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【秋葉原アンダーグラウンド】第2章 第1話
国会議事堂や各省庁は慌てていた。中でも防衛省は首相暗殺の件に対し、マスコミやメディアからの批判、また謝罪会見に追われていた。
「このような事態を招いてしまったのは我々の危機管理不足にあります。この度は誠に申し訳ございませんでした。」
防衛大臣のヒシダを筆頭に、関係幹部は頭を下げる。
「謝って済む問題ですか?」
「総理はなぜ、誰に殺されたのですか?」
「これって完全にテロですよね?他国が黙っていないんじゃないですか?」
朝から同じような意見や質問にヒシダはうんざりしていた。
「こっちが聞きたいぐらいだよ!」
自室に戻っても電話は鳴り止まない。いっそ通話中にしたくても、受話器が取れないほど着信が途切れないのだ。ヒシダは自席に座り、深いため息を吐いた。
「当然の報い・・・か。」
ヒシダは総理の遺体の側に血で書かれた文字を思い出していた。
『君たち地上の人間全てを許さない。これは復讐ではなく、当然の報いである。地下世界で待っている。』だったか。
「まさか・・・な。」
ヒシダは過去に政府が行おうとしていたある計画を思い出していた。だがそんなはずはない。20年も前の計画だ。それに、計画は中止されたと聞いている。
「何か見落としている・・・」
そんな風に思案していたとき、誰かが部屋をノックする音が聞こえた。
「大臣、アメリカの大統領自らのお電話です。」
ヒシダの秘書が、アメリカ大統領政府直通の電話を持ち入ってくる。ヒシダは電話を受け取る。
「どういった御用件でしょうか?」
「それ聞くかな〜?決まってるじゃん、アボちゃんの件だヨ♪」
アメリカ大統領コハマ。彼は今は亡き日本の首相アボやキシダと仲が良い。一緒にゴルフに行ってからというもの、2人と話すときはフランクなのだ。
「んで、誰なの?アボちゃん殺ったの?とりあえずそっちにいるウチの部下ちゃんたちには伝えたけど?」
「伝えたって、見つけ次第殺せとか言ったんじゃないですか?事を大きくしないでくださいよ。それに、今のところ容疑者は1人も浮かんでません。」
「あり?そうなの?ヒシダちゃんは優秀だから、もうてっきり目星は付いてると思ってたよ〜♪」
実際のところ目星は付いている。だが確証がない。それにもし、その仮説が正しかったとすれば、全世界を敵に回してしまう。核戦争は免れない。日米安保だって即刻解消だ。
「今は全力を上げ、ホシを探しているところです。それに総理の代役も立てなきゃならない。とにかく忙しいので、何かわかり次第こちらからご連絡しますよ。」
「オッケー♪アメリカはいつだって日本の味方だからね〜♪」
そう言って会話は終了した。
「クソっ!何が日本の味方だ!!もし私の仮説が正しければ、すぐに手のひらを返すことなんざ目に見えている!」
ヒシダはそう言って自席の机を叩き、持っていたハイライトの煙草に火をつける。
コンッ、コンッ。
ヒシダはタバコの火を消し応える。
「どうぞ。」
明らかに苛立っている。しかし次の瞬間、ヒシダの顔に安堵の色が戻る。
「おぉ、君かぁ。このタイミングで呼び戻してしまってすまないな。」
「いえ。それにこの度は誠にご愁傷様でした。私も事件を聞いた時、にわかには信じられませんでしたが、事実なんですね。」
彼の名はロン。外務大臣であり、国交の要だ。
それに、
「ロンくん、単刀直入に聞く。今回の件、20年前の計画との関連性はあるかね?」
「大臣、誠に申し訳ございません。私の不徳の致すところです。」
決まりだ。ヒシダの勘に狂いはなかった。20年前の計画、ロンはそれを誘導していた1人だ。
「私が責任を持って彼らを処分いたします。」
「あぁ、その責任だがね、君に総理の代役を果たして欲しいって、他の大臣も言っていてね。『地下』もそうだが、アメリカを抑えてほしいというのが本音でね。」
「承知いたしました。私でよろしければ、その役目務めさせていただきます。」
「君は優秀でほんと助かるよ。」
ロンは深く頭を下げ、ヒシダの元をあとにした。
「全く長かったよ。やっと日本を手中に収めた。」
ロンは笑いを堪えるのに必死だった。
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