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【秋葉原アンダーグラウンド】 第9章 5話

ワンはミカサの雷の防御壁に突っ込むも感電せずにいた。いや、実際は感電はしているものの、それを感じさせない様子だった。ワンはそのままミカサの両腕を掴んだまま離さない。ワンの腕は電気により焦げていたが、同時に修復もしていた。


「なんですか、その能力は!?」

「ヴァンパイアって聞いたことあるよね?オレは能力でその体質を再現できる。」


ヴァンパイア。不死の生命体。攻撃力もさることながらその生命力の高さで中世ヨーロッパでは恐れられていたとされる。ただし常に給血が必要であり、それが途絶えると死んでしまう。その点はワンも同じだった。ミカサの腕を放し一度距離を取り、鞄にしまっていた血液を飲む。


「死をも恐れぬ行動。ですがその代償はかなり大きいようで。血液一本で約一分といったところでしょうか。」

「さすがだね。だけど次の一分で君を倒せると思うし、ストックはまだ残してある。」

「舐められたものですね。」


そう言うとミカサは張魔を展開し始めた。2人を包み込む結界。これによりミカサの攻撃は確実にワンに当たることになる。ミカサは両手に通天球を作り出しワン目掛けて放出する。その威力は雷に打たれた衝撃を思わせる。しかし、ヴァンパイア状態のワンは黒焦げにはなるものの、すぐに元通りの姿に戻り反撃を繰り出す。ミカサは反対の壁まで吹き飛ばされてしまう。ワンはそんなミカサに追撃することなくその場に佇んでいた。


「どうだ?普段は雷の防御壁に包まれているからこういう攻撃には慣れていないはずだ。さぁ、大人しく道を開けて・・・」


そこまで言うとミカサのほうからレーザーのような光の矢が飛んできてワンの体を貫いた。ワンは思わず吐血する。おそらく肺をやられた。ワンは急いで血液を取ろうとするも、次々とミカサの放つレーザーを食らってしまう。


「ぐっ・・・」

「いくらヴァンパイアといえど致命傷なら傷の回復は遅れるはず。それにこの量です。血液を採取する時間も与えない。」


そういうとミカサは血液の入った鞄を破壊した。ワンはその場にうずくまる形となった。尚もミカサのレーザーはワンの体を貫く。ワンはそのまま動けなくなってしまった。ミカサはワンに静かに近づく。


「一分経ちました。血液の補助ができない以上このままではあなたは死んでしまいます。ですが私の血液であればお渡しすることもできます。どうかこれを飲んで大人しく抹消剤を渡してください。」


ミカサは自身の手首を切り血を流してみせる。しかしワンはそれに反応さえしない。このままでは本当に死んでしまう。ミカサは苛立ちワンの顔を上げ無理矢理自身の血を飲ませようとしたその時、ワンの体中に空いた穴が塞がっていく様子が見てとれた。ミカサは思わず手を放し距離を取ろうとしたが、ワンの腕によって肩の辺りを思い切り斬られてしまった。


「くっ・・・何が起こっている・・・」


ワンは小刻みに震えながらゆっくりと立ち上がる。ミカサを傷つけた腕はさらにミカサを襲おうとしていたが、ワンの必至の抵抗により押さえつけられていた。まるで自分の意思と裏腹に動いているように見えた。


「ミカサ、緊急事態だ。禁断症状が出た。オレは血を取り込むことで力を得ていた訳ではなく、力を押さえ込んでいたんだ。」

「そんな・・・」

「このままでは自我を失い何をしでかすかわからない・・・まだ自我を保てているうちにどこか遠くへ行ってくれ・・・」


ミカサは直感した。この化け物は一級をはるかにしのぐ。とても手に負える相手ではない。ミカサはその場から離れたかったが腰を抜かしてしまって動くに動けないでいた。ワンは思わずその場に座り込み独り言のように呟いた。


「はぁ、はぁ・・・久しぶりだなこの感覚・・・リン、すまない・・・オレは一足先に脱落する・・・だけど、皆んなには危害は加えさせない・・・予めゼロワンの起動スイッチを入れておいたからね・・・」


ゼロワン。ゼロサンやゼロヨン同様の改造種。ただしプロトタイプであるゼロワンは人を改造したのではなく、機械を改造している。いわば人工知能だ。しかしその破壊力は凄まじく、後継機であるゼロツーにより封印されてしまう。代償としてゼロツーは破壊されてしまった。完全なヴァンパイア化したワンを止められるのはゼロワンしかいないと判断しての決断だったが、ワンには初めからこうなる未来が見えていたのかもしれない。つまり後戻りなしの片道切符だったという訳だ。


「そろそろ限界だな・・・ゼロワンはまだか・・・」


意識が朦朧としワンは項垂れる形となった。そこへミカサではない何者かが近づいてくる足音が聞こえた。よかった。ワンはそのまま意識を失い本能のまま叫んでいた。ミカサは恐怖のあまり耳を塞いでいた。


「なんだ?ミカサの帰りが遅いと思って見に来たら、こんな化け物がいるなんてな。」


足音の主はトガだった。その手にはもはやスクラップとなっていたゼロワンの姿があった。


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