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【秋葉原アンダーグラウンド】 第9章 6話

トガはゼロワンの残骸を放りミカサに話しかける。


「ミカサ、抹消剤をもってロンのところへ向かえ。こいつはオレが片付ける。」

「わ、わかりました・・・」


ミカサは抹消剤の入った鞄を手に取り急いでその場を後にした。辺り一面をヴァンパイアの咆哮が覆っている。


「ははっ、大した出力だな。並の一級じゃ話にならん。どれ、貴様の実力を見せてみろ。」


ワンの目はすでに人間のものではなくなっていた。口から牙も飛び出している。ワンは背中に生えている翼を使い高く飛翔しそのままトガに突っ込む。トガはすかさず玄武を繰り出す。しかしワンの勢いは玄武の固い甲を容易く貫く。


「まさか玄武を物ともしないとはな。」


トガは腰に下げていた青天を抜き今度は青龍を繰り出す。衝撃は互角だった。ワンの攻撃は青龍により阻まれている。しかし次の瞬間、ワンは青龍を食い千切りトガへと襲い掛かる。ワンの爪がトガの体に食い込みそのまま振り切ると、トガの体から鮮血が迸った。ワンはその勢いのままトガの肩をかぶりつく。トガは痛みに顔を歪めるも次の技を放った。


「ゼロ距離、白虎。」


白虎の爪がワンの体を貫く。ワンは思わずトガから口を離す。そしてそのまま残りの白虎の爪を浴びせられその場に倒れ込んでしまった。


「こうでもせんと止められないか。いや・・・さすがの再生能力といったところか。」


ワンの体からは蒸気が上がっている。内臓まで貫いたはずの体が再生されていくのがわかる。トガはやれやれといった顔でワンが立ち上がるのを待っていた。


「あと何発食らわせれば息絶えるのかね?」


またしてもワンの咆哮が鳴り響く。だが明らかに消耗しているのがわかった。それでもワンは翼を広げ低姿勢をとる。最大速度で突っ込むつもりだ。トガはそれを見るや否や張魔を展開する。張魔は2人を包み込み、その中では青い龍が蠢いていた。


「お互い全力と行こうじゃないか。」


その直後ワンは思い切り踏み込み、音速を超えるほどの速度を出す。トガも同タイミングで青い龍目掛け渾身の朱雀を繰り出す。張魔、青龍、そこにトガの青い炎も加わり、朱雀は何倍もの力を得ていた。だがしかし、ヴァンパイア本来の力を取り戻したワンも負けてはいなかった。自身の何倍もある大きさの朱雀を受け止めている。いや、どちらかというと押されていたのは朱雀のほうだった。朱雀は激しい唸り声を上げ、縮小と拡大を繰り返していた。ワンの圧力により破壊と再生を繰り返していたのだった。


「くそっ・・・」


押し負ける。そう思った次の瞬間、朱雀は勢いよく破裂した。あとにはワンが一人立っていた。しかしワンは動く素振りなど見せずその場に立ち尽くしたままだった。体から蒸気が上がってはいたものの再生が追いつかない。それほどの衝突だったのだ。トガのほうも能力は底をついていた。しかし・・・


「まったく、あっぱれなやつだよ。まさかここまでやるなんてな。」


そう言うとトガはワンに近づき、静かに青天を振り下ろした。


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「ワンさん、大丈夫かな。」


レンはロンたちの待つ研究施設の前まで辿り着いていた。外に灯りも漏れておらず、まるで廃屋を思わせる佇まいだった。ここにシン、そしてマリがいる。最終決戦は近い。レンは一つ深呼吸をし建物に近づこうとした。そのとき、入り口に男が一人腰を下ろしているのが見てとれた。


「レンくんだね。来てくれると思っていたよ。」

「アキモト・・・先生?」


なぜアキモトがここに?いやそれよりもアキモトの両目から流れ落ちる血のほうが気になった。おそらくレンの姿は見えていない。レンは急いでアキモトを介抱する。アキモトはそのまま話を続ける。


「マリくんが目覚めた。シンも死んだ。もはや手遅れだ。」

「先生、もう喋らないでください!傷に障ります!」

「あと少しだけ喋らせてくれ。マリくんが地上に出てしまえば日本は、いや地球は終わりだ。だから最終手段に出ようと思う。」

「それってマリちゃんを殺すってことですか?」

「普通の手段ではもはや殺すことは不可能だ。だからこの地下世界を、アンダーグラウンドそのものを沈めようと思う。」


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