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鳳凰三山
オベリスク挑戦を終え、17時半から夕食。鳳凰山の象徴が尖塔の巨岩オベリスクなら、鳳凰小屋の象徴はカレー。20代の若い登山者が多い今日は、ちょっと辛めに。これがクセになり、3杯を軽く平らげる。
明日のお弁当を用意してくれているアオトさんと話し込み、歯を磨いて19時前には就寝。こんな早寝は2016年のエヴェレスト以来かもしれない。
雑魚寝とイビキの合唱の中、夜も明けぬ3時30分に起床。高山病はそれほどない。水を飲み、腹式呼吸で酸素を取り込んだおかげだ。エヴェレストでの高山病の経験は今も生きている。
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美味しい山菜のお弁当を頂いたあと、歯を磨き出発。日の出は4時55分と聞いていたのに、4時35分になってしまった。すでに空は青白くなっている。オベリスクへと向かうのに、ヘッドランプは要らず、ウインドブレーカーなしでも暖かい。
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5時、稜線で日の出を迎える。雪の斜面がモルゲンロートに染まり、観音岳の肩にも太陽が注ぐ。どの角度からも気品に溢れ、さらに神々しさを増していた。太陽と競争するように地蔵岳の山頂を目指し、朝日に祝福されるオベリスクの雄姿を焼き付ける。
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前日、アオトさんから教えて頂いた赤抜頭の沢からオベリスクとご来光のツーショットを撮影。次に来るときは、日が昇る瞬間を捉えたい。
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すぐさま観音岳へ。花崗岩の白砂と雪が交互に現れる。鳳凰小屋がツイートしてくれたように、軽アイゼンが正解だった。 やはり登山は事前の情報収拾が物を言う。
山頂へ続くビクトリーロードに入ると、観音岳がまるで白い羽を広げた鳳凰に見える。この瞬間、鳳凰山の真実を捉えた。
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鳳凰(法王)の山名論争に決着はないが、観音岳こそが鳳凰山であると確信し、しばし喜びに震えた。山頂からは富士山をはじめ、甲斐駒、北岳、間ノ岳など、南アルプスのオールスターが勢揃い。
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おまけに、地平線と雲の間にブルーの筋ができる。「天空の水平線」と名付けたい。
撮影タイムを終えると、最後の舞台・薬師岳へ。富士山を眼前に進む尾根は冬山の重装備など忘れさせてくれる。まさにここは、ゼログラビティである。
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7時、薬師岳に到着。雪の北岳バットレスと真正面に対面。贅沢な眺望。御座石と富士山の威容が迫ってくる。
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やはり鳳凰山は3座の頂を踏んでこそ。名残惜しいが、12時30分のバスの時刻が迫っている。急いで近道を使い、鳳凰小屋へ。小屋の主人の倖一さん、アオトさんに挨拶をし、御座石ルートを下山。
足の皮がずるむけ、膝の痛みを抱くように下りる。登りを3時間20分で駆けたのが嘘のように、3時間かかって御座石鉱泉へ到着。ようやくの思いで、温泉で汗を流すことができた。
生き返ったあと、バスで韮崎駅へ行き、そのまま甲府へ。連休の大渋滞の中、バスタ新宿へと向かう。特急を使えば数時間は早く着いた。だが、この時間が愛おしい。クライマーは山の残照を背負って下りる。心は今も、あの鳳凰三山の稜線を歩いている。
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