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小さな扉のロマン

子が通っている幼稚園ではないけど家から割と近い幼稚園は、玄関に小さなサイズの扉がある。通常の扉の横に、子供はそのまま出入り出来るけど大人は屈まないと潜れない扉があって朝や帰りの時間に通りかかると子供たちはその扉から出入りしている。何だか可愛らしい。

昔、何処かですごく小さい扉を見た気がするのだけどそれが何処だったか思い出せない。多分普通の家ではなくお店だった気がするのだけど、幼稚園の扉よりはるかに小さいサイズだった。あれは果たして何だったのだろう。とても大人が出入り出来るサイズではなかったので、ひょっとして飾りだったのかもしれない。

仲の良い友人の部屋には小さな扉があった。扉と言っても壁と同じような色で取っ手があるだけの簡素なものでやはり屈まないと潜れないサイズだった。その奥は物置になっていたようだった。当然その扉からは家具など大きな物の出し入れは出来ないけど、衣類などちょっとした物を収納するなら十分だろう。
私の家には埃だらけの蔵や、増改築する前にはネズミの出る屋根裏部屋ならあったけど、友人の家は以前の家を丸々取り壊して新築していたので、綺麗な秘密の部屋がある事が羨ましかった。私の家の蔵や物置部屋はどれも子供がワクワクしながら入るには薄暗くて汚くて怖過ぎた。それに何より、小さなサイズの扉はうちには無かった。

小さな扉はそれだけで、その向こうに何があるのだろうとドキドキして誘われるような魅力がある。同時に大人にはもう軽やかに通り抜けられないという切なさも漂う。
もし一軒家を建てるような事があったら、何処かにピスタチオグリーンかピーコックグリーンの小さな扉を取り付けたい。物置でもちょっとした納戸でも。

…まあ、今のところ一軒家を建てる予定もお金も無いですけど。(悲しい)

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