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【秋葉原アンダーグラウンド】 第9章 4話

シンはロンの待つ研究施設に来ていた。入り口、それに中にも警備がいる様子はなく、シンは難なくロンの待つ部屋まで辿り着くことができた。そこには椅子に座らされ、無数の管が繋がれた機器を被せられているマリの姿もあった。


「マリ!」

「おっと、動くなよ。それにオレの殺意を斬ろうとしても無駄だ。」

「わかっている。お前に既に殺意はないのだからね。だが手元のコンピューターを操作する動きを斬るとなれば話は別だ。」

「ほんと無茶苦茶な能力だよ。だがそれも計算済みだ。マリのスイッチは別の形で用意してある。」


シンは刀に手を伸ばしてはいたが、何がマリの発動条件になるかわからず動けずにいた。ロンと睨み合い膠着状態が続く。だが、その均衡を破ったのはロンだった。シンの一瞬の隙をつき、手元のコンピューターを操作し始める。シンはすかさずロンに近づき一太刀を浴びせる。ロンは水のコーティングを自身に施してはいたが、シンの全てを切り裂く能力の前では無力だった。すかさず鮮血が迸る。


「ぐっ・・・」

「抵抗しても無駄だ!お前は・・・」


そこまで言うとシンは話すのを止めた。視界が赤く染まっている。シンは両目から血を流していた。両目だけではない。鼻や耳といった穴という穴から血が溢れ出ている。シンは思わず膝をついた。


「はぁ、はぁ、かかったな・・・マリの発動条件はオレを傷つけることだ。」

「・・・」


既にシンの目には何も映らず、耳も聞こえていなかった。脳が焼き切れている証拠だった。シンはそのままうつ伏せで倒れてしまった。


「ぐっ、意外と傷が深いな・・・くくくっ、だがこれで一番厄介なやつを始末することができた。あとはワンの持つ薬を手に入れるだけだ。しくじるなよ、ミカサ。」


ロンはふらふらになりながらもその場で笑っていた。一方でマリは泣いているように見えた。


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地下の薄暗いトンネル。レンとワンはそこにいた。そこを通り抜ければロンの待つ研究施設へと辿り着く予定だ。


「あとどれくらいなの、ワンさん?」

「トンネルの構造的にそう時間はかからないはずだ。ん、見えたか?」


トンネルの先のほうで光が差し込んでいた。レンとワンはトンネルを一気に駆け抜けようとする。しかしその途中、一人の女の子が立っていた。手のひらに電気を溜めているのがわかる。


「君は・・・ミカサくんだね。」

「ワン博士、手荒な真似はしたくありません。その薬の入った鞄を置いて今すぐ引き返してください。」

「君が薬を取りに来たわけか。ロンは何をしている?シンは無事なのか?」

「その質問には答えられません。どうか早めのご決断を。さもなければ・・・」


突如ミカサの全身が光出した。電気が走っているのが見て取れる。おそらく能力が覚醒している。レベルとしては一級相当か?しかし、今のレンの強さをもってすれば一級に太刀打ちできる。レンは一歩前に踏み出そうとしたが、ワンに制されてしまった。


「ワンさん、何を?」

「レンくん、先に行きなさい。シンが心配だ。ここはオレがなんとかする。」

「でも、相手は一級相当だ。それに、ワンさんは非能力者じゃないですか。」

「オレがいつ非能力者と言った?確かに一度能力は消したが、復活させることだってできるんだよ。」


ワンの言う通り、能力を消す薬があれば、逆に能力を戻す薬もあるのかもしれない。レンはワンの能力が何か気になった。


「でもワンさん、ブランクだってあるんじゃないですか?」

「オレの能力は常に100%出し切ることができる。そういう能力なんだ。さぁ、ここは任せて早く行きなさい。」


わかったとだけレンは言いその場を後にした。辺りはバチバチとミカサの纒う電気の音のみ流れていた。


「さてと、二人きりになった訳だがオレを見逃すということはできないかな?」

「先ほども言った通りです。私たちには博士の持っている薬が必要です。黙って渡していただけるなら危害は加えません。」

「だよね。ただで渡すわけにはいかないし、かと言って取引する材料なんかもない。戦うしかないという訳か。」


そう言うとワンは持っていた鞄を置き低姿勢をとった。ワンの背中には羽根のような物体が生えている。


「それじゃあいくよ。」


ワンはそのままミカサ目掛けて高速で突っ込んだ。


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