【秋葉原アンダーグラウンド】 第8章 2話
スサノオの姿はおぞましい形に変わっていく。先ほどは悪魔のような姿形をしていたが、今度は顔から足の先までエイリアンのような、まさに化け物のような風貌となっていた。
「すごい出力だな。体中から溢れ出てるのがわかるぜ。」
「これがオレの最終形態だ。オレは体の形を変化させるときに魂の在り方を創造している。手をハンマーに変えたときだって先の骨格変化だってそう。そしてこの姿が一番魂が安定していることに気付いた。」
「要は貴様本来の姿だってことだろ。そのほうがこちらとしても都合がいい。ただいたぶるのは性に合わないからな。」
「そうだね。ただしもう君の攻撃は当たらないよ。」
するとスサノオは一瞬でカイの背後に立った。カイは振り向くとすでにスサノオの姿はなく、またしても背後に立っている。パターンが読めればこちらのものだとでもいうように、カイは横一線の斬撃を繰り出し、そのまま回転し背後に立つであろうスサノオにもう一撃を食らわそうとする。しかしカイの攻撃は空振りに終わった。スサノオは今度は剣の間合いの外に立っていた。
「大した動体視力だ。オレの攻撃を見た上で動いているんだな。」
「見切っていると言ってもらいたいね。でもまぁほぼ正解だし、お礼に思いっきり切ってみてもいいよ。動かないからさ。」
そう言うとスサノオは両手を広げその場に立ち尽くす。どこからでも打ってこいと言わんばかりに誘っている。カイは冷静に近づき、両手で剣を高く上げ今日一番の力を込めて振り下ろした。ギンと鈍い音が鳴り、カイの刀はスサノオの体に止められてしまった。刃こぼれすら起こしている。スサノオはそれを見るや否やカイをはたく。カイの体は回転しながら壁にめり込む形で激突した。
「ちょっとはたいただけなのに大げさだなぁ。こっちがいじめてるみたいじゃないか。」
「ぐっ・・・マジで化け物かよ。」
カイが壁から這い出てくるや否や、スサノオの拳がカイの腹部に入る。カイは思い切り吐血し、そのまま壁の外まで吹き飛ばされてしまった。カイは大の字になり空を見上げている。強い。これまで出会った中でもトップクラスなほどに。しかし・・・
「シンには及ばんな。」
そう呟くとゆっくりと立ち上がり、剣を構えてみせた。
「誰が誰に及ばないって?もう一回言ってみてよ。」
「次のオレの攻撃をかわせたら教えてやるよ。」
「だからさぁ、君の攻撃はもう当たんないんだって。」
「滅魔流、シン・・・」
カイはそう唱えた後、目を瞑り剣をおさめ、そのまま動かない。それを見たスサノオはカイの顔面目掛け拳を振るった。カイはそれに合わせ剣を抜き一度防御してみせたが、スサノオの反対の腕により首を吹っ飛ばされてしまった。
「あ~終わった終わった。結局何もできなかったね。」
スサノオは振り返り国会議事堂へと歩き出す。しかしその目の前には、先ほど首を飛ばしたはずのカイが立っていた。
「へぇ、どんなトリックを使ったのかな?でも結果は同じだよ。」
そう言うとスサノオはまたしてもカイの首を飛ばしてみせた。そしてそのまま歩き出す。しかし背後に気配を感じ、振り返るとそこには再びカイが立っていた。
「どういうこと?」
「その反応だと、貴様は既にオレの術中化にいることになるな。」
スサノオはイライラし、カイの首を飛ばした後、今度は胴体を真っ二つにしてみせる。しかしまたしてもカイは背後に立っていた。
「はぁ、はぁ・・・どういうことだよ。」
「シンは蜃気楼の頭文字だ。先の貴様の初撃の際、防御に合わせ低周波音を出した。衝撃音が大き過ぎて聞こえないほどのな。それにより貴様は低周波騒音の精神的被害、すなわち幻覚を見させられていることになる。加えて・・・」
スサノオは急にその場に嘔吐した。血も混ざっている。もしかして切られた?一体いつ?どこを?
「シンのもう一つの意味、それは真空切りだ。いくら化け物の姿になろうと中身は人間だ。だから内臓を狙って切った。これも先の貴様の初撃の際放っておいた。」
スサノオの吐血は止まらない。頭に浮かぶ死の強烈なイメージ。スサノオはふらふらとカイに近づく。
「本当は対シン用にとっておきたかったんだがな。あいつには特に意識的な攻撃は通用しない。それと貴様にもう一つ教えておいてやる。」
スサノオは腕を振り上げ攻撃しようとしたが、虚しくも空を切る形となりその場に倒れた。
「オレは地下の現No.1だ。シンに及ばない以上オレを倒すことなど不可能だ。」
言い終わるとカイはその場から静かに去っていった。
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