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【秋葉原アンダーグラウンド】 第9章 3話

レンたちも地下公社まで来ていた。リツやシュンはすぐに手当てを受けることになった。レンはエンとともにワンから話を聞いていた。そこにはサラの姿もあった。


「それで、シンは一人でロンのところに向かったというわけか。」

「そうだ。だがこれは明らかにシンをはめるための罠だ。無事に帰ってくる保証はない。」

「でも、シンさんの立場を考えたらこうするしかなかったと思います。」

「私もそう思います。だから、今はシンさんを信じるしかない。」

「レンくんとサラさんの意見もわかります。だけどオレは行こうと思う。おそらくロンにはオレの持つ薬が必要だ。」

「細胞の超活性による副作用か。確かに我々能力者は一般人に比べ寿命が短い。個体差はあるがな。だがやつは今マリという兵器を所持している。自分が表に立つ必要もなくなった訳だ。」


兵器という言葉にレンは一瞬反感を覚えたが、何も言わずに話し始めた。


「オレはマリちゃんやシンさんのことも気になりますが、トガっさんのことも心配です。」

「そうだね。何が彼をそこまでさせたのか気にはなるけど、今後彼との衝突も避けては通れないということになる。」

「トガっさんのことはオレにやらせてください。こうなってしまいましたが、オレの師匠です。それに、オレはまだトガっさんのことを信じてます。」

「それは構わないが変な情けは不用だ。それが師匠に対する礼儀でもある。」


レンはわかりましたとだけ言いその場を離れることにした。中ではワンたちがまだ会話を続けている。レンはリツやシュンの待つ部屋へと向かった。


「おかえり。話は済んだか?」

「リツさん、傷の具合はどう?」

「お前がいち早く対処してくれたからな。別に大したことねぇよ。それよりもこれからどうするんだ?」

「オレは・・・行こうと思います。それがシンさんの望みじゃないことはわかっています。でも、行かなきゃいけないんです。」

「何もお前が全部背負う必要なんかないと思うけどな。でもまぁ行きてぇなら行ってこい。こっちはこっちでなんとかするからよ。」

「ありがとう、シュン。後悔だけはしたくないからさ。ワンさんの準備が整い次第一緒に向かおうと思う。」


レンは二人の元を後にし、かつて昇級試験が行われた広間へと足を運んだ。黄龍を抜き一振りすると爽やかな風が流れ込んだ。すると後ろのほうから声が聞こえてきた。


「ん~、いい風。」

「マユ?なんで君がここに?」


レンは慌てて黄龍をしまうも、突然の訪問者に動揺を隠しきれないでいた。


「レンくん、まだそんなこと言ってる。私もれっきとした関係者なんだよ?」

「いや、まぁ、それはそうなんだけどさ・・・」

「行っちゃうんだよね?」

「うん。」


マユは伸びをしながらレンの横を通り過ぎ、しばらく歩いたところで振り向いてみせた。


「ねぇ、アレまたお願いしてもいい?」

「えっ、アレってなんだっけ・・・」

「手紙。連続記録は止まっちゃったかもしれないけど、私の中ではまだ動き続けているんだよ。」

「あ、そうだった。ずっとバタバタしてて書けてなかったな。」

「ね?だからね、全部終わらせたらさ、また書いてくれるって約束してほしいな。」

「わかった。約束する。絶対に帰ってくる。」


マユの頬には一筋の涙が流れていた。絶対だよと言い笑ってみせる彼女に、レンも全力で笑顔を見せ応えてみせた。


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ワンは自身の研究施設から能力の抹消剤を取ってきていた。公社の一室には関係者全員が集まっていた。準備は整った。ワンが皆に向けて話し始める。


「おそらくこれが最後の戦いになると思う。シンは既に戦っている。オレとレンくんはこれから合流する。ここに残る者にもロンの手下が来ないとも限らない。皆くれぐれも細心の注意を払って対応してくれ。」

「ここは任せろ。地上にはゼロサンを通して伝えておく。レン、トガの目も覚ましてやってくれ。」

「わかったよ、エンさん。トガっさんのことはオレに任せてくれ。」

「二人とも、ちゃんと帰ってくるんだよ~。じゃないとアタシがロンくんをぶっ飛ばしに行っちゃうからね~。」

「ハハっ、頼もしいなリンは。でも大丈夫。そんな未来は来させやしないさ。」

「本当にお気をつけて。どうかご無事で。」

「大丈夫ですよ、サラさん。ちゃんと帰ってきます。」

「レンさん・・・」

「わかってるよ、マユ。約束したもんな。全部終わらせてくるから。一緒に地上へ帰ろう。」

「何感傷に浸ってんだ?さっさと行って全部終わらせてきやがれ!」

「イテテ、リツさんは相変わらず厳しいなぁ。」


リツはレンの背中を叩いていた。それを見た他の皆も同様に背中を叩き二人を後押しする。そして二人は最後の戦いに向け出発した。


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