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仏と砂をめぐる物語#2「砂を探す」残雪期の甲武信ヶ岳を目指す

仏と砂をめぐる物語 Youtube動画を配信しました。


前回、この動画の背景と思いをお話いたしました。
今回は「砂」を探して、千曲川源流をめざします。

信濃川・千曲川とは

信濃川という川があります。
日本で最も長い川として有名です。
この「信濃川」は、長野県に水源地がありますが、長野県に存在しないことをご存知でしょうか。

新潟県側から見て信濃の国から流れてくるので「信濃川」。
長野県側では「千曲川」です。

その名には諸説ありますが、幾重にも曲がっているからというのが一説。
島崎藤村の「千曲川旅情の歌」など、長野県を象徴するような川かなぁと思いますが、
私の住んでいる長野県中部に流れている川は、同じ信濃川水系でも上高地から流れる「梓川」や中央アルプスから流れる「奈良井川」など。
同じ川の流れではありますが、千曲川はあまり馴染みがありません。

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私のお寺の近くを流れる奈良井川は、中央アルプスに源流があります。
茶臼山という木曽駒ヶ岳の北側の山の麓が源流です。

さて、千曲川の源流は甲武信ヶ岳山頂下にあります。
高野山での土砂加持法会に持っていくため、採取地選定の下調べに向かいました。
長野県川上村にある毛木平登山口に向かいます。
その名の通り、甲州(山梨県)・武州(埼玉県)との県境にありますので、
長野県でも最も東のエリア。
ここまでが中々に遠い。
私のところからは、一度山梨の小淵沢に出てまた長野県に入る形です。

この毛木平から千曲川源流の流れに沿って登っていきます。
コースタイムは水源地まで3時間、山頂まではさらに1時間弱。往復およそ15キロ、累積標高差1200m前後の行程です。
ほとんどが樹林帯であり、展望が開けるのは山頂直下だけ。
私は好きなルートなのですが、山友達からは「えーっ」て言われることが多いように思います・・・。

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その魅力は「音」です。
前回のnoteでお話したとおり、私はこのルートの水の音推し。
大きな流れであったのが、だんだんと小さな流れとなっていき、最後はほんの一滴になります。
その一滴は、信濃川という大河の一滴となり、日本海に注ぐ。
その水の音を聞きながら歩く、素晴らしいこのルート。
未踏の方は是非、歩いてみていただきたいです。

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さて、今回の目的は水源地で調査し(記録用の写真を撮影し)、
安全かつ環境省の許可をいただけそうな採取候補地を見つけることです。

※2020年3月にこの採集調査のために登りました。そのときは、視察と調査だけで全く動画を撮影しておりませんでしたので、動画撮影のために2021年3月に再度登ってきました。

千曲川水源地地標点へ

朝6時。
水源地を目指して歩き始めました。
歩きはじめてしばらくのところに大山祇大神(オオヤマツミノカミ)のお社。山の神として祀られる神さま。
道中の安全を祈願し、ご法楽を捧げます。
ご法楽とは、お経を上げて神仏に楽しんでいただくこと。
仏教の教理を説くお経は、神さまもそうか、そうかと言って喜ぶとされています。
私が修行していた高野山では、神前でも般若心経をお唱えします。

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この日。
快晴ではあったのですが、前日に降雪があった様子。
誰も登っていない日でしたので、トレースは一切ありません。
おまけに所々の吹き溜まりでは膝上ラッセル。
そんな中、「わかん」が必要だなぁと思いながら「わかん」を忘れるという体たらく。
目的は水源地でしたので、時間が押すようなら山頂へは行かずに下山する予定でした。
ところが、ほぼ予定通りに水源地に到着できまして、
写真を撮ったり水源の調査を行いました。

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この場所で採取を行えれば良いのですが、
登山をほとんどしてない青年僧の仲間たちをここまで連れてこれないだろうという点と、おそらく環境省からの許可が出ないだろうという点から、
ちょっと無理かなぁという印象。
とにかく、本日の目的の一つを達成したので、
この先どうするか考えます。
結果、時間的には余裕があるので、山頂を目指すことにしました。

水源地地標からは樹林帯の急登。斜度も距離もそんなにないのですが、結構しんどい。そして、稜線から山頂までが大変でした。信州側の斜面をトラバースしていくのですが、ここがものすごい吹き溜まり。
全然進めなくて、時間も体力も使いました。小一時間のコースタイムでしたが、1時間半くらいかかってやっと山頂に到着。
なんと快晴の絶景。
富士山もきれいに見えます。
がんばって登ってきてよかった!!
しかし、押しているのであまりゆっくりせずに下山。
最終的にはほぼ予定通りで下山しました。

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この甲武信ヶ岳、毛木平からのコース。
同じコースを歩いた方は「長い!」とおっしゃる事が多いと思うのですが、
やっぱり同じ感想で「長い!」と思いました笑
(好きなコースではありますが。)
歩いた経験のある方、いかがでしょうか?
また、これから歩く方は是非、感想聞かせてください。
ちなみに、ある山小屋でご一緒した方にこの話をしたら
「98%樹林帯でしょ!樹林帯キライ!!」とおっしゃっていました・・・。笑

さて下山後、もう一つの目的である採取候補地を探しました。
地形図を見ると、登山口近くに降りていけそうな砂礫地がありますので、
ここで採取を計画することにしました。

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採取の許可が降りたら、
青年僧の仲間たちと一緒にこの場所で、
お経を上げ、祈りを捧げながら採取の作法を執り行う。
このときはまだ、そのように考えていました。

それでは次回、この続きをお話したいと思います。
砂を採取し、砂に祈り、そして砂を還す旅です。
是非最後まで、砂を還し祈りを捧げるところをご一緒しましょう。

小雪童

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