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カメラワークの悪いeSports観戦はつまらない

 Overwatchの話です。Valorantタグから記事を見つけた人はすいません。


・要点

 ・Overwatch Leagueはカメラに映ってないキルが多すぎる。
 ・Valorantはたくさん映ってる。当たり前だけど。
 ・「そういうゲームだからしょうがない」ってだけならいいんだけど、本当にそれだけだろうか?

 



 Overwatchのプロリーグ、「Overwatch League」を結構見てるけども、どうもここ最近はあまり面白くないと感じる

 Summer Showdownシーズンのメタ構成があまりにも固定されすぎているのも原因の一つかもしれないが、別に同じ構成ばかりだったら面白くないかというと、そういうもんでもないと思う。
 他のゲームでも、同じキャラばっかりでも面白かったり、そもそもキャラピックという概念がないゲームも多くある。
 (「eSports」と「メタ」と「面白さ」に関しては色々と考えられることもあるので、それは別の機会に記事にするとして。)

基本的にずっとこの構成。たまにアッシュ。

 
 んで、イマイチ面白くないと感じてしまう原因は、カメラワークにあるんじゃないかと思えてきた。

 リーグでずっと採用されているジャンカークイーンによるラッシュ構成は、とにかくわちゃわちゃして何が起こってるのかわかりにくい
 ジャンカークイーン、ルシオ、ブリギッテという耐久力と範囲ヒールを撒けるヒーローに、ゲンジ、ソジョーンという機動力があり逃げやすいDPSたちでは、交戦時にどのようにダメージを出して、どのように有利を広げて、どのようにキルが起こって、そのウェーブに勝ったのかが、非常にわかりにくい

 やはりOverwatchの花形として、画面はDPSヒーローたちの視点を捉えていることが多いが、この構成どうしのミラーではなかなかキルを取ることが難しい。
 アナのナノブーストもないので、ゲンジのアルティメットである龍撃剣を使用しても、なかなかキルが発生しないこともある。目の前のジャンカークイーンをせっせと斬っている。

 主にDPSの個人視点を見てもよくわからないので、右上のキルログの部分を眺めていることが多い気がする。これではあまり面白くないのも当然だ。

右上を見て、「3-1だからロンドン有利だ」と思う。うーん。

・集計

 そこで、「観戦のわかりにくさ」ってのを定量化するために、発生したキル・デスが画面にどれほど映っているのか?ってのを集計した。
 Overwatchは単純にキルだけでなく、いかにキルにつなげるかって部分も大切だと思うけども、そこは数値として計測できないので。

・分類

 1.一人称視点での該当プレイヤーのキル・デス
 2.一人称視点での画面内のキル・デス
 3.三人称視点・俯瞰視点で画面に映っているキル・デス
 4.画面に映っていないキル・デス

 簡単に言えば、1~3が画面に映っていて、4が画面に映っていないキル。
 1、3、4はそのままの意味。
 2は複数人でフォーカスしていて、視点のプレイヤー以外がキル(ファイナル・ブロウ)を取ったので、視点以外のプレイヤーがキルログに並んだシーン。 

今からCOLUGE(画面中央左の車の後ろにいるオレンジ色の名前)をキルするシーン。
画面はDANTEH視点でキルも映るが、キルログにはMERITが表示される。
こういうのを2.に分類。

 なにぶん画面がわちゃわちゃするので、あまり集計は正確でないし、漏れもあると思うけども。

・対象

 2022/09/10(日本時間) Winners Round 2 | @San Francisco Shock vs Houston @Outlaws | Summer Showdown Tournament | Day 2
 これの第一マップ・LIJIANG TOWERと、第二マップ・HOLLYWOOD。


・結果

 2マップのキル数合計:139キル

画面外キルが59%は多くないか?

 約60%のキルが画面に映っていないという結果に。もちろん試合によって異なるだろうし、サンプルは少なすぎるのだけども、第一マップと第二マップはそれぞれ59.09%と58.94%という、ほぼ同じ数値になった。


・Valorant

 Overwatchはゲーム性的に、そしてジャンカークイーンを中心としたラッシュ構成なので、多少はわかりにくくてもしょうがないかもしれない。

 ではValorantはどうだろう。先日行われたVALORANT Champions 2022 İstanbul - Groups Day5ZETAの試合。
 マップはHavenの前半だけ。

視点の該当プレイヤー71%。

 もちろんゲーム性が違うので単純に比較はできないけども、Valorantは一人称視点でも71%のキル・デスを画面に映すことができている。

 さて、この差を「ゲーム性の違い」で片付けて良いんだろうか?


 もう一度、Overwatchのデータを見ていただきたい。

 私が問題だと思っているのは、画面外のキルの多さもだが、2つ目と3つ目の項目、「一人称・画面内」と「三人称・俯瞰」があまりにも少ないことだ
 残党狩りのようにデスが明らかなシーンや、ゴール地点に飛び込んで時間稼ぎをする状況の俯瞰視点を含めても、この少なさだ。

 複数人でフォーカスするラッシュ、そして範囲ヒールをもつルシオとブリギッテがいる性質上、継続的にダメージとヒールが入り、誰がキル(ファイナル・ブロウ)を取るかは予測をしにくい。
 したがって、「一人称・該当プレイヤー」のキルが映らないのは仕方がないだろう。

 しかし、「一人称・画面内」と「三人称・俯瞰」がこれほど少ないというのは、キルが起こりそうな状況をカメラが把握できていないということだ。
 
 Overwatchではどの構成でもだが、特にジャンカークイーンのラッシュ構成では乱戦の中でフォーカスを合わせるのが重要だ。
 それなのに、キルが発生しないプレイヤーの視点ばかり映していて、フォーカスが合わさりデスしそうなプレイヤーを追うことができていない

 ジャンカークイーン、ルシオ、ブリギッテがキルログに並ぶことも多い構成だが、カメラが映すのはほとんどがDPSのゲンジやソジョーンだ
 ソジョーンをずっと映し続けているのに、そのウェーブでのキルログはDPS以外の3人だけだったというシーンもある。

 繰り返しているように、この構成はDPSがキルとってどうこうの問題ではない。
 ジャンカークイーンによるラッシュ(JOATs)は、コンテンダーズでもコーチをされたClank氏の記事が、日本語での唯一の解説だろうか。

 この解説にもあるように、ラッシュやカウンターという戦術が重要になってくるはずである
 どのように敵と当たるのか、どのスキルを使うのか、どのように逃げるのか、そのような立ち回りが重要なはずだ。

 しかし集計にも示したように、三人称・俯瞰視点でのキルがほとんど映っていない
 ルシオやブリギッテ、ゲンジの風切りからの近接攻撃というようなキルシーンは、一瞬の正確なエイムがどうこうではない。
 特にその3キャラは、一人称ではなく三人称や俯瞰視点のほうがどのようにキルしたかがわかりやすいはずだ。ルシオのウォールライドやブリギッテのバッシュでの移動、ゲンジの風切り等。

 しかし残念なことに、Overwatch Leagueのカメラは、一生懸命ゲンジやソジョーンの一人称視点を映し続けている

PROPERの龍撃剣を映しているが、ペイロードはゴールへ。カメラがC9してしまった。
右上のキルログ、LEPがCOLUGEをキルしたシーンはもちろん映っていない。

 構成や戦術によって、どのような要素が重要かは異なる。ウィンストンやレッキングボールのダイブにトレーサーが合わせるような戦術では、トレーサーの一人称視点によるキルを映すのが良いだろう。
 しかし、ジャンカークイーンによるラッシュは、そういうもんではないと思うのだが。


 Valorantで集計してた試合のワンシーン。

 設置されたスパイクにスモークをかぶせ、解除解除フェイクを入れながら交戦が続くシーン。
 ここでは画面右上にスパイクの様子を映しており、防衛側がどのように戦っていくのかが非常にわかりやすい。解除のフェイクを入れたり、時間がなくなったので解除を開始するような様子が別画面で、それもリアルタイムで映し出されている。

 これは、このシーンではスパイクまわりの状況が重要であり、このラウンドの勝敗に影響するからだ。
 全てのラウンドで同じようにスパイクを映しているわけではない。スパイクを設置してからの攻撃側の配置や防衛側のスキル・立ち回りを見て、スパイクを映す判断をしたのだろう
 私はValorantは全く詳しくないが、たぶんこれは正しいと思う。


 Overwatchはただでさえ分かりづらい。というか、見づらいゲームだ。画面内にこれだけ敵も味方もわちゃわちゃするFPSは珍しいと思う。だからこそ、良く見せることが重要だと思う。

 特に今のメタのラッシュ構成は、チーム全体としてどのように仕掛けるのか、どのように引いてカウンターするのかが、勝負を分けるポイントなはず。(ソジョーンのまぐれワンピックもあるけど。)

 そういう部分で勝負が決まるだろうに、そういう部分を映さないのでは、楽しみが半減してしまうのも当然だ。集計どおりなら59%減。

 そしてそれが、「ゲームや構成的に、仕方がない」から映らないのではなく、「どのような戦術・要素が、この構成のマッチにおいて重要なのかがわかってない」から映らないのだったら、それはとても悲しいことだ

 そしてそれが、今後のヒーローの調整や、プレイヤーたちの理解にも及ぶ可能性があるかもしれない。
 もちろんLeagueのカメラ担当とゲームの調整担当は別の人間だろうが、ゲームを一生懸命調整しても、カメラ担当は何が重要かわかっていないかもしれない。
 Leagueのカメラ担当でさえわからないのならば、一般プレイヤーはもっとわからない。

 JOATs構成は、集団でのラッシュやカウンターが重要な構成のはずだ。しかし、カメラ担当はひたすらDPSの一人称視点を映し、視聴者・一般プレイヤーはそれを見る。
 これでは、Overwatchというゲームの調整も、競技シーンのレベルも、良くなっていくとはとても思えない。

 上述のValorantのような映し方があれば、「そうか、この状況ではスモークを投げて解除フェイクを入れながら戦うのがいいんだな」と、Valorantをプレイしていない私でもわかる。
 しかしOverwatch Leagueの映し方だと、「DPSが頑張ってキルとりましょう」あるいは「DPSが頑張ってもキルが発生しない」にしかならない。
 他のプレイヤーは何をするのかわからない。これは、悲しいことだ。

 Overwatchというゲームは、ただ弾を撃って敵に当たってキルが発生するというだけの戦術ではないはずなのに、プロシーンがそういう映し方ばかりしている。悲しいことだ。


2020/09/10 山下


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