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創造 最後のパラダイムシフト

現行人類が過去2度に渡って経験した、“大”パラダイムシフトは、環境の激変による危機感の共有から生まれ、現代もまたそれらを超える激動の渦中にあるため、「思考の枠組みを根底から転換」させるパラダイムシフトが必然となるということを、前回説明しました。
 
最初のパラダイムシフトは、大規模噴火後の大気圏を覆う火山灰が引き起こした「氷河期突入」という未曾有のカタストロフィを生き残った、数千人規模の現人類の母集団が、新たなパラダイスを求めて地球上を彷徨する過程で起こりました。
彼らは自然という全体性からの疎外感と寒冷化の危機を、バンドの仲間たちと神話的世界観を共有し精神的なつながりを持つことで、乗り越えようと試みます。
意識の萌芽とともに自分たちが裸で過ごしていることに気づき、衣服を身に纏うことによって、文化というものを身につけて行きました。
このミスティカルな創造思考を生み出した出来事を、「こころの萌芽」と呼びたいと思います。
 
2度目のパラダイムシフトは、農耕革命を経た後、都市化の人口集中による自然環境の破壊と、戦争や疫病が蔓延する苦しみの中で起きました。
彼らは自然からの遊離や、集団間の争いによって生じた精神の不安を、合理的思考によって乗り越えようと試みます。
意識と理性の可能性をとことん追求し、高度な哲学理論や普遍的宗教教義が次々と構築されていきました。
このクリティカルな思考の深みをもたらした出来事を、「こころの開花」と呼ばせていただきます。
 
このように過去2回の“大”パラダイムシフトでは、こころのタネが弾けて芽を出し、スクスクと育って、見事に花を咲かせました。
そして3度目となる今回、ヒトのこころの花は、はたしてどう変化するのでしょう?
 
まず、ヒトが直面している現在の状況を考えてみましょう。
①   世界人口が80億人を超え、地上が飽和状態となりつつある一方で、先進国では出生率が急降下し、人口減による労働力不足が問題となっている。
②   穀物生産はグロスでは間に合っているものの、地域的な生産量の偏りや流通問題、フードロスなどのため、数億もの人々が飢餓で苦しんでいる。
③   化石燃料の枯渇がカウントダウン状態であるにもかかわらず、再生可能エネルギーへの転換に向けての、各国の足並みが揃わないでいる。
④   エネルギーの大量消費による二酸化炭素の排出は気候変動をもたらし、旱魃や洪水、酸性雨、氷河の崩壊などが起きて、水や食糧生産に深刻なダメージを与えている。
⑤   森林破壊や砂漠化、海洋汚染、大気汚染、オゾンホールなど、地球規模の環境破壊により、生態系のバランスが崩れ、100万種もの動植物が絶滅の危機に晒されている。
⑥   20世紀初頭まで30歳代だったヒトの平均寿命は、2020年には72歳にまで伸び、世界的な高齢化が進んでいる。
⑦   デジタルネットワークシステムが普及し、世界中どこへでもアクセスできる環境が整う一方で、GAFAなどビッグデータを独占する世界的IT企業群が、国家を超える影響力を持ち始めている。
⑧   人工知能(AI)やAIを搭載したロボットが、様々な分野でヒト以上に労働や業務をこなせるようになり、AI自身がもっと優れたAIを生産する技術的特異点(シンギュラリティ)を目前に控えている。
 
このような状況下、もはや今までと同じメンタリティや制度下で、ヒト社会を維持していく事が不可能だということは、誰の目にも明らかでしょう。
旧パラダイム上にありながら、次のパラダイムのあり方を完全に予測する事は、原理上無理な話ではありますが、多分現行人類として最後となるであろう第3の“大”パラダイムシフトは、地球規模での「人類意識の創出」となるのではないでしょうか。
この間近に控えた一大イベントを「こころの稔り」と呼びたいと思います。

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