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インド映画3選 atクラハ[20210927]

※clubhouseでの発表用メモの加筆修正です。
※広瀬公巳さん主催のclubhouseのroomで発表しました。clubhouseでもらったコメントも追記しています

 わたし、m.やまうち!今回のテーマは”food”!
 food、食べ物、食事で集めたのですが方向性の違う作品ばかりになりました。2作目は間違いなくわたしの趣味ですw

■Ustad Hotel/ウスタード・ホテル 2012年(DVD) マラヤーラム

監督 アンワル・ラシード
出演 ドゥルカル・サルマーン(「伝説の女優サーヴィトリ」)、ニティヤ・メナン(「ミッション・マンガル」)、ティラカン

[あらすじ]
ドバイの大富豪の息子ファイジは跡取りとして期待されているが、実はシェフになりたい若者。彼は留学先のスイスから戻ってきて名家の娘と見合いをする。美しい彼女に心を許し「自分は実はシェフになりたい」と語るがなんと「料理人とは結婚できない」と見下され破談になってしまう。ファイジの父も彼がシェフになるのは大反対、このお見合いを絶対に成立させろと厳命しファイジのパスポートを隠してしまう。実はファイジはロンドンのレストランでの就職の話を密かに話をすすめていたがその話も流れてしまう危機になる。ファイジは家を抜け出しカリカットで食堂を営む祖父のもとに身を寄せる。
[ポイント]
・ウスタード・ホテルとは「ウスタード」=「師匠、マエストロ」+「ホテル」=インド英語「庶民的な食堂」。この映画では街の人に愛されている老舗の”大将がやってる大衆食堂”といった感じでしょうか。
・ウスタード・ホテルの舞台のカリカットはインド南部、ケーララ州マラバル海岸でアラビア海に臨む港湾都市です。検索すると美しい海の写真がたくさん出てきますね。
・ファイジはぶっちゃけ甘やかされた大金持ちのボンボンです。お母さん代わりの優しい4人の姉、いざ家出となっても父の財布から金を盗む、家出の手段も使用人に車を出してもらっています。でもこの使用人も実は祖父とグルなんですねw。そして優しくも厳しい祖父のもとでウスタードホテルを通して人々とふれあい、自分に目覚める成長譚。さいごに祖父から言付かってとある施設へいき、”本当の料理人”になります。
・家族との絆や人との縁などの人情だけでなく、この社会のしきたり・制約や女性の置かれた立場、宗教の教えなど、様々なものを包含した美しい映画です。
・ボリウッドなどのインド映画のSongシーンとは一線を画す印象的でアーティスティックな映像、特に海の映っているシーンが美しいです。それだけでも一見の価値があります。

胃袋を満たすのは簡単だ
だが心も満たさねばならん
それが良い料理人だ

■DJ(Duvvada Jagannadham) 2017年(youtube)テルグ 

監督 ハリーシュ・シャンカル
出演 アッル・アルジュン、プージャー・ヘグデ、スッバラージュ
[あらすじ]
 DJ(ドゥッワーダ・ジャガンナーダム)の一家はバラモンとしてのお勤めをしつつ、家族ぐるみで結婚式などのお祝い事のケータリングサービスをしている。DJは少年の頃から正義感が強すぎて、それは時に暴力行為となってしまうほどだった。彼の性格を知った家族はルドラクシャ(首飾り)を授けて、バラモンとしての行動と正義を諭す。DJはそのお守りがあるときは激しい気持ちを抑えていた。
 親戚の結婚式でDJ一家はケータリングサービスをおこなっていたある日、ずっと一緒に働いていたおじさんがこのイベントを最後に引退するということを知った。おじさんのこれからの生活を考え、そっとまとまったお金を渡す。しかしその直後におじさんは自殺をしてしまう。原因は悪質な不動産売買詐欺にかかって資産を全て失ったためだった。DJはルドラクシャを首から外す、彼の裏の顔が炸裂する。
[ポイント]
・痛快アクションラブコメ映画です!!もしかしたら、宗教的なモチーフなどを通じてもっと含みや意味があるのかもしれませんが、わたしがまだまだインドには無知なもので悪しからず…(^^;
・主人公は正義の暗殺者バラモン、ルドラクシャが怒れる心を抑えるアイテム。これを外すと裏の顔DJになるという変身もので二面性がコミカルに切り替わって大変楽しいです。裏の顔が出たときは黒スーツに黒タイ、黒シャツでビシバシキメまくりでまさにStylish Star!
・ヒロインが色んな意味で濃いです。プージャ、それでいいの?とつい問いただしたくなるくらいで。特に前半はあの手この手の色仕掛けでDJを翻弄する、かなり自分の価値観中心のお嬢さん…コメディなので笑える。けどギリギリ(苦笑)。しかし後半はすっかりDJに夢中、そんな極端な変わり身がまた楽しいです。
・ストーリーの中心には本当にあった不動産売買詐欺事件があるので、演出であっちこっち行くけど一応ブレない。悪役もみんな徹底してコメディなのでつい演出に目を奪われがちですが、はいダイジョウブです。
・一番の推しポイントはアクションシーンですね!テルグ映画らしい徹底したボカスカシーンになっています。たまに殴打シーンが酷すぎるからかボカシが入るんですけど次のシーンではボカシは消えていたりしてw。

<ルドラクシャとは>※Ratnaさんより
菩提樹の実。ルドラ神の目(シヴァの目)という意味で最高のルドラクシャは溝が21個ある、一般的なものは5~14個で数で意味が変わる。

■The Great Indian Kitchen/グレート・インディアン・キッチン 2021年(IMW2021)マラヤーラム

監督 ジヨー・ベービ
出演:ニミシャ・サジャヤン
   スラージ・ヴェニャーラムード(ジャパン・ロボット)
[あらすじ]
ケーララ州北部のカリカットの町で、高位カーストの男女がお見合いで結婚する。伝統的な結婚式が行われ、妻は夫の家に入る。台所仕事が始まると妻は驚く。まず夫と義理の父は当たり前のように先に食事をする。彼らの食事後のテーブルは食べかすが散らかり、食事の皿を置く場所もない。その汚いテーブルに慣れた様子で義理の母は彼女に座るように促す。
[ポイント]
・家父長制とミソジニー問題を扱った作品、ライターの及川夕子さんFRaUでこの作品を取り上げて話題になりました(「洗濯機は使うな、女性の食事は男性の後…インド中流家庭にはびこる「驚愕の男女格差」)。
・IMWさんがnote.にトリヴィアをまとめているので、このトリヴィアは読んだほうがよいです。できれば見る前に、もちろん見た後でもOK。作品の理解度が深まります。『グレート・インディアン・キッチン』作品トリヴィア/ インディアンムービーウィーク2021

・ほぼストーリーはなく、そのためよけいにストレートです。男性側は一切の生活リズムを変えず、ただ妻の毎日が圧迫されていきます。朝晩の食事は常に炊き立てのライス、焼き立てのチャパティ、女性陣は男性陣が食事をしている間はずっと立ちっぱなしで台所とテーブルを往復し続けます。またライスは鍋で炊け、ミキサーは使うな、洗濯は手洗いしろ、と伝統を押し付けてきますがこれらはすべて自分では一切の家事をしない男性からの指示。
・生理中の女性の扱い、穢れの問題も出てきます。彼女は生理の間、1週間個室に閉じ込められることになります。この時は夫側の叔母、旧世代の女性も出てきて彼女は完全に孤立します。
・こういった日々を描き出すことで伝統に抑圧された現代女性の人権問題をあぶりだしています。
・映画的には主人公はそれなりの形に落ち着きますが、個人の努力に委ねてはいけない問題だと思いました。
・正直、この夫役を心底嫌いになってしまいましたが(苦笑)…実は「ジャパン・ロボット」のおじいちゃんをやった人でした。こちらも癖のある面白いマラヤーラム映画です。


■やはり

 グレート・インディアン・キッチンのお話が最もいろんなコメントを聞けたと思います。現実をリアルに描き出し問題点を提示するというスタイルはマラヤーラム映画の特徴なのかもしれません。タミル映画はエンタメ要素もしっかり取り入れつつ問題提起+解決策も提示するという形が多いかな、と。というかVijayさんの映画ってほんとにメッセージがはっきりしているかつ面白いですよね!わかります、yukariさん、takakoさん!ちなみにわたしは割とマラヤーラム映画のスタイル、好きですw
 このあとの広瀬さんのLINEのオープンチャット(「インドの衝撃」で検索)でもグレート・インディアン・キッチンについてのやりとりが盛り上がりました。いろんな形でインド映画のすそ野が広がってくれたらなあと思います。そしたら全作品円盤化も夢じゃない!!!!

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