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【秋葉原アンダーグラウンド】 第7章 17話

「おじさん、もの凄い殺気だけど、次の僕の相手をしてくれるのかな。」

「ああ。選手交代だ。」

「嬉しいね。まだまだやり足りないって思っていたところさ。」


ユキは不気味な笑みを浮かべ、チャクラムを取り出そうと手を伸ばす。しかし、チャクラムを取り出そうとした瞬間、腕を全く動かせずにいた。まるで何者かがそれを止めているかのように。


「動かせないだろ?」

「おじさん、一体何を・・・」

「君の腕に20倍の重力をかけた。およそ1トンだ。さすがに動かせまい。」

「本当だ、びくともしないや。おじさんも重力つか・・・」


重力使い?と言い終わる直前、イジュンは自らの体を20倍の重力で押し出し、ユキに体当たりした。無防備な状態で1トントラックの直撃を受けたようなもの。ユキは衝撃で意識が飛びそうだった。しかしイジュンの攻撃は止まらない。そのまま高く舞い上がり、1トンもの重量でユキを押し潰した。地面にめり込む形となったユキは完全に気を失っていた。イジュンはメガネを上げる仕草を見せリツに呟く。


「終わったぞ。」

「来るならもっと早くに来いよな。」

「すまなかった。仕事が終わらなくてな。」


イジュンはこんな日でも公社の事務仕事をしていたのだろう。イジュンらしいと言えばそれまでだなとリツは思った。そして、イジュンから差し出された手をつかみリツは立ち上がる。そのまま2人はその場を後にし、国会議事堂へと向かって行った。


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「チッ、またかよ。」


シュンは自身の能力で細胞を活性化し高速でリオンにぶつかるも、リオンの出す砂鉄により攻撃を防がれていた。リオンは磁力の能力者だ。砂鉄に磁力を纏わせ自由自在に操っている。シュンは四方八方から攻撃を繰り出すも、それに合わせるかのように砂鉄は動きリオンを守る。シュンは以前戦ったシドのことを思い出す。やつはフルオートで自身の体をダイヤモンドに変え身を守っていた。それと似ている。


「おいおいにいちゃん、オレはさっきから一歩も動いてないぜ。」

「クソっ・・・」

「目の前にハエが飛んでるみたいで目障りだな。少し動くぜ。」


次にシュンが足で攻撃したとき、もちろん砂鉄により阻まれたが、砂鉄はそのままシュンの足を飲み込み動けなくした。リオンがグッと手を握ると、その砂鉄は圧縮し、そのままシュンの足を握り潰す。


「ぐぉぁ・・・」


シュンはリオンから一度距離をとったが、立っていることさえままならない。おそらく骨が折れている。シュンはリオンを睨みつけるがリオンは涼しげな顔でこちらを見ていた。リオンは徐に呟く。


「お前、覚醒者って知ってるか?」

「能力の限界を超えたやつだろ?1級のやつら全員がそうだって聞いてるぜ。」

「そうだ。オレは1級になりたかった。強いやつだって認められたかった。でもなれなかった。けどな、ロンはそんなオレを見捨てず、能力を覚醒させてくれたんだよ。」

「だからテメェはそっち派についたって訳か。元は巫女から授かったってのに、恩を仇で返すってのはまさにこのことだな。」

「なんとでも言え。とにかくオレは強くなった。あの時とは比べ物にならないくらいにな。」

「んで、その覚醒した力ってのがその砂みてぇなやつか?大したことねぇな。」


シュンはただ強がっているだけではなく、勝てる算段を考えていた。戦ってみてわかった。あの砂鉄は意志を持っている。ならば意識の外側から攻撃すればいい。多少の負荷はかかるが、高速を音速に、音速を光速に変えていくだけで砂鉄の防御は追いつかなくなる。シュンはギアを上げる準備に入った。


「誰もこれが覚醒した力とは言ってないよ。オレの能力は磁力だ。なぁ、地球はでっかい磁気を帯びているって知ってるか?」


そう言うとリオンは大地に両手をつき地震を起こさせる。まさに地球そのものを操っている感覚だ。その激しい揺れにシュンは身動きがとれない。いや、単純に動けないのではなく、動かせないのだ。


「てめぇ、一体何を。」

「あぁ、一つ言い忘れてた。人間も多少なり磁気を帯びているからね。地球というでっかい磁石に吸い寄せられているんじゃないかな。」


リオンの言う通りだった。重力をかけられている感じとは違う、引っ張られているような感じ。シュンは跳ぼうにもそれが全くできない。するとリオンの操る砂鉄がシュンの両腕と折れていないほうの足を捉え、無惨にも握り潰した。


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