失セ物見付カラズ
物を失くした事は今までに何度もある。
大体部屋が散らかっているせいだったりうっかりしていたりするためだ。はっきりと場所は分からなくとも、普通は外で落としてきたか家の中で失くしたかくらいは見当が付く。
しかし、明らかに家の中で失くした筈なのにいつの間に失くなったのか、そして何処へ行ってしまったのか分からないという事もたまにある。
そのひとつが、昔使っていたガラケーだ。
それも、一番最初にケータイを持った時の物ではなく、大学生の時くらいに使っていた3台目くらいのガラケーだ。(まあそれも大分大昔にはなるけど)
私は機種変更した後も古いケータイは何と無く取っておいた。昔は今と違ってクラウドに保存とかも多分無かったから写真はSDカードで移し替えたりしていたけど、移し替える程ではないにしろ何と無く残しておいて見返したい写真なんかもあった。
そういう訳で古いケータイも取っておいたのだが、大分後になって(それこそスマートフォンにしてから)その何台目かのガラケーが見当たらない事にふと気付いた。
思い出すと気になって私は実家の自分の部屋でそれらしい場所を手当たり次第探したが結局見付からずじまいだった。あれは確かVodafoneの真っ白な、開閉の時にカチャッと小気味いい音がするガラケーだった。他のケータイに移し替えていない写真も沢山入っていたから、見付からないとなると途端に惜しい気持ちになった。しかしそれまで思い出しもしなかったくらいだから、あったところで見返さない内に電池が完全に死んでいた可能性もある。
ずぼらな私のことだから、どこかに仕舞ったまま気付かない内に袋ごとゴミに出してしまったとか大方そんなところだろうとは思う。
しかしそんなに小さな物でもないのに余りにも忽然と失くなってしまったので、私は小人にでも持っていかれたのではないかとさえ思った。
私が人生で犯した何かしらの小さな罪に対して、罰として気付かぬ内に物が消えていく。寝ている間に小人が3人がかりくらいでガラケーを担いで持って行ってしまったのだ。私が失ったのはガラケーそのものと言うより、ある時期の思い出を視覚的に確認して懐かしむその時間だ。記憶はどんどん鮮やかさを失い抜け落ちてゆくから、あの真っ白なガラケーの中には私が自力では二度と思い出せない思い出が記録されていたかもしれないのだ。
昔友達に貰ったアンティーク調のゴールドの星型のピアスも、外で落とした訳ではないのに2つ揃っていつの間にか手元から消えていた。
今頃小人の引き出しに大事に仕舞われて、クリスマスにはツリーの天辺に飾られているのかもしれない。
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