映画2020年

年明けの酒の肴に今年も極私的映画BEST5を。
(例によって20年公開作品で劇場で観たもののみ。)

1.彼らは生きていた
https://www.youtube.com/watch?v=gelre9axeJ4

原題は" THEY SHALL NOT GROW OLD"。

英国の帝国戦争博物館に保存されていた膨大な第一次世界大戦中の記録映像やBBCに保管されていたインタビュー素材をあのLOTRのピータージャクソンが、再構築して1本のドキュメンタリーにした労作。戦前の映像て大概モノクロでカクカクした動きのイメージがあると思うんだけど、それをピータージャクソンが最新技術で(って言い方バカぽいすね)カラー化+24フレ化することで、フィルムの向こうの兵士たちが、当に「現在」に「実存」した一人一人として浮かび上がってくるのが本当に凄い。後方基地で長閑に戯れる少年兵士達、泥だらけの塹壕の中でティーカップに入った紅茶を啜る英国兵士…、が戦争が進むにつれていとも簡単に肉塊になっていく様は、痛烈に響くものがある。

そもそもこの世界初の「総力戦」に参加した英国の兵士の中には若い子が沢山年齢を偽って志願していたという事実に愕然とする。彼らは戦場がどんな場所か知らず、「行けば友達と一緒にサッカーができる」とか(下層階級の身ながら)「国の為に戦うという「高貴な」行為に参加できるなら」といったモチベーションで志願していた。種としての、集団としての危機間隔を麻痺させ得るウットリ甘美な高揚感てのは改めて極めて危険だな、と。職業柄の自戒も込めつつ、努めて冷静にいたいな、と強く思った。

彼らは生きていた。そう、彼らは年をとらなかったのである。

2. さよならテレビ
https://www.youtube.com/watch?v=PPyeYk-bciE&feature=youtu.be
https://sayonara-tv.jp/

 (「ヤクザと憲法」等で)定評ある東海テレビのドキュメンタリー班が視聴率伸び悩む自社のニュース番組を舞台にクルーの裏側の苦悩と衰退するテレビ業界に迫った「ドキュメンタリー」。己の人気に悩む男性アナ、「本当に撮りたい」ものと、数字やスポンサーの為に「しょうもない」ものを撮る日々とのギャップに折り合いとつけて淡々と仕事をする無頼派ディレクター、アイドルに会えるかも!といったクソみたいな動機で入ってくるコミュ障のドルオタ契約社員AD(こんな人材すら採らないといけない事情も…)。うわー、キツー、、、と思いつつ観ているとまた別のレイヤーで「テレビの怖さ」が浮かび上がってくる。。。

テレビマンって怖いわー、性格ホント悪いわーw(誉めてる)、って(改めて)思った秀逸な1作。

3.パラサイト 半地下の家族

マイフェイバリット俳優、ソン・ガンホのご尊顔をスクリーンで存分に拝することだけでも幸せなのだけど、テーマ設定、脚本、美術、撮影、音楽、編集そして勿論ソンガンホらの演技も噂通り全てが素晴らしかった。敢えて言えば、まとまりが良すぎて破綻が無さ過ぎたのが勿体無いなとすら贅沢にも思った。
しかしこれもまたよく言われることではあるけど、映画のポスターデザインって、その国のなんというか(民度ってな下品な言葉は使いたくないのですがなんというか)洗練度、成熟度を表すと思うんですが、この韓国本国のポスターは超カッコいいですね。それに比べ…(以下略)です。(勿論各国のデザイナーのレベルの差では当然無く、問題は別のところに…)

4. バクラウ 地図から消された村

ブラジルの荒野の中にポツンと在る鄙びた村に、祖母の葬儀の為に一人の女性が帰った来るところから話が始まる。始まるんだけど、あれ、このババア何?これはどんな話に転がるの?あれ?今なんか変なもの映ったぞ…、と「?」が広がる前半から一気に物語が走り出すクライマックス。こんな映画こそ観てたいぞ、と思わせる傑作。大好き。(事前情報極力調べずにどうぞ!)

5.スパイの妻
冒頭の変なカットからw、ただただうっとりと恍惚とした気分でスクリーンを見つめ続けた120分。東出くん、あの不穏さは凄い…。
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コロナ禍、それに伴う生活スタイルの変化もあってなかなかに観れてないのは言うまでもなく。銀座シネパトスでまた映画が観たい。

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