23-24 CL準決勝レアル・マドリード対バイエルン・ミュンヘン 2ndLeg
1stLegを2-2の引き分けで終えた両チーム。劇的な試合の基盤となった両チームのハイレベルな戦術の応酬を振り返ります。
・前半配置
・レアルはカルバハルが出場停止からの復帰
・レアルの前線は、ヴィニシウスとロドリゴで、ベリンガムは2列目
・バイエルンは1stLegから3枚替えて試合に臨む
・デリフトは怪我からの復帰明け、1stLegで後半から違いをつくったラファエルゲレイロは故障によりメンバー外
・1stLegでルーカスバスケス相手に優位性を保ち続けたムシアラはトップ下での出場
・両チームの守備時4-4-2と攻撃時のアプローチの違い
1stLeg同様に、両チーム基本は4-4-2での守備を行うが、この試合はレアルが立ちあがりから高い位置でのプレスを積極的に行い、主導権を握る。
バイエルンは、ゾーン1でのビルドアップは形を変えずに4-2-3-1で行おうとするが、レアルのプレスにハマり主導権をレアルに奪われてしまう。
・レアルボール保持時
レアルはいつもの左重心、クロースがディフェンスラインに落ちる形のビルドアップでバイエルンの4-4-2のブロックの外側から組み立てを行う。
ベリンガムやヴィニシウスがライン間でボールを受ける動きと、カルバハルやバルベルデが開いて受ける形の2つの選択肢を晒しながらバイエルン守備に負担をかける。
クロースに対してサネがチェックに来ることが何度かあったが、ボールを出しながらナチョと位置を入れ替えたりしてサネのチェックを躱す。
・バイエルンボール保持時
主導権を握られていたバイエルンだが、ベリンガムの背後のスペースを使った展開で何度か効果的な攻撃を行うことができていた。
レアルのミスによりゾーン2以降でボールを奪取した場合、レアルはディフェンスのブロックを優先的に作るため、バイエルンもボール保持が可能になる。
4-4-2のブロックをキミッヒ、ライマー、ムシアラ、パブロビッチが中心となって攻略を目指す。
立ち上がりから両チームいい形のクロスや折り返しのボールがあり、得点のにおいがした前半の両チーム。
両チーム右サイドバックのキミッヒ、カルバハルが立ちあがりから存在感を出します。
27分にニャブリが不運な負傷交代もあり、バイエルンは予定外のメンバーチェンジを余儀なくされます。
試合はレアル主導で進むが、バイエルンもシュートこそ2本しかなかったもののレアル守備ブロックのウィークポイントであるベリンガムの背後のスペースを狙います。
前半はスコアレスで終了します。
・後半
後半配置
負傷交代のニャブリ以外、両チームメンバーの変更はなし。
・後半の両チームのアプローチ変更
レアルは、前半からデュエルで常に優位性を保てているヴィニシウス対キミッヒの局面を重点的に狙う。
レアルのセットする守備時は、前半と同じ4-4-2で、前線にはヴィニシウスとロドリゴを置くが、攻撃の局面ではヴィニシウスをはっきり左サイドに置き、キミッヒ相手に仕掛けさせる。
バイエルンは、守り方は前半と同様だがボール保持時の形を前半何度かいい形を作ったようにキミッヒを1列あげる。
サネが開いたらキミッヒは中にポジションを取り、サネが中に入ったらキミッヒがサイドの高い位置をとる。
・少ないチャンスながら流れが一瞬傾く
キミッヒが高い位置をとることでムシアラの自由度が増し、局地的な数的優位を作ることが可能になる。
この攻撃はデイビスが左足でシンプルなクロスを上げる。コーナーキックになり防がれるが、この直後のカウンターから得点が生まれる。
レアルが前がかりになったところでロドリゴがボールをロスト。ロングカウンターからケインが左サイドのデイビスへロングボール。
デイビスとリュディガーの1対1の局面が訪れる。デイビスは中の様子を窺ったため、利き足の左を消しながらの対応のリュディガー。
この試合ほとんど右足でのキックを見せなかったデイビスがエリア内へ入ったところから右へカットイン。
左足を警戒していたリュディガーはついていけず、一瞬の時間ができたデイビスが右足を振り抜き、逆足のシュートとは思えない強烈なシュートがゴールのファーサイドへ突き刺さった。
・失点後も落ち着いているレアル
失点直後、2枚替えをして運動量を上げるレアル。クロース、チュアメニに代えてモドリッチ、カマヴィンガを投入。
70分にはコーナーキックからネットを揺らすが、その前にファールがあったとして得点には至らない。
レアルは先制こそされたものの試合を通して優位性を保っていたため、失点直後もアプローチを大きく変えずバイエルンを押し込む。
バイエルンがキムミンジェを投入し守備固めに入りつつ、マズラウィを右に配置しヴィニシウスへの守備対応を強化する。
・1点を守り切る選択と逆点を狙う選択
80分に入り、レアルはバルベルデ、ロドリゴに代えてブラヒムディアス、ホセルを投入しアタッカーを増やす。
バイエルンは、ケイン、ムシアラに代えてミュラー、チュポモティングを投入しプレスバックによる守備貢献を期待する。
バイエルンの交代直後、パブロビッチがカウンターの流れから足を攣ってしまうアクシデントに見舞われる。
前述の交代により交代機会の3回をすべて使いきってしまっているバイエルンは選手を代えられず、パブロビッチの回復まで1人少ない状況でのプレーを強いられる。
1人中盤がいない影響により、マズラウィとキミッヒでヴィニシウスを監視することができなくなってしまう。
縦を突破されることを警戒したキミッヒは距離をとって対応するが、ヴィニシウスはカットインからのシュートを放つ。
キーパーのノイアーの正面に来たボールは無回転で落ち、手前でバウンドしハーフバウンドになりノイアーの予測より少し跳ね上がりファンブルしてしまう。
ホセルがシュートに対して詰めていて、そのファンブルを見逃さずにこぼれ球を押し込みレアルが同点に追いつく。
土壇場で追いついたレアルは、ホームでのサポーターのボルテージも上がり、完全なイケイケムードに。
90分でコーナーキックを獲得したレアルは、一度は中の選手にボールが合わなかったものの、ヴィニシウスからの折り返しを混戦の中収めたナチョがエリア内で浮いていたリュディガーへパス。
対角にいたホセルをマークしていたキムミンジェがディフェンスラインを上げるのが遅く、オンサイドでボールを受けたリュディガーが中へ折り返しホセルが決め切り劇的な逆転。
追加タイムの90分+12分には、バイエルンがゴールネットを揺らすがオフサイドディレイを審判が取らず、笛を吹いてしまったことによりゴールは取り消しになってしまう。
準決勝の大事な局面で審判側に致命的なミスが出てバイエルンの大チャンスが不発に終わってしまう。(映像を見た感じではオフサイドではなかった)
主審が副審のオフサイドフラッグの旗が上がったのを見て笛を吹いてしまったことにより、レアルの選手がプレーを止めたため、VARの判定の対象にならなかった。
決定的な反撃もむなしく、レアルが逃げ切り決勝進出を決めた。
・総括
1stLegを踏まえて両チームの修正に見ごたえがある試合だった。
レアルのクロースからの球出しをある程度甘受し、後ろ向きでの守備をしないようにセットしたバイエルンと、1対1の所で優位に立ったヴィニシウス対キミッヒの局面を効果的に活用したレアル。
スタッツを振り返ると、ヴィニシウスがドリブル成功数7回と圧倒的な成績を残している。(次点はデイビスとロドリゴの2回)
ゴール期待値もレアル:2.95に対し、バイエルン:0.35とスタッツ上は圧倒していたが、先制し88分までリードしていたバイエルンの試合運びの上手さを実感したが、80分を過ぎてもどこか冷静さがあったレアルの強かさ、そして逆転しきる底力を痛感した。
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