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百冊挑戦

僕はいくつかのコンプレックスを抱えている人間ですが、なかでも代表的なのが「本を読むのが遅い」というものです。本当に遅い。理由はいくつかあると思っています。まず、読んでいて思うところがあると赤ペンで傍線を引いたり、そこにメモを書き込んだりする。速読の方々に言わせると、これがダメなんだそうです。読書のリズムを損ねる。書き込んだって、どうせそれを見直すことはない。だったら読書のリズムを大切にせよ。そういうことなんだそうです。

でもやめられない。書き込んでしまうのです。とはいえ、別のカードなりノートなりメモなりに書き写して整理するほどマメじゃない。本のページに直接いろいろ書き込んでしまいます。だから、僕が読んだ本は赤い文字がびっしり書き込まれています。古本屋で買い取ってもらおうと思うと、もっとも値段が低くなるタイプの本になってしまっています(いずれ、書き込みがあるほうが価値があるという古本屋を作ってみたいと思っていますw)。

遅い理由はそれだけじゃない。まず、基本的に活字を目で追う速度が低い。というか、慣れていない。だから読みにくい漢字に出合うといちいち速度が落ちる。あと、同じ行を何度も読んでしまう。「なんか読んだことあるなぁ」と思うと、だいたい同じ行を追っている。そんなことばかりなんです。だから嫌になる。で、本を閉じる。だから遅々として読み進められない。

あとは眠くなるんですよね。すぐに眠くなる。映画を観ていて眠くなることはあまりないのですが、本を読んでいるとすぐに眠くなる。むしろ、眠れないときに読むべきものが本だと認識しているくらい。読み始めてしばらくすると本を閉じて寝る。だから遅々として進まない。

そんな人間なので、仕事上必要だから読まねばならないという本を除いて、趣味の読書をすることはほとんどありません。特に小説を読むことはない。人生で数冊だけ読んだことがありますが、「ほかに読むべき本があるのに、こんなに楽しい本を読んでいる場合じゃない」と思ってしまって、物語に没頭できませんでした。友人に「絶対おもしろいから」って進められた小説で、事実面白くて、夢中で読んでいたら、徐々に罪悪感が生まれる。読み終わったらすぐに実務書を広げて読み始め、当然のようにすぐ眠りました。

ところが2021年1月、友人が「今年は百冊読むぞー」とSNSで宣言していたのです。思わず「すごいねー」とコメントしました。本当にそう思ったから、指先が動いてコメント欄に書き込んだのでしょう。そしたら友人が「一緒にやろう」と誘ってくれました。嬉しいんだけど、同時に「僕がどれだけ本を読むのが遅いかを知らない人の言葉だな」と思いました。僕の遅さは、友人の想像の域を遥かに超えたものなのです。なので「読みます」とは返信できず、「挑戦します」とお茶を濁しました。

「年間百冊読むぞ」という掛け声は、多くの人にとって魅力的な響きを持つようです。ほかにも「やろう」という猛者が登場し、結局5人で「百冊挑戦」を始めることにしました。でも、残りの4人はわかっていない。僕がどれだけ遅読なのかを。だから僕は彼女たちに問いたい。どうすれば人並みの速度で本が読めるようになるのかを。僕のような遅読者を納得させるような技術を提示できる人間がいるかどうかを試したい。「傍線やメモをやめればいい」とか「毎日決まった時間に読むよう癖づければいい」とか、そんなありきたりなアドバイスは全く通用しない。そんなレベルではないのだ。

そんなネジ曲がった優越感を抱えて「百冊挑戦」のグループの末席に加えてもらうことにしました。これほどの遅読者でも年間百冊に到達できるような助言ができるのか?月末にはオンラインミーティングを開催し、4人のメンバーに「どうすれば年間百冊、月間八冊、週間二冊の読書が可能か」を問うてみたいと思います。メンバーの助言力が試されるところです。楽しみだぜ(ネジ曲がっているw)。

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