわからない。

中三になり部活も引退し、いよいよ受験まっしぐら。何か頑張ってきた娘にちょっとした息抜きをさせたいと思った。少し勉強のことを忘れて、メリハリをつけさせたい。もちろん前向きな計画だ。次の模試でも合格範囲内だったら、連れて行こうと思っていたとこがあったのだ。
それはここではあえて明記しないが、すごく楽しんでくれたし、お互い日々頑張ってきた!また頑張ろうね!と思える気持ちが強くなった。

息抜きをさせることを聞いて、受験生なのにわりと自由だね。○○○ちゃんはすごいね。と言ってくるお母さんもいた。外野の意見は知らん。娘の内申点やランクを見てから言ってくれ。
人の子ども褒める余裕あるなら、自分の子どもを褒めてやってください。(ちょっといじわるな書き方だけど、人のことを根掘り葉掘り探ってくるくせに、自分のことは言わない人間が嫌いだ。)

6 初の自己推薦制度

娘が行きたい高校には自己推薦制度がある。昨年までは普通の推薦制度だったのが、今年度から自己推薦に変わったとのこと。

自分で自分を推薦する。

簡単に言うけど、自己暫定感強く生きろってこと?

自己推薦に挑戦するのは個人の判断に委ねられる。どのランクの子も挑戦できる。ということは、入試でギリギリのボーダーラインの子も、もしかしたら自己推薦で合格できるかもしれない。というチャンスの機会なのだ。
ここで重要なのはお試し受験ではないということ。お気楽に考えて挑むと当然容赦なく振り落とされる。世の中そんな甘くない。と、私は娘に言ったと思う。
場合によっては自己推薦をスルーして入試一本に挑む子もいる。自己推薦のための面接練習に時間を割くなら、入試のために勉強時間を費やしたい。そういう子も中にはいると塾の方が言っていた。

娘は、入試こそが本命であることを念頭に置いて、自己推薦にも挑戦することにした。何事も挑戦。やってみなければわからない。ただやるなら中途半端な気持ちで挑むな。ということ。

冬休みは毎日塾に追われたので、面接練習は三学期が始まってから。遅い。ギリギリ。
中学校は受験に対して結構ドライな印象で、自分から先生に面接練習をお願いする方式だ。

「お願いしても先生たちの会議が多いから、なかなか練習ができない。」

娘が私に不満をこぼす。塾の担当の方にも言っていたみたいで、塾から電話がきた。

「面接練習はできないけど、過去の推薦時の面接のノウハウや先輩たちの体験レポートから、対策を一緒に考えることはできるので、なんでも言ってください。」

娘が一人で思い詰めるわけではなく、私や塾の方に不満を言える環境が良いと思った。
中学校の先生には色々言いたいことがあるが、ここでは伏せる。でも一つだけ言わせてほしい。
面接練習で「そんなんじゃ落ちるよ」と言い放った学校の先生。そのやり方は正解なんですか。

7 あの日あの時の皆に感謝を伝えたい

家でも面接練習をした。
キッチンに立つ私が面接官役。キッチンの出入口に椅子を持ってきて、私がどうぞお入りください。と言うと、娘が居間のドアをガチャッと開けて、練習スタート。

第一印象が大事だ。背筋はしっかり伸ばして肩を丸めない。話す時は相手の目をしっかり見る。

ところどころ敬語ができていない箇所が気になる。大丈夫。勉強してきた私に任せてほしい。敬語難しいよね。わかる。そして、こういう言葉のミスは指摘されないとわからない。そんな私も仕事しながらハッとする時がある。

将来の夢はなんですか?
何故○○○になりたいと思ったのですか?何かきっかけはありますか?

私は当たり障りのない質問をする。面接官になりきる私。

ここから私はSEVENTEENのコンサートで通訳をされた方とその場に居た全CARATさんに感謝を伝えたいので、この場をお借りする。

娘の回答はこれだ。

はい。私は母に連れられて海外のアーティストのコンサートへ行った時に、こんな体験をしました。
コンサートには、アーティストが話す言葉を素早くわかりやすく日本語に訳してくれる通訳の方が居ました。アーティストの気持ちや感情を何万人もの人達にリアルタイムに届けてくれる通訳の方がとても素敵で、なによりすごく印象強く感動しました。
その方のおかげで、会場全体が一気に笑いに包まれたり何万人もの人たちと感動を共有できたり、ファンとアーティストの架け橋になる様子を体感して、私も外国語を学び、言語に携わる仕事をしたいと思いました。....etc

まさか、自分の娘がこんな風に思っていたなんて思いもしなかった。こんなこと一言も私は聞いていなかったので、本当にびっくりしたのだ。
しかし、学びたいのは韓国語ではなく英語と聞いて、娘らしいや。と思った。とことん英語を勉強しておくれ。

子どもは、いつどこで何をきっかけに目標や夢ができるかわからない。親がこうなりなさい!といくら言っても、やりたくないことはやりたくないし、ただ目標もなく勉強することは誰だって面白くない。

こんな形で娘は影響を受けていたのかと、感謝を伝えたい。あの日あの時、その場に居たCARATさんみんなにありがとうございます。だって何万人ものCARATさんがいる空間で、娘はこうなりたい!と思える人に出会えたのだから。これが10人とか100人の空間だったら、心を動かされることは無かったかもしれない。
人生何をきっかけに想いが動くかわからない。こういうこともあるんだという参考までに。

Say the name SEVENTEEN!Thank you so much!

8 どんな過程も自分の力になる。必ず。

そして、本日。無事に自己推薦での合格をいただいた。正直親子共々受かる要素がわからずにいる。が、高い倍率の中、娘を三年間この高校で勉強させてあげたい!と導いてくれた方々がいる高校に通わせることができると思うと本当に安心した。
来年自己推薦を受ける後輩たちにも大事な経験を語れる先輩になるはずだ。もちろん受験勉強の大変さも。

受験勉強の過程が、私にとっても娘にとっても糧になったと思う。子どもが頑張っているなら親も頑張ろう。辛い時はそっと見守って支えてあげよう。
簡単に言う事ができても、中学生の女の子の扱いには慎重になったし親として悩むこともたくさんあった。

一足先に春が来た。
これからの子どもの人生が、もっと色濃く鮮やかに咲き乱れるように一生懸命私は働くしかない。笑ってしまうくらい普通のことだけど、働くって大変なことだから。教育にお金がかかるのは当たり前のことだ。

以上、十五歳が頑張ってきた結果が実を結んで、我が家に桜が咲いた。あなたの将来の夢が叶うようにまだまだ一緒に走り続ける覚悟はできている母より。

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