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【秋葉原アンダーグラウンド】第2章 6話

「なるほど。」

シン、ワン、リンの3人は感嘆の声を上げる。

「これで、完成してねぇの?」

「ワン君、これで完成してたらあの人たち、ああはなってないよ?」

天才と言われた3人が見ても、その理論は完璧にみえた。間違いなく、ロンも天才だ。

「何か見落としている。」

シンは心の中で呟く。

「少し3人にしてくれないか?大丈夫。そこにカメラはあるし、これほどの成果を横取りするつもりはないからな。」

シンは天井についている監視カメラをみてロンに尋ねる。

「あぁ、それは構わない。じっくり考えてみてくれたまえ。」

ロンはそう言うと、3人を残し研究室をあとにした。

「さてと、どうする?」

「どうするって、シンさん何も考えてねぇの?」

「ありゃ?こっちも見切り発車かにゃ?」

シンの問いに2人は応えるが、シンの中では足りない何かを見抜いていたようだ。

「ワン、リン。オレらが呼ばれた理由を考えてみろ。細胞の活性化だろ?これだと生きた細胞まで活性化してしまう。悪い細胞が生き返る代わりに、今度は生きた細胞が死滅してしまう。」

「んん?あぁ、確かにこれじゃアドレナリンの量が多すぎるな。」

「てことは、なんも変わってないってことかにゃ~?」

「いや、何も変わっていない訳ではない。彼らばステージ4の患者だ。悪い細胞のほうが多いに決まっている。つまり、ステージ4の患者がステージ3ほどになったという訳だ。」

「ステージ3なら地上でも治療できるだろ?てか1コしか下がってねぇのは悲しいな。」

「ワン君ワン君、地上に行きたくても行けないのっ!そういう約束でしょ?」

「そうだな。少なくとも研究が完成するまでは、奴らは帰さないだろうな。」

このまま実験動物のような末路を想像し、ワンとリンは固まってしまった。

「なに固まってるんだ?彼らを救うためにオレらが来たんじゃなかったのか?」

シンがそう言うと、2人の目の色が変わった。

「そうだったな!おかげで目が覚めたぜ!」

「アタシたちは正義の味方にゃー!」

果たしてそれは正義なのか?
患者を治す医者ではなく、明らかに研究者の血が騒いでいた。

「それにしてもこんな理論があるんだな。これだと、オレたちの理論も覆ってしまう。」

「そうだな。対ヒトに飲ませる前に出会えてよかったのかもしれないな。」

「うん。アタシらの薬だけじゃ同じ結果になっていたかもしれないね。」

3人は改めてその理論のすごさに感心した。

「とりあえずアドレナリンの量を下げるか。その上でオレたちの理論をこの箇所に当てはめる。」

「シンくんシンくん!この箇所だとたぶんダメだよ!こっちこっち!!」

「リン、お前ってやつは急に閃くのな。確かにこっちのほうが適合しやすそうだ。」

気付くと3人は、自分たちだけで研究していたときと同じような会話をしていた。

#創作大賞2023  

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