辺土名商店街 会場・SIDE CORE プロジェクト
「やんばるアートフェスティバル2020-2021」の見どころとなる国頭村・辺土名商店街 会場では、ストリートカルチャーと現代美術を横断する今注目のアートユニット・SIDE COREによる新しいプロジェクトを展示しています。
今回のSIDE COREによるプロジェクトでは辺土名商店街の空き家を使用して、アーティストのSTANG、security blanket(ame+fumijoe)、KINJOの3組の展示をしています。
それぞれストリートカルチャーのシーンで活躍するアーティスト達で、この居抜きの店舗跡地でPOP UP SHOP=「期間限定の店舗」を作り、その中でアート作品を展示しています。ストリートカルチャーとはアメリカの若者文化であり、世界中でその土地の文化と混ざり合いながら独特の発展を遂げています。あまり知られていませんが、沖縄は米軍基地がある歴史的経緯から日本で最もストリートカルチャーシーンが盛んな場所の一つです。今回この展示では、ストリートアート 、ZINE、TATTOO、スケートボードなどを題材としながら、「文化を通して、人や街の風景が繋がっていくこと」をテーマとしています。具体例とし、STANGは日本中のアーティスト達からZINE(手作りのアートブック)を集め、日本各地の路上で販売/交換会を開催します(沖縄のアーティスト達も多数参加予定)。またsecurity blanketはTATTOOのアーティストユニットですが、彼/彼女は世界各地を旅しながら、様々な人々に彫ったTATTOOの図案(フラッシュ)を展示しています。またKINJOはスケーターで、今回沖縄の国道58号線をスケートボードで北上し、沖縄にある自身のルーツを題材にしたスケートビデオを発表します。展示が終わればPOP UP SHOPは閉じてしまいますが、彼等が作りだしたストリートカルチャーのリンク/繋がりは、やんばるの風景を異なる場所の風景と繋げ続けます。
『ZINE SWAP MEET CAMP』by STANG
STANGは大阪をベースに活躍するストリートアーティストです。また大阪の新世界にある商店街でアートショップ「VOYAGE KIDS」を運営しており、世界各国のアーティストの作品やZINE、グッズなどを展示販売しています。STANGは2015年より定期的に、日本中のアーティスト達からZINE(手作りのアートブック)を集め、日本各地の路上で販売/交換会するイベント「ZINE SWAP MEET CAMP」を開催しており、今回展示しているトラックも会期中沖縄各地を回ります。ZINEとは即興的にコピー機などを使って作られる、断片的な情報で構成された「記憶のかけら」のようなアートブックです。つまり、ZINE SWAP MEET CAMPは、たまたま街角でSTANGを見つけた人が、普段見ることのできないZINEに触れることができるという内容で、それは「誰も知らない本」だけを置いた本屋が、街角に蜃気楼のように出現する幻想的な体験です。今回の展示では、これまでSTANGが集めたZINEのアーカイヴ、新作のZINE、そしてこれまで回ってきた地域の記憶を展示しています。ZINEはお手にとって見ていただけますが、非常に繊細なものなので気をつけてご覧ください。
『security blanket Tattoo shop』by security blanket(ame+fumijoe)
ameとfumijoeは夫婦のTATTOOアーティスト・ユニットで、昨年までチェコのプラハに、現在は大阪を拠点としながら世界中で仕事をしています。TATTOOは日本ではネガティブなイメージがありますが、近年その芸術性が評価されつつあり、ここ沖縄も日本では有数のTATTOO文化が栄えている場所です。TATTOOアーティストにも様々な活動や表現がありますが、ameとfumijoeは世界各国(台湾・韓国・タイ・香港・イタリア・ドイツ・チェコ・ポーランド)にゲストワーク、TATTOOのコンベンションに参加しながら旅をし、その土地土地で出会った様々な文化に影響を受けながら新しい表現を模索しています。だからこそ2人のスタイルには多様な物語性があり、なおかつ可愛らしいスタイルが特徴的です。今回ここで展示している絵は2人は世界中で彫ったTATTOOの図案であり、2人を通して世界各国の文化が混ざり合ってきた記憶でもあります。また、今回は2人が実際に普段使用しているTATTOO用のベッドが設置されており、施術の様子を映像作品として見ることができるほか、TATTOOを彫る音が聞こえ、普段入ることのないTATTOOショップに入る体験を作品として作り出しています。
『HOMECOMING』by KINJO
ここではスケーターでアーティストのKINJOのスケートビデオ作品が展示されています。(これらの作品は別室の絵画作品をセットになっています。あわせてご覧ください。)KINJOは東京で育ちましたが家族のルーツが沖縄にあり、この場所から10分ほど南下した大宜味村に実家があります。那覇空港からここ辺土名までの58号線沿い、今回KINJOがその区間にある様々な地域でスケートボードをし、その途中の風景を撮影しました。また映像では「目の絵」を持ってスケートボードを滑っており、この目はKINJOの作品に度々登場するモチーフですが、今回は子供の頃から見ていた風景を改めて振り返るKINJOの視点を意味しています。映像は沖縄の伝統的な住宅が並ぶ住宅街から、アメリカの文化が混ざり合った商店街まで様々な場所を抜け、最終的にKINJOの家族のお墓まで辿り着きます。その内容はKINJOのルーツを巡るロードムービーのように私的なものですが、同時にアメリカと日本の混ざり合った沖縄の風景をスケートボードやストリートカルチャーのフィジカルな視点で、その面白さや特殊性を再発見しています。