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【秋葉原アンダーグラウンド】 第8章 15話

四神同士の激しい衝突により、人々は吹き飛ばされ、辺りの建物は破壊されていく。大地が割れ、空が割れ、その衝撃は止まることを知らない。エンは玄武・剛によりリツとシュンを守っていたが、しだいに甲の防御に亀裂が入っていく。


「こんなもの、見たことない・・・」


エンはその気迫により意識が飛びそうだった。ふとレンとタクのほうを見る。すると互いに歯を食いしばりながらその衝撃に耐えていることがわかった。決着が近い。急に風と風、四神と四神が混じり合うのが見て取れた。そして次の瞬間、大きな破裂音と共にどちらの四神も消滅した。巨大な台風が去った後のような空気がそこには流れていた。二人は互いに吹き飛ばされ倒れている。どちらも起き上がる気配はなかった。しかし・・・


「オレの勝ち・・・だな。」


最初に立ち上がったのはタクのほうだった。刀を杖代わりにして立っている。レンは仰向けになったまま動かない。


「レン・・・」


気付くとリツが目を覚ましその名を呼んでいた。未だレンのほうは動かない。エンは再び刀を握り反撃の機会を見定めるが、握力が戻っていないせいか刀を落としてしまう。リツも上半身を起こすので精一杯だった。タクがレンに近付こうとしたそのとき、レンが呟き始めた。


「四神を台座とし黄龍現る。」

「何をわけのわからぬことを言ってる?今すぐ楽にしてやるから待っていろ。」


タクは再びレンに近づく。しかし、あと数歩のところで動きが止まる。体を動かそうにも動かせない。体が硬直している。一体なぜ・・・


「レン、お前何をした?」

「さっきも言ったろ。四神を台座とし黄龍現るって。」

「だからそれが何だと言うんだ!」

「まだわかんねぇのか?オレは四神を使い黄龍を呼び出したんだよ。」


黄龍だと?そんなの伝説でしか聞いたことがない。だがしかし、四神を発動させているにも関わらずタクもエンも黄龍が現れていない。これはこういうものかと思っていたが、レンのやつは呼び出せただと?だとすればそれはどこに・・・ふとタクは空を見上げた。黄金色に輝く雲間から金色の龍が顔を覗かせている。その姿は神々しく、どの四神よりも輝いてみえた。そしてレンの合図とともに黄龍は雄叫びをあげながらタクを飲み込む。どこか荒々しくもあったが、音一つない、とても穏やかで優しい風だった。黄龍が消えるとそこにはタクが倒れていた。レンは起き上がりタクに近付く。


「はぁ、はぁ・・・なんて舐めた技だ。傷つけるどころか傷を癒えさせやがった。」

「黄龍とはそういう技だ。戦えない状態にするのではなく、そもそも戦わせない状態にするのが目的だ。」

「くっ・・・とことん舐めてやがる・・・」


タクは顔を自身の腕で隠しながら呟いた。周囲では警察が集まりかけていた。


「タク、オレらはこのまま地下を目指すが、お前は警察に捕まってもらう。そこで全てを話すんだ。そして、罪を償ったらちゃんと出てこい。」

「くそっ、罪ってなんだよ・・・まぁお前らもせいぜい死なないよう頑張りな。」

「あぁ。全て終わったらオレも全部話す。ケジメはつけないといけないからな。」

「そういうところがムカつくんだよ。」


行けと言われ、レンは皆を連れて駅の構内を目指す。警察が追ってくる様子もなく、レンたちはそのまま地下へと進んでいった。


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レンたちが戦っている頃、シンとワンは地下へと足を運び入れていた。


「シン、リツやシュンは大丈夫だろうか?」

「心配ない。彼らは強い。それにレンやエンともすれ違ったじゃないか。」

「確かにな。ついこの間までひよっこだったやつらが、今や要のような存在にまで大きくなりやがって。ほんと頼もしい限りだよ。」

「ときに、オウ。さっき2人とすれ違ったことで確信したことがあった。」

「なんだ?もったいぶらずに話せよ。」

「裏切り者の話だ。」


地下に風は吹かないが、そのときばかりは静寂を包むかのように冷たい風が流れ込んでくる気配がした。


「間違いない。裏切り者はトガだ。」


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