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【秋葉原アンダーグラウンド】 第9章 1話

「遅かったな。」

「オレだって地下の治安を守る一人だ。ふらふらする訳にもいかんだろう。」


ロンたちのいる研究所にトガが現れたのだった。アキモトは驚きを隠しきれないでいた。


「トガくん・・・君は一体・・・」

「ご無沙汰しています、先生。」

「まさか、裏切ったというのか・・・」

「それは違います。私は地下、それに地上をも良くしたいと思っています。今のシンではそれができそうにない。ただそれだけです。」

「だからと言って、ロンくんの思想だって君の正義に反するものだ。」

「先生、私は別にロンのほうについた訳ではありません。言わば私自身の考えだ。邪魔になるようであればロンであれ排除します。」

「だそうですよ、先生。いつまでも私だけが悪だと捉えないでいただきたい。」

「くっ・・・」


アキモトは抵抗するも椅子に縛られていて動けない。それに背後ではミカサが手のひらを向けている。いつ殺されてもおかしくない状況だった。


「ところで、マリの状態は?」

「ちょうど調整が終わったところだ。」


マリの顔半分はヘルメットのような機器で覆われ、そこからコンピューターへと無数の管が延びていた。ロンがコンピューターを触ると、マリに被せられた機器が眩く光り出した。時折マリがうなされているような仕草を見せる。


「マリは眠っている状態で声は出せない。だがこうやって脳波を増幅させ私の力で空気を介してやれば固有の振動で相手にダメージを与えることができる。」

「なるほどな。それでちゃんと狙えるのか?」


トガは後ろの扉から目隠しをした人間を5人ほど引き入れた。全員手足も縛られていて眠らされている様子だった。トガは1人の男を指名した。


「まずはこいつからだ。末期がんの患者で余命幾ばくもない。巫女の光が使えない以上安楽死させてやるのが賢明だ。」

「待つんだ、トガくん!巫女の光はまだ失われていない!だから早まるな!」


アキモトの話を無視するかのごとく、ロンはマリの座る椅子を回転させその男のほうを向かせる。そして次にコンピューターを操作し始めると、今度はマリの体自体が光ってみせた。それはまるで巫女の光を思わせるような輝きだった。一瞬、その男のほうに向けマリの体が跳ねるような反応を見せた。次に男を見ると、男は耳と隠している目から血を流してぐったりとする。


「見事なものだな。完全に死んでいる。」

「そんな・・・」


ロンは高笑いしていた。アキモトは呆然としていたが、あのミカサですら驚きの表情を隠しきれないでいた。その後ロンはまるでゲームでもするかのごとく、他の4人の人間にも狙ってみせる。先の男同様、皆血を流して死んでいた。


「ははは、ここまで理想通りの動きをするとは!まさに破壊兵器だ!」

「一体何を・・・」

「先生、先にも教えたじゃないですか。固有振動を相手に与えると。攻撃は見えないし、どこからどんな速度で来るのかもわからない。完全不可避の攻撃だ。例えるなら中性子線に近いといったところか。」


ロンは再び笑い始めた。アキモトは5人の遺体とマリとを見比べながらただ呆然としているしかなかった。


「それで・・・次は私を殺すのかね?」

「あなたを殺すのはまだ先だ。もう少し私たちのために働いていただく。」

「断る。」


アキモトはそのまま舌を噛み切ろうとした。しかしミカサの電流により体の自由が効かなかった。アキモトは諦めそのまま天を仰ぐ。


「それで・・・私に何を?」

「今の一部始終はビデオに撮ってある。先生にはこれらを伝えるメッセンジャーになってもらいます。」

「この脅威を全世界に配信するといったところか。」

「まぁ、それはおいおいですが、今は地下の脅威たちを何とかする必要があります。」

「わかった・・・」


アキモトは諦め、デモンストレーションと称したビデオ作りに加担させられた。


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