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#2 僧職系登山男子と行く八ヶ岳縦走・権現岳

山で出会う神さま、仏さまを紹介する「山で出会う神と仏と」。
#2は権現岳、
「僧職系登山男子と行く八ヶ岳縦走」です。

僧職系登山男子の見る風景を皆さまと共有しようと思い、
山行記録として書きました。

今回から3回に分けて、八ヶ岳で出会う仏さまを紹介していきます。
実際に行った南八ヶ岳縦走から、
私と一緒に山を歩いているような気分でお読みいただければ幸いです。

ルートと行程

まずは机上登山。
今回の予定は南八ヶ岳縦走。観音平から入って、編笠山・権現岳からキレットを経て赤岳・横岳・硫黄岳を縦走して夏沢峠から桜平に下山するという行程です。
八ヶ岳の主稜線。森林限界を超えた縦走路が続く絶景ルートです。反面、稜線上が続くので、天候の悪化には要注意。核心部はやはりキレット、特に八ヶ岳主峰の赤岳への登り。
その時の予定では、初日は青年小屋でテント泊、2日目は夏沢鉱泉泊(山友と合流する予定でした。)

八ヶ岳1日目地図

1日目 観音平~青年小屋

初日は青年小屋まで。コースタイムで3時間半ほど。
急ぐ必要もないので、朝ごはんを食べてからぼちぼち出発しました。
久しぶりのテント泊装備でペースが上がりませんでした。
ゆっくりではありましたが、編笠山を経てお昼過ぎには青年小屋到着。
まさかのテント一張、私だけ。
貸切でした。

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本を読んだり、ウトウトしたりしながら、過ごします。
普段お寺にいると何かとせわしないので、こういう山の時間が好きです。
(この日は青年小屋が営業していませんでした。ホントに一人で、ちょっと人恋しくなりました。17時くらいにソロの方が到着されたので、嬉しくて話し込んでしまいました。)

さて、この日。
お葬式の連絡がありました。
明日中には下山しないと間に合いません。
僧侶にとってお葬式を務めるのは何より大切なこと。
楽しい縦走気分が吹き飛びまして、明日どうやって下山するか一人会議。

結果、出発前から想定していた赤岳から美濃戸へ下山することにしました。
少しでも縦走気分を味わいたくて、
阿弥陀岳から御小屋尾根を経て下山することにしました。

八ヶ岳信仰の中心地・権現岳

二日目。
長丁場になりますので、暗い中出発。
最初の山が権現岳でした。

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古くから八ヶ岳信仰の中心であったのが、権現岳。
現代の私たちはどうしても主峰の赤岳を中心に考えてしまいますが、赤岳開山は江戸時代。(この辺はまた次回)
権現岳からは鎌倉時代の出土品が発見されていますから、
権現岳が昔から信仰の対象であったことがわかります。

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「権現」という言葉を山でよく見ると思います。
「権(か)りに現(あらわ)る」と読み下します。
仏教の仏さまが日本の皆さまを救うために、日本の神さまの姿として現れた存在、つまり神さまの姿をした仏さま
(このあたりの詳しい話は、別の連載でお話したいと思います。)

どんな権現さまか、
記述があるものが見つからず、はっきりしません。
そもそも八ヶ岳信仰に関する参考文献や先行研究があまりないのです。
八ヶ獄権現と書いてあるものがあります。
他の山でいうと、立山は立山大権現・白山は白山大権現ですから、
八ヶ岳全体が権現さまという捉え方。
富士見町歴史民俗資料館に展示されていた、権現岳山頂直下にある檜峰神社という祠から出土した鏡の説明に「八ヶ岳蔵王大権現」と書いてありました。

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蔵王権現は、奈良県の吉野、金峯山寺にお祀りされている金剛蔵王権現。修験道の開祖である役行者が感得した権現さまで修験道の本尊とされます。
山で信仰される仏さまです。
立山や白山から考えると、個々に神さま仏さまがいらっしゃっても、
立山大権現、白山大権現と総体で呼ばれます。
八ヶ岳もまた、八ヶ岳全体が仏さまであり神さま。
僧職系登山男子的には、立山や白山にならって「八ヶ獄大権現」ってカッコイイ・・・なんて思います。

いずれにせよ、古くから信仰の山であった権現岳。
古くは女人禁制とされていたそうです。

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富士見町歴史民俗資料館に展示されている古地図。今の権現岳は薬師岳と書かれています。地図にかかれている権現岳は今は無名。現在は名前の付いてないピークもあり、名前が移動したり変わったりがあるのでしょうね。
(写真掲載は許可をいただきました。)

権現岳を超えてキレットへ

このとき、権現岳もこれから行くキレットも初めてでした。
学生時代の八ヶ岳縦走では、天狗岳から硫黄岳、赤岳、阿弥陀岳というルートだったので、赤岳以南の山は行きませんでした。
今回の山行、テント泊装備で八ヶ岳のキレットを超えるというのが一つの目的。
学生時代は30kg~40kgの荷物を背負っていたものですが、
今となっては15kgの荷物でさえ、なんでこんなに重いのかと思います・・・。
それでは次回、
そんな僧職系登山男子の八ヶ岳キレット越えです。
どうぞお楽しみに。

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