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ミッドカントリートレイルランニング

昨年からの鬱々とした雰囲気から解放されるようにトレイルランニングやアウトドアのイベント・大会が増えてきています。(元に戻っているとも言える)

SNSのタイムラインを見ると〇〇のレースで完走した、××でキャンプをしてきたなど楽しそうな写真が並びます。抑圧されてきた行動を気兼ねなくできる自由なことはなんと気持ち良いことか、と嬉しく思います。

トレイルランニングにおいては一周で50~100km超を走るレースよりも草レース的な感じで周回コースが増えている印象。周回で100マイルとか。
周回コースの方が関わる自治体やスタッフ数も少なくて済むし、エイドステーションを繰り返し利用できる、安全管理が容易など主催側のメリットがたくさんあります。走る選手としても周回コースの方がタイムの把握が楽で記録を狙うにもわかりやすい。
交通手段や応援などレース全体を見てもコンパクトな印象です。今後はこういった小規模大会がメインになると思います。

ですが天邪鬼な僕はあえて反対のことをします。簡単にまとめてみました。

①周回ではなく、ワンウェイ(片道)で行う
②レース(競技・タイム)志向ではなく、自然の中に入り込むことを主目的とする
③決められたコースではなく、確立しているコースからルートを自分で繋ぐ
④なるべく人の少ない場所(トレイル)で行う
⑤全て自己責任で行う

こんな感じでしょうか。ちょっとドキドキハラハラするようなことをしたんですね。しかし、手付かずの原生自然(バックカントリー)の中に飛び込むほどの度胸がないのでその中間「ミッドカントリー」的トレイルランニングを楽しもうとしています。

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フロント・ミッド・バック

フロントカントリーとは整備された登山道・水道やトイレなど設備が管理されたキャンプ場・スキーのゲレンデなど自然の中にあるが人工的に作られたもの・手が加えられた場所のことです。

反対にバックカントリーは手付かずの自然、レジャー用に管理されていない原生自然のことを指します。一般的にはバックカントリースキーやスノーボードで使われる言葉です。

細かな分類ではサイドカントリーという言葉もあり、フロントカントリーとバックカントリーの中間のような場所を指すようです。基本的には「フロント」or「バック」の2分類になります。

この2つからトレイルランニングは基本的にフロントカントリーの中で行われるものです。整備された登山道を走ることが主になりますので。
そしてトレイルランニングの大会に関してはさらにフロントカントリー寄り。エイドがあって、ボランティアスタッフがコース上にいて何かあれば救護が駆けつけられる。前述のように周回コースになると距離が長くても管理しやすいのでさらに安全運営ができる。ちょっと毒づいた言い方をすると「山の中でやるだけのマラソン大会」です。自然界の何が起こるかわからない不確定要素が排除された人工的なアウトドア(っぽい)活動ともいえます。

余談ですが日本の場合人工対比でランニング人口が世界一なんです、実は。
箱根駅伝も来年98回を迎えるくらい「走ること=競技」が密接に繋がっています。そのため、上記のような「わかりやすい」ものが好まれます。
完走した「距離」や「タイム」「順位」などです。数字が好きな国ですね。
昨今のプロランナーの超長距離ランの挑戦もその流れかと思っています。大会が少ないのでネタ不足になりますからね。(500km走破!とかキャッチーですよね。)

やや卑屈な話になってしまいましたが決して大会そのものを否定しているわけではなく、それはそれで面白い。でも他の楽しみ方もあるよ、という提案です。

それがミッドカントリートレイルランニング。

ミッドカントリーとは?

完全に僕の造語ですが、最初に載せた5つをクリアしたものとしています。

①周回ではなく、ワンウェイ(片道)で行う
②レース(競技・タイム)志向ではなく、自然の中に入り込むことを主目的とする
③決められたコースではなく、確立しているコースからルートを自分で繋ぐ
④なるべく人の少ない場所(トレイル)で行う
⑤全て自己責任で行う

完全にバックカントリーとなるとトレイルランニングなんてできません。(走るための道がそもそもないので)なのであくまで利用するのは整備された登山道(トレイル)。ですが極力人が行かなさそうなマイナー・ローカルルートに行きます。
人が少ないことで人的ストレスを可能な限り少なくして自然の中に溶け込むことを目的の1つとするからです。

トレイルランニングのマナーや問題に関しては以下参照

ストレスの種類

トレイルランニング中のストレスは大別して2つ

・身体的精神的ストレス(Eustressーユーストレスー良いストレス)
・対人ストレス(Distressーディストレスー悪いストレス)

です。ユーストレスはルートの激しさによるもの。「足が辛い」「食べ物が消化できない」「荷物が重い」「雨が降ってきた」などのもの。確かにストレスではあるものの長い目で見ると自己の鍛錬に繋がるので良いストレスとします。きついことをした後は人間心身共に強くなりますから。

ディストレスは悪いストレス。ハイカーとトレイルランナーの問題が良くある例(特に当院のある高尾山域では)。挨拶がどうだとか、すれ違いでぶつかるだとかはストレスを受けたところで何にも人生に役立ちません。
なのでヒトとしての成長に関与しないディストレスを排除することがミッドカントリーのポイントです。

責任と自由は表裏一体

そして重要なのが⑤の自己責任。

初めていくルートもあるので自分で地図やGPSマップアプリなどで事前に調べますよね。これも自己責任。調べずにいって道迷いになっても誰も責任を取ってくれません。また、道を間違えてしまうことや怪我をしてしまうこと(その処置の道具を持っていないこと)、動物との遭遇も全て自己責任。

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写真はピンクのテープを追っていたらいつの間にか正規ルートを外れていた時のもの。ここからルートに戻る労力も自己責任。(直登でした。しんどい)

トレイルランニングの道中、道前の確認も含めて全て背負うこと。これがフロントカントリーとの違いでもあります。絶対にこうじゃなきゃいけないという縛りがないので自由を感じることができるという利点がある。一人なら景色の良いパートではゆっくり歩いても良いし、途中で道を変えても誰も文句は言わない。自然の中にポツンと置かれることで危険に対しても敏感になります。
道に迷わないように、転ばないように、熊の姿や動物の鳴き声などリスクに対するアンテナがビンビンになるんですね。
それと同時に木漏れ日の美しさや鳥の鳴き声、稜線を通る風の心地よさにも敏感になります。

ミッドカントリートレイルランニングでは全ての責任を負うことで自然から享受できる刺激・影響量を最大限まで広げることができます。しかもバックカントリーほど道なき道を行くわけではないので最低限の安全確保ができるのが利点です。

ミッドカントリーは現代脳と原始脳の両方を刺激する

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ざっくりと脳の話をすると計画性や人間的な理性を司るのは大脳新皮質など新しい脳(表面)。食欲や性欲など本能に関わるのは脳の奥深く、大脳辺縁系などの古い脳です。

フロントカントリーでは危険性が少ないので使う脳の部位の割合が新しい脳と脳幹など呼吸など運動に関わる部位が多くなります。(もちろん古い脳も刺激されます)

しかし、ミッドカントリーでは古い脳も刺激しなければいけません。言葉だったり理性とか抜きにして原始的、動物的本能・直感も全て駆使することで危険を避けたりする必要があるからです。

つまり、適度にリスクを背負うことは脳全体の活性度合いを高めていくことに繋がります。古い脳(動物的脳)を刺激することでヒトという動物本来の幸福や快感を感じることができます。それが現代社会での生活の豊かさの土台となるのです。

ここでは省略しますが「腸」に関しても好影響があると考えられます。腸と脳ともに関連が深いので。(より医学的な内容は別の記事で書きます)

原生自然(に近いとこ)に足を踏み入れよう

先にも述べましたが決してレースを否定することはありません。しかし、心身の健康という点でトレイルランニングを捉えるとミッドカントリー的楽しみ方は必ず豊かさに繋がると思います。

人間も所詮はヒトという動物なので野生動物的環境に身を置くことも大切です。
具体的なメリット(リターン・報酬)を書くとすると『ミッドカントリー後、めっちゃ仕事捗ります』です。これも脳への刺激で説明ができます。(これも別記事に)

動物的な自分と現代的な自分を繋ぐために自然の中に飛び込もう、でもある程度はリスクを避ける、そんなワガママを叶えてくれるのがミッドカントリートレイルランニングなのです。

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