No Pain、No Gain(佐藤幹夫)
人間的に成長する集団を目指した、札幌山の手高校ラグビー部の挑戦。それを始めて率いて来た指導者(現・札幌山の手高校ラグビー部総監督)にドキュメンタリです。
ぼくがスポーツに関する本を取り上げるのは、珍しいことでしょうか?
ラグビーが好きなわけでもありませんし、山の手高校に義理も恩も貸しも借りもありません。
単に、著者の佐藤幹夫氏が高校の同級生だからです。
彼は同級生の中ではひとつ年上で、当時から「みきおさん」と呼ばれていました。いわゆる中学浪人だったのでしょう。最近はそういう生徒はいないと思いますが、当時はそういう生徒が何人かいました。
ただし同級生たちから「さん」付けで呼ばれていたのは、彼だけですね。そのころから人の上に立つ器だったのでしょう。
たわいもない昔のやんちゃ話や教職につくまでの話の中に、けっこう実名で同級生らが登場するのには驚きました。実名出していいのか? というか、そこで実名いる? なんて思ったりして。
そういう内輪話よりも興味深いのは、彼のラグビー部というものに対するスタンスです。
他校の指導者から、「もっと勝負に徹したらどうか」ということを言われて悩むのですが、佐藤幹夫氏は勝負師であることよりも、教育者であることを選びます。
元々が、不良と呼ばれる落ちこぼれの生徒を立ち直らせようとして創部したラグビー部です。大会での勝利よりも、生徒たちが自分に自信を持ち、成長していくことが最終目標だと腹をくくったのですね。
勝つことは大切だけど、それはあくまでも成長していくための手段ということ。
クラブ活動を率いていく上で、こういう覚悟はなかなか持てるものではないでしょう。
しかし結果的に、彼の判断は間違っていなかった。それは近年の山の手高校ラグビー部の躍進を見れば明らかなことです。
高校生のころは、佐藤幹夫氏がこんなに立派な人間だとは思いもしませんでした。
単に漫才のB&Bの島田洋七に似ていて、いつもニコニコしていたという記憶しかありません。