2023/10/19 『からすのパンやさん』を読む

子どもと図書館に行くことが日々のルーティンのひとつとなっている。
最寄りの図書館の児童書コーナーには、靴を脱いで絵本を読み聞かせできるエリアがあり、我が子のお気に入りだ。
開架専用の大型絵本の中に、かこさとし『からすのパンやさん』があった。
自分も子どもの頃から知っている作品で、艶々したパンのイラストが美味しそうだったことをよく覚えているが、あらためて読み聞かせてみると気づくことがあった。

パン屋を営むカラスの夫婦に、4つ子が生まれる。
夫婦は幸せいっぱいだが、子どもが生まれたことで生活に変化が生じる。
子ども達の世話に手がかかり、パン屋の仕事が以前のようにこなせなくなった結果、だんだんと貧乏になっていくのである。

何ということだ。
今の自分たちと同じではないか。

子どもが生まれて幸せな思いもたくさんするが、限られたマンパワーでは以前と同様にお金を稼ぐことはできず、経済力が衰えてゆく。
これは作品の描かれた1970年代ですでに提唱されていた問題だったのだ。
そして50年後の今も、子どもを迎えた家庭が、幸せとひきかえにお金を失う状況は変わっていない。

夫とは2014年に結婚したが、子どもが生まれるまでの6年間は優雅なDINKS期間を過ごした。
大人2人だけの生活は、それはそれはゆとりがあった。
仕事から帰って最低限の家事をこなし、自分の身の回りのことだけして充分な睡眠が取れる生活。気分転換も好きな時にでき、身体も心も健康で、仕事に体力を全ベットできた。
会社では中堅社員として評価され、賞与もたくさんもらえた。

それが今はどうか。
子どもが生まれ育休に入った途端、収入は激減し、復職後は時短勤務ゆえに給料もカット。比例して賞与も減る。
子どもが風邪をひくたび会社を休むので仕事には穴が空く。たちまち「周りに迷惑をかける要因のある人」として肩身のせまい思いで働くようになり、ストレスは急増。
家に帰っても家事育児のルーティンをこなすため働き、身体を維持するために必要なギリギリの睡眠時間を確保して眠りにつく。
幼い子どもを育てながら働く核家族夫婦の生活は、健康で文化的とはほど遠い。
放っておいたら自然に貧しくなるようできているのだ。

核家族が増えた高度経済成長期。
かこさとしは、2人だけで子育てする親を励ます気持ちでこの作品を描いたのかと思うほど、カラスの夫婦が今の自分たちと重なった。

しかし物語はその後、明るい方向へすすむ。
大きくなった子ども達が、子どもならではの発想で、商機を呼び寄せてくれるのだ。
パン屋は大繁盛。
めでたしめでたしで幕を閉じる。

子どもが小さいうち、親は本当にぼろぼろになる。でも大きくなれば、助けてくれることもある。
今はつらいけど、子どもの可愛さに励まされながら何とか頑張ってねと言われている気がした。
かこさとし、ありがとう。

とりあえず政府には、0歳から保育料無料にするのと、子どもを生んで減った分の収入の補填を少子化対策としてお願いしたい。
以上です。

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