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尾高惇忠さんの「瞑想」について

2022/4/15に開催した「邦人作曲家による作品集第2回」で演奏した、尾高惇忠さんの「瞑想」について。

この無伴奏チェロのための楽曲は、1982年日本現代音楽協会主催の演奏家シリーズ “倉田澄子チェロリサイタル”のために現代音楽協会の委嘱により作曲されました。2009年に八王子で行われたガスパール・カサド国際チェロコンクールの課題曲にもなっています。

2021年の2月に邦人リサイタルの第2回目を「親子ともに作曲家」というテーマに決めた時、尾高尚忠、尾高惇忠両氏のお名前が思い浮かびました。

今まで取り組むチャンスがなかった「瞑想」を惇忠さんに聴いていただこう、また、この機会にお父様の作曲家、尾高尚忠さんについてお話を伺おう、と考えていた矢先、惇忠さんが亡くなったというニュースを聞きとてもショックでした。


倉田澄子先生のレッスンを受けました。

惇忠さんに聴いていただけなかったことはとても残念でしたが、今回「瞑想」を演奏するにあたって初演者でもあり、惇忠さんの従姉妹でもあるチェリスト、倉田澄子先生のレッスンを受講することができました。公演の1週間前に先生のご自宅に伺いました。

倉田先生からは惇忠さんと一緒に写っている写真などを見せていただきました。
「いとこ(惇忠さん)とは本当に仲が良かった」と優しい表情で語る倉田先生。

・激しさと悩みの交差

倉田先生によると、
「彼は普段はとても穏やかで、優しい。そしてロマンチスト。だけど突然芸術家らしく、激しくなる。特にこの曲(瞑想)を書いたころは色々と悩んでいた時期で、その交差が見える。」

前年、オーケストラのための《イマージュ》 で 「尾高賞」を受賞した直後の曲だが、《イマージュ〉で難渋したせいかこの曲は案外スムーズに書き進むことが出来た。 オーケストラという大きな媒体と取り組んだ後、その対極とも言える独奏チェロという極めて限定された枠の中での多様な音楽表現の可能性を追求した。 また、内面の心の動き、心の葛藤といったものを見つめ、表現しようと努めたことから、 曲名は 《瞑想》 とした。 

全音楽譜出版社 独奏チェロのための<瞑想>より 尾高惇忠

「フォルテは突然に、激しく」とさまざまな箇所で指摘されました。またそれを実現するための解決策も教えていただきました。
たとえば、3小節目にあるこのパッセージで「急激なクレッシェンド」が欲しい、と指摘されました。

この5連符の最後の二音(レ、シ♭)をG線→D線でとっていたのですが、倉田先生から「D線の開放弦、A線」を使うようアドバイスいただきました。このようにすると確かに急激なクレッシェンドが実現できます。

・同じことを繰り返さない

冒頭

この楽曲には、同じパッセージが2〜3回連続する箇所があります。
それをただ同じように弾くのではなく、1回目、2回目、そして3回目、、と弾き分ける必要がある、とさまざまな箇所で指摘されました。これは、クラシック作品でも同じですね。

自筆譜

レッスン後、瞑想の自筆譜を見せていただきました。

全音から出版されている楽譜にも「この作品の作曲は1982年10月であるが、今回の出版に際し2008年1月に一部改作を施した。」と書いてありますが、かなり自筆譜と違う箇所があります。

自筆譜冒頭
出版譜冒頭

はじめの3小節を見ただけでも、違う箇所がかなりあると思います。

  • そもそもタイトルが違う(Meditation→Meiso)

  • あれ、ODAKAになっている

  • Lento assai(Tre Librement)→Lento espressivo

  • 3小節目の1拍目の休符が追加、後半の拍の表記が違う


また、この楽曲は静かに消えいるような終わり方が印象的ですが、

出版譜ラスト
自筆譜ラスト

ここもまたずいぶん違います。

101小節目のA,F#,G#の音も、もともとは自筆譜のような和声がついていた、と思うとちょっと雰囲気が変わりますね。

終わり方が変わったのは、倉田先生の助言もあったようです。


尾高惇忠さんのチェロ作品について

尾高惇忠さんの亡くなった1ヶ月後、3月5日と6日に札幌交響楽団定期演奏会にて、宮田大さんソロ、尾高忠明さん指揮でチェロ協奏曲が初演されました。

また、倉田先生によると「チェロソナタ」があるそうです。(未確認情報)

今のところ出版されているチェロのための作品は「瞑想」のみですが、紛れもない名曲だと思いますし、
倉田先生の監修(?)のおかげで、チェロ奏者にとってかなり弾きやすく書かれています。もっと多くの方に演奏されると尾高先生も喜んでくださると思います。


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