見出し画像

自社通関のすすめ③ 自社通関のメリット&デメリットを大公開

皆さん、こんにちは。
自社通関のすすめ3回目は「自社通関のメリット、デメリット」についてお話していきます。実際に自社通関体制を立ち上げ、7年近く運用し、その間およそ8万申告の処理を指揮してきた「経験者」が語ります。

自社通関のメリット①「通関委託料がゼロ」

通関業者へ委託した場合、1申告:5900円かかるのが一般的です。(現在は通関料の自由化がされていますが、自由化前の名残で大額5900円が一般的かなと思います。)これを委託せずに自ら行うわけですから、通関委託料はゼロになります。ですので、年間100件の輸出を行う会社であれば「年59万円のキャッシュアウト削減」、年間1万件の輸出を行う会社であれば「年5900万円のキャッシュアウト削減」が自社通関後は毎年その恩恵を受けることができます。
自社通関は通関業者とは違って「通関士は不要」です。関税法や実際の手続きを押さえる必要がありますが、そこさえしっかり対応できれば自社で行うことは可能です。
「自社で行えば、その分運用コストがかかるのでは?」と思う方もいるかと思いますが、システム化やエクセルを使った効率化を図れば、正しくかつスピーディーな通関体制を構築することができます。実際に1件あたり10分もかからない時間で通関は完了します。社員の時間単価から考えれば、自社で行うコストメリットはかなり大きいと思います。

自社通関のメリット②「空港への直接搬入も可能」

自ら通関を行って通関委託料をゼロにするだけでも、十分自社通関の効果はありますが、さらに自社通関のメリットを生み出すためにAEO輸出者に与えられる「どこでも通関が行える」ベネフィットを活かして、フォワーダーの上屋に立ち寄らず、直接、空港に搬入することをオススメしています。

ここには多くのメリットが隠れています。


まずは「フォワーダーの上屋利用料、作業委託料がゼロになる」ということ。
直接搬入するには、あらかじめ自社で輸出に必要な作業をすべて行う必要があります。とは言っても、実際にはエアカーゴラベルを貼付けるぐらいで、元々、荷主は出荷時にケースマークを貼るわけなので、似た作業を行うと思えばそう大変なことではありません。フォワーダーから上屋施設料や手倉荷役料として「1kgあたり〇〇円、ミニマム〇〇円」で請求されていると思いますが、それがごっそりなくなるわけです。

次に、直接搬入できるということは「生産に余裕が生まれる or より短い時間で顧客に届けることができる」ということになります。通常は、フォワーダーの作業にあわせて工場から出荷しなければいけないので、実際にはフライトの前々日に工場出荷するケースが多いのではないかなと思います。それが直接、空港に搬入することができれば「フライトの3時間前までに搬入すれば良い(搬入時間については事前に調整が必要)」ということになり、つまりはフォワーダーの上屋に立ち寄り、作業を行っていた時間を「生産に充てる」こともできますし、今まで通り生産して輸送が短くなった分「到着を早める」ことに使うこともできるということになります。
繁忙期であれば、出荷にあわせて残業を行い対応したり、注文をお断りすることもあるでしょう。それが自社通関を行うことで、工場出荷日を数日延ばすことができれば、残業することも、注文をお断るすることも減らすことができるということになります。このメリットに気づいていないメーカーは多いと思います。他にもメリットはあるのですが、今日は少し書きすぎた感じもするので、ここまでにしておきましょう。

自社通関のメリット③「製品説明が不要」

これはメーカーの出荷担当者の悩みだと思いますが、通関を委託すると、通関業者から「この製品は何ですか?」「材質は何ですか?」「該非判定書はありますか?非該当証明ください」とたくさんの問い合わせを受けます。これは通関士が輸出申告を正しく行うために必要な作業なのですが、「通関士 ⇔ フォワーダーの営業 ⇔ メーカーの出荷担当者」という流れでやり取りされるので、荷主だけでなく、フォワーダーの営業の工数も、点数や申告件数に比例してかなりの時間がかかっているはずです。
自社通関を行えば、輸出する製品をよく理解している者が輸出申告を行うので、上記のようなやりとりがほぼ無くなります。これを私は「見えないコスト削減」と呼んでいますが、荷主によってはかなりの工数(コスト削減)につながるはずで、例えばこのやりとりに1日平均1時間かかっていたとすれば、荷主の工数だけでも1時間×20日×12ヵ月=240時間→約1か月分の工数を別のことにまわすことができるのです。

自社通関のメリット④「ノウハウがたまり、人が育つ」

これは「自社通関のススメ①」でもお話しましたが、委託し続ければ、この先ずっと委託し続けたままです。コストもかかり、社員の成長にもつながりません。これを自社で行うことで、最初は大変ですが、ノウハウがたまり、結果として人が育ち、会社が強くなります。これは実際に私がやってみて感じたことなので間違いないです。
ノウハウがたまり、人が育てば、色々なアイデアを発想できるようになったり、イレギュラーが発生したときに瞬発的な対応が自然とできる集団になっているはずです。これは数字では表すことができないメリットだと思います。

自社通関のデメリット「すべてが自社責任」

続いてデメリットを書いていきたいと思います。
それは「すべてが自社責任」。これにつきると思います。
なにが起きても自社の責任です。正しく通関が行われているか、貨物セキュリティは万全かなど、日々リスクマネジメントを行っていく必要があります。管理者にこの感覚や責任感がなければ、自社通関はやらないほうが良いか、その体制をよく練る必要があります。

自社通関で1番大変なのは「製品に10桁の税番をつけること」。これさえクリアできれば、あとは決められた手順にしたがって通関を行えば良いということになります。なので、輸出する製品が限られている企業や、自社通関の対象とする製品を絞って実施すれば、この問題は解決しやすく、自社通関導入のハードルはぐっと下がることになります。


他にもメリット、デメリットはあるのですが、あげるとキリがなく、かなりの長文となってきたので今日はこの辺にしておきたいと思います。少し専門的な用語やわかりにくい表現があったかもしれません。その点はご容赦頂ければと思います。

次回は「災害時の自社通関の威力」についてお話したいと思います。
長文にお付き合い頂き、ありがとうございました。

よろしければサポートにご協力お願い致します。 動画や記事作成費に利用させて頂きます。