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満月の日に、星になったんだ

彼は珈琲が好きだった。
アイスクリームも好きだった。
欲しいものを聞いたら
テレビカードと宝くじ、
って。

ベットから眺める
窓の近くに
幼稚園で作った
鯉のぼり

風で少し向きが変わると
名前が見えるように
して欲しいと

やりたいことが
いっぱいあって
母を悩ませた

父は眠るように
満月の夜に星になった


3人姉妹と母
9人の孫が揃って
父を送った

まるで田舎のお葬式だね、
みんなとても騒々しい
久しぶりの再会で
悲しむ暇もない通夜だった

翌朝
納棺になり
父の好きなところを話して
優しく撫でて
キレイな色の花で
棺の中いっぱいにした

お気に入りだった
鯉のぼりも一緒に
折り紙で作った
作品もたくさん

本当に可愛らしい
安らかな顔をした
父の亡骸だった
私もこんなふうに送られたい
本当にそう思った

火葬場に行く車内
幼い子どもたちに話した

「おじいちゃん
ほしになったね
みんなのこと
おそらからみまもってるよ」

「おじいちゃん
おめめみえないね
なんでみえるの?」

「みんながおもいだすときに
みんなのこころのなかで
おじいちゃんはいきてる

みんなもおじいちゃんのこと
おもいだすとみえるでしょ」

「ほしになったね
おじいちゃん
こわくないよ」

高校生の長女が
堰を切ったように
声を上げて泣いた。

雨がザーザー降って
私も一緒に泣いた。

父は残された母が
寂しい思いをしないよう
この数ヶ月を病院で1人で過ごし
そのまま戻らなかった

4年の間在宅で
母の手厚い介護を受けて
ケアにあたる
スタッフの皆さんにも
恵まれて

寂しくはないよ
いつも通りでいい
また帰ってきそうな
雰囲気で

少しづつ
動かなくなって
お別れの準備を

きっと来年も思い出す。
藤の花を見ながら
走った高速道路を。

大鍋で作った
カレーライスや
今まで作ったことない量の
かき揚げうどん
焼きそば

子どもたちの
おかわりの声
食欲がない母も
ついつい食べてる
みんなでたべるとおいしいね

海外赴任で戻れない夫から
ごめんとメッセージが来た
週末に会いに行っておいで
子どもに会うと元気になるからと
優しい言葉に
涙止まらなかった

今の状況で
不要不急な移動は避けないといけない
ものすごい葛藤をしながら
2週後に
今よりも落ち着いていることを祈る

少しお節介だとしても
理由をつけて
母に会いに行こう
大人も子どもも
今日が1番若い
明日は誰にもわからないんだから


大切なひとが
決して1人にならないよう
会いに行く
みんながいるから大丈夫だよ
大好きだと
伝え続ける。

私にできることを
思うだけでなく
やっていこう。

一緒に珈琲飲もうね。
また電話するよ、
毎日食べてね。
また行くからね。

元看護師。元某美容部員。アロマセラピー、石けん生活、ハーブのある生活、こどものおやつ、日々フランス家庭料理を楽しんでいます。転妻。金沢、つくばを経て大垣在住。