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【秋葉原アンダーグラウンド】 第8章 1話

カイの大剣が触れた直後、スサノオの表皮は自身を守るかのごとく姿を変える。シュンの持つ細胞活性とは異なる、いわば細胞変形だった。


「またそれか。いい加減芸がないな。」

「それは勝ってからいいなよ。」


スサノオは細胞を棘のように変形させカイを突き放す。伸ばした棘の数本を軟質化させカイの両手両足を絡め取り、ハンマーのように変形させた左手で思い切りカイの頭を叩いた。カイは身動きが取れないまま血を流している。


「もういっちょう。」


スサノオが左手を振り下ろした直後、カイは両手に絡み付いていた棘を引きちぎり、そのまま拳を突き出し応戦する。ハンマーは拳とぶつかるとヒビが入り、粉々に砕け散ってしまった。その向こうではスサノオが不敵な笑みを浮かべこちらを見つめていた。


「まさか剣じゃなく素手で壊すとはね。さすがだよ。」

「今すぐ切り刻んでやるから待っていろ。」


カイの目つきが変わり再び大剣を振り下ろす。スサノオに縦一線の筋が入る。しかしそれはスサノオの残した残像であり、実際には後方へ飛ぶことでかわしていた。


「あぶないあぶない。もうちょっとで真っ二つだったよ。・・・ん?」

「いくら残像を残したからといって完全にはかわしきれなかったようだな。」


スサノオの額からは血が滴り落ちている。スサノオはそれをペロッと舐めると、また不敵な笑みを浮かべる。カイもつられて笑ってみせる。


「なんだ?改造人間でも赤い血が流れるんだな。」

「まったく、オレのこと何だと思ってるのさ。でもまぁちょっとやる気出てきたかな。」


そう言うとスサノオは自身の体を変形させてみせる。顔の形こそ変わってはいないが、肩は大きく盛り上がり、肋骨は大きくくびれ、その姿はまるで悪魔のようだった。


「改造人間って言っても所詮は人間だ。オレは骨格を操作することで人間が辿り着けない境地に至った。」

「今更どう姿を変えようが驚かないがな。」


カイはそのままスサノオに突っ込み、肩から胴体にかけて大剣を振るった。しかし、スサノオは今度は避けることなく、ただ立ち尽くしたまま剣を止めてみせた。切れないどころか傷すらつかない。頑丈さが上がっている。スサノオはそのままの姿勢でカイに拳を入れる。拳のスピードも上がっており、カイは防御する隙も与えられずまともに食らい、反対側の壁まで吹き飛ばされてしまった。


「さっきまでの威勢はどうしたの?」

「ケホッ・・・なんつースピードだよ。あばら、数本はいってるな・・・」


カイは胸の辺りを軽くさすると、もう一度スサノオに向かい突っ込む。そして縮地法で一気に間合いを詰める。今度は居合いの要領でスサノオの胴に斬りかかる。しかし、またしても剣は胴を切ることができない。スサノオはカイの頭に殴りかかった。骨の砕けた音がし、カイは地面に叩きつけられる。さらにスサノオの容赦ない攻撃がカイを襲う。そのまま足でカイの頭を踏み潰したのだった。ぐしゃっという音を立て、カイの頭部からは血が溢れ出た。カイはピクリとも動かない。


「あれ、これで終わり?なんだかあっけないなぁ。次は誰と遊ぼうかな?」


倒れているカイをそのままに、スサノオはカイの入ってきた入口に向かい歩き出す。


「あぁ・・・頭に血のぼってたからな・・・少し流したらスッキリしたぜ・・・」

「なんだ、まだ生きてたのか?」


カイはゆっくりと立ち上がるが、足元はふらついていた。スサノオのは一瞬でカイの目の前まで移動し、再び拳を振るう。しかし今度はカイの手によって掴まれてしまった。


「なんだ、案外トロいんだな。」


カイはそのままスサノオの拳を握り潰した。さすがのスサノオもこれには驚きの表情を隠せず、もう片方の拳をカイに浴びせようとしたが、当たる直前でカイの拳によって破壊されてしまった。そして握り潰した拳を離さないまま、スサノオの顔面に一撃を食らわせた。スサノオはそのまま地面に転がってしまう。


「ははっ、カイはすごいね。刀なしでここまで強いんだ。」

「オレこそ生身の人間だからな。剣で能力を切る前に倒されちゃ本末転倒だからな。」

「まさか第二形態が通用しないなんてね。ちゃんと本気を出さなきゃあとで後悔しそうだ。」


そう言うとスサノオは立ち上がり、さらに自身の体を変形させ始めた。


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