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【秋葉原アンダーグラウンド】 第7章 16話

ユキの見えない攻撃がリツを襲う。しかしリツは自身から半径10mほどに10倍の重力をかける。当然ユキの攻撃はリツには届かず、地面に叩きつけられる形となる。しかしユキはその重さにびくともせずその場に立ち尽くしていた。


「化け物かよ、てめぇ。」

「うん、少し体が重いけど、動けなくはないな。」


ユキは痩せ型だ。体重はせいぜい50kg程度だろう。それなのに約500kgもの重りを担ぎながらこちらに向かい歩いてくる。一瞬でも重力を解けば即座に間合いを詰められやられてしまうだろう。かと言ってやつの間合いに入ると自身もその重力の影響を受けるはめになる。自身の薄皮一枚分のところだけ能力を解くしかない。緻密な重力操作が不可欠だった。しかし、リツも修行をした身である。ユキへの重力はそのままに、自身にかかる重力だけを操作しユキへと近づく。


「すごいね、さすがは重力使い。となればこっちも本気を見せるしかないかな。」

「出し惜しみしてるとあとで後悔するぜ。」

「そうだね。それじゃあ行くよ、有量新月。」


ユキは再びチャクラムを取り出しそれを消してみせる。しかし、今回はただ消すのではなく、そこにあった空間ごと消している。さらにその歪んだ空間を圧縮すると、小さなブラックホールのようなものを作り出した。


「僕の能力は兄さんと違い、有から無を作り出す。完全なる無と言えばブラックホールだ。これは君の持つ重力の応用版かな。」


リツの能力は覚醒により自身をブラックホール化させることはできる。しかし、攻撃するとなれば話は別だ。リツの重力波はユキほど圧縮させることはできない。それでもリツは両方の拳に重力を纏わせ、ユキの放つブラックホールを迎え打つ。


「くっ・・・」

「ほら、どんどん行くよ。」


リツの重力波は小さなブラックホールたちによって削られ、さらには自身をも削られていく。そこでリツは自身をブラックホール化させることで身が削られるのを防いだが、容赦なく浴びせられるユキのブラックホールに体をパンクさせる事態となった。大量の出血。リツは思わずその場に倒れた。同時に、ユキにかかっていた重力も解かれた。


「あれ、なんだか体が軽くなったな。重力が解けたってことはそろそろ限界なのかな。」

「うる・・・せぇ・・・勝負は、ここからだ!」

「あんまり無理しちゃだめだよ。もうふらふらじゃないか。」


ユキの言う通り、立ち上がったリツの足は今にも折れてしまいそうなほど震えていた。しかし、ふーっと息を吐くと体勢を整え、真っ直ぐにユキを見つめた。心はまだ折れてはいなかった。するとリツは自身とユキを閉じ込める重力の檻のようなものを繰り出す。


「これってまさか・・・」

「領域だ。今から私の攻撃は全てお前に当たる。」

「そうだったね。それでも僕は君の攻撃を受けきる自信はあるよ。」

「領域の効果はそれだけじゃない。自身の攻撃をも跳ね上げる効果がある。」


そう言うとリツは片方の手のひらに重力の塊を作り出しそれを圧縮させてみせた。その姿はまさにブラックホールそのものだった。しかもユキの作り出したものよりも遥かに大きかった。


「驚いたな。まさか僕同様にそれが作れるのか。」

「重力も突き詰めればブラックホールだろ。」


リツの作り出したブラックホールは勢いを増していく。しかしユキも負けてはいなかった。リツと同等の大きさのブラックホールを作り出してみせる。


「さぁ、力比べだ。この後果たしてどちらが立っていられるかな。」

「この私に決まってるだろうが!」


そして2つのブラックホールは激突した。四神同士の衝突にも負けずとも劣らない、その衝撃は周囲の物を次々と破壊していく。さきに顔を歪めたのはリツだった。先のダメージが残っている。片腕はもう上がらない。それでも伸ばしたほうの腕は下げなかった。


「リツさん、本当にすごいよ。この僕に本気を出させるなんて!」

「・・・だったら、早く倒れてくれねぇかな。」

「それは無理な相談だ。僕にも背負っているものがあるからね。」


ユキはさらに出力をあげる。確実にリツを押している。しかし、リツも最後の力を振り絞り、跳ね返そうとする。そして、リツの咆哮と共に2つのブラックホールは相殺された。リツはかろうじて立ってはいたが、領域は消失してしまった。次の瞬間、ユキの見えない攻撃がリツを襲った。リツは吐血しその場に倒れてしまう。今度こそ立ち上がることができないでいた。


「はぁ、はぁ・・・これでやっとお終いかな・・・」


ユキも限界が近く、立っているのがやっとだった。止めをさそうとリツに近づこうとすると、リツの倒れている先のほうから強い殺気を感じた。ユキは思わず顔を上げ殺気の主を見つける。するとそこには、鬼の形相をしたイジュンが立っていた。


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