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谷の底
早朝の高尾山は気持ちが良い
来て良かった〜
高尾山最高!!
...そういった話をできたら良かったのですが。最近私生活がどうもうまくいかないので。
というのも、仕事が二つ続けて飛んだり、会う予定の人と折悪く会えなかったり。注文した料理が忘れられていたり。
そういった不運の積み重ね、この陰々滅々とした、じめじめと暗い気持ちを抱えたままでは週末まで生きられぬと思い、山に向かいました。
午前4時半の目覚ましで起床、シャワーを浴びて、握り飯を用意して駅に向かいます。
本日はオーディブルで太宰治の斜陽を聞きながら。
早朝の山登りというのは何かしら理由がなければ行かれないはずですが、電車にはそこそこの人が乗っていました。みんな早起きなのかしら。
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駅前の時点で瑞々しい自然の匂いがします。深呼吸すると心が軽くなるような清々しい気分になります。
登山口へ向かいます。
前日雨が酷かったので沢筋の道は避け、六号路の稲荷山方面から登る事に決めました。軽くストレッチなどをして向かいます。
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同じ時間帯で六号路から行く人は少なく、ほぼ独りの道行きです。
今日はそのままイヤホンをして斜陽の続きを聴きながらの登っていきます。
外音取り込みにして、周りの音も聴きながら。
後ろにトレランや歩くのが速い人が来たらサッと道を譲れるように。
森の中はひんやりとしており、日が当たる地面からはそこかしこに湯気のような地霧がゆらゆら見えました。
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稲荷山、展望台までがやや登りが辛い印象があります。今年登るのは2回目かしら? ほてほてとゆっくり登っていきます。
登り始めは体が重く苦しいのですが、だんだんと体も目覚め、山モードになって集中していきます。
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このコース、昔はほぼ土の上を歩いたような記憶があるのですが、登山道の整備を経て、現在はヤケクソ気味に木道が作られてる箇所もあります。思うところが無い訳ではないですが。これらにきっと罪は無い。
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斜陽は中盤から後半へ、直治が帰ってきて、お母様の体調がどんどん悪くなっていきます。
この辺りまでが特に好き。
ネットで定期的に目に入る遭難者の記事を読んだり、生還した後に戒めとして綴られた坦々とした語り口の記録などを読むと、暗い谷の底で身動きが取れない遭難者の姿が頭を過ります。
高尾山の年間の遭難件数は100件以上。木の根につまずいての転倒や滑落から最悪死に至る遭難へとつながります。
誰にでも忘れた時に、ふいにまさかという瞬間は訪れるのです。特別な人間などいません、身近なところにも死の気配は存在します。
散歩するように歩いてる山でも時折見える暗い静かな森や谷の底の事を思うと、自分もいつかそうなってしまうのではないかと。
そんな事に思いを巡らせていると、地上での嫌な事などは忘れ、生きて帰る事が優先されるのかもしれません。
実際は無酸素運動糖質代謝有酸素運動脂質代謝など念仏のように心の中で唱えていました。脂肪を燃やせ。
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さて山頂です。おつかれ山でした。
まだ8時前です。おにぎりを食べて下山を開始します。
9時には下山していたいので、後半は普通にテクテクと帰ることにします。
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人が居ない
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ギロチン ギロチン シュルシュルシュっと、
あっと言うまに下山。
荒療治ではありますが、私の場合こうやって山に登ってやれば前向きになれます。
後ろ向きな登山やネガティブからスタートする登山があってもいいじゃない。
一号路での下山時は何人も登ってくる方とすれ違い、挨拶を交わしました。
麓の有喜堂で饅頭を買い帰路に着きます。この後の都合で温泉はスキップ。残念。
行きに抱えていた感情は、帰りの電車ではまぁ仕方ないかーと思えるくらいには気が晴れていました。
斜陽は帰りの電車で聴き終わりました。
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