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レトロに憧れて

昨日、やっと重い腰を上げて電気ストーブや加湿器を押し入れに仕舞い、代わりに扇風機を出した。
春をすっ飛ばしたような気候にただでさえ大汗かきの旦那は滝のように汗を流している時があって、もう必要だなと思った。

我が家の扇風機は真っ白でシンプルで、最近流行り(なのかは知らないが)のやさしいそよ風のような風を送ってくれるタイプのものだ。今の家に引っ越した時に買った。同じものが2台ある。
家電屋さんで扇風機コーナーを見ていて、今時の扇風機は随分シュッとしてるんだなぁと思った。
そして昔実家にあった古めかしい扇風機の事を思い出した。

流石に実家でも随分前に御役御免になってしまって今は無いが、私はそのレトロな風貌が中々に好きだった。
羽は透き通った青色をしていた。表現しづらいけれど、コバルトブルーみたいな真っ青な青と、少し黄みの入ったターコイズブルーの中間と言うか、如何にもプラスチック、という色の青色だった。
操作盤(と言うのか?)のデザインも全体に青系の色でまとめられていて、タイマー機能のツマミと、風の強弱を選ぶための四角いボタンが4つ並んでいる。一番堪らないポイントが、その4つのボタンの色がグラデーションになっている事。アイボリーっぽい白から始まり、4つ目が一番濃い青色をしている。
伝わるか分からないけれど、このグラデーションがめちゃくちゃに可愛い。レトロな物って何と無くグラデーションが多い気がする。

昔から何と無くレトロな物が好きだった。
日本の70年代80年代くらいのキッチン雑貨や食器ってめちゃくちゃに可愛い。ビビッドな色や大胆な柄、一歩間違えばダサいと言うか所帯染みると言うか、それもまた良い。
西洋アンティークのお洒落な洗練された雰囲気も大好きだけど、日本のレトロなものには独特の魅力があると思う。

中高生の頃の私は、何とか自分の部屋をレトロでお洒落にしようと試みていた。
昔台所に置かれていた箱の様な形をした小豆色のテレビを映りもしないのにオブジェとして置いてみたり、リサイクルショップで買った用途の分からない黄色いチューリップの置物を置いてみたり。
母の実家にあった可愛い黄色い花柄のグラスとアイスクリーム皿を貰って来て並べたり。
それから雑貨屋さんで可愛いグラスを見付けると買って来ては棚に並べた。何と無く1つでは収まりが悪い気がして大抵同じ物を2つ買った。

だがある時私は気付いてしまった。
雑誌に載っているようなお洒落で可愛い70’sルームを作り上げるのには、途方も無くお金がかかる。
そして実家にある古い物を片っ端からレトロと言い張ってそれで間に合わせるのは、どうしたって無理がある。

そんな訳で完璧なレトロルームにする計画は頓挫してしまったが、今でもやっぱりレトロな物って何だか心惹かれる。自分の中の乙女の部分がぎゅっと反応すると言うか。

集めたグラスの大半は実家に置いて来てしまったが、いくつかは結婚する時に大事に梱包して持って来た。(前の家で1つ割ってしまった時はめちゃくちゃ凹んだ)

今日も私は乙女心の片鱗に氷を満たして、缶チューハイを注いで飲む。

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