若い世代と地域社会 -活動の「舞台づくり」を- 上毛新聞 オピニオン視点 2011年6月1連載

先日、地元作家による和紙漉きのワークショップが「ふるさと交流センターtsumuji」で行われ、子供達は遊びの一環として楽しみながら色々なことを学んでいた。我々スタッフは、こうした体験を通して子供達が地域社会に関心を持てるように、日頃から一人の大切な仲間として接している。
ここ数年、各地で芸術文化を軸にした地域政策が盛んに行われ、私自身も地域のイベントやフォーラムなどに参加することが多くなった。つい数日前も、以前住んでいた逗子市で市民団体と行政によるアートフォーラムに参加し、他団体と交流する機会があった。
ある意味成熟している都市において、どのような地域振興が必要なのか、過疎地域の抱える問題との違いを知りたいと思った。地方の多くは年々人口が減少し、商業や産業の縮小も進み高齢化に歯止めが利かない。今回の意見交換で共通して感じたのは、若い世代がどう地域社会と関わっていくかということの重要性であった。
日本のようにアンバランスな形で人口減少が進むと、高齢化に伴う医療や福祉の問題が深刻になる。しかし、地方ではそれを支える世代が都市部に流出し深刻化しているのが現状だ。若者が一度都会に出ること自体は、とても良いことだと思う。外から自分の育った地域を見ることで良い部分や抱えている問題が見えるからだ。問題は、その後戻って来るための土壌が無いというところにある。働く世代が積極的に活動できるような舞台が無いのだ。
私は、tsumujiの役割として、「舞台づくり」ということを考えてきた。若い世代のやりたいという気持ちを実現させたり、ワークショップを通して地域交流をはかったり、地域の方の作った作品を店頭に並べる。その結果、自分の居場所を見つけることができ、世代間の様々な交流が生まれる。中之条ビエンナーレの様な地域型イベントに関わることでも、自分たちが地域社会でどのような役割を担っていけるのか実体験として学ぶことが出来る。地域政策を教える大学でもキャンバス内だけではなく、現場で学び係わること自体を単位認定している大学もある。
価値観の違うものに対し排他的な人もいるが、これからを担っていく働く世代が関わり合いを持とうとしていることを理解し、寛容に受け入れて貰いたいと思う。そのことが活気ある地域づくりのきっかけとなると考えるからだ。
tsumujiと中之条ビエンナーレを通じて、多くの人が世代を越えて集まり、地域振興や文化交流活動が盛んになってきたと実感している。この場所には様々な交流の交差点が出来つつあることを知ってもらいたい。そして地域と共に少しずつ歩んでいきたい。

(上毛新聞 2011年6月11日掲載) コラム視点 山重徹夫

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